第24話 歳上の同い年
「……思ったよりも早く目が覚めたな」
スマホで現在の時刻を確認してそうつぶやいた俺は、背伸びをしながら立ち上がる。普段は寝起きが悪いのにこういう時は昔から早く目が覚めるから不思議だ。
せっかく早く目が覚めたわけだし、散歩に行くことにした。俺は着替えた後、父さんを起こさないように静かに部屋を出る。窓の外はもう既に結構明るくなっていたため、綺麗な景色が見えそうだ。
「どこへ行こうとしてるのかしら?」
「うわっ!?」
エレベーターで一階に降りた俺がホテルを出ようとしていたところ、突然後ろから話しかけられたため思わず声をあげてしまう。だがその声には聞き覚えがあり、振り返るとそこには天音が立っていた。
「……その驚きよう、なんか怪しいわね。もしかして他人には言えないようなところにでも行こうとしていたのかしら?」
「後ろから急に話しかけられたら誰でも驚くだろ、普通に散歩へ行こうとしてただけだから」
訝しむような視線を向けられたため俺はそう弁明した。てか、それが嘘偽りない理由であるためそれ以外に説明しようがない。てか、他人には言えないようなところってどこだよ。そんなことを言われても正直あんまりピンとこない。
「ふーん、それならいいわ」
「そういう天音こそ朝早くからどうしたんだ?」
「私も早く目が覚めちゃったのよ、だからロビーで何か飲み物を飲もうと思ってね」
「確かにウェルカムドリンクがめちゃくちゃ充実してるもんな」
どうやら俺と同じく早起きしてしまったようだ。もしかしたら天音も俺と同じくイベントがある日は早く目覚めるタイプなのかもしれない。
「散歩なら私も付き合うわ」
「別にロビーでゆっくり飲み物を飲んでくれてて大丈夫だぞ」
「瑛人から目を離して何かに巻き込まれたら困るのよ」
「小さい子供じゃないから別に心配はいらないと思うけどな」
何故かめちゃくちゃ真剣な表情を浮かべていたため思わずそうツッコミを入れたが、一人よりも楽しそうな気がしたし、そもそも一緒に行きたがっている様子だったため二人で散歩することにした。海を見ながら岸壁を歩いていると天音が口を開く。
「朝の海っていつ見ても穏やかな気がするんだけど、偶然なのかな?」
「夜は陸から海に、昼は海から陸に風が吹くんだけど、朝はちょうど入れ替わりの時間だから波が穏やかになるんだってさ」
「へー、瑛人って物知りなのね」
「昔何かで聞いたのをたまたま覚えていただけだ」
そう答える俺だったが褒められるのは普通に嬉しかった。もし俺に尻尾が生えていたらきっとぶんぶんになっていたに違いない。しばらく波の音を聞きながら散歩をして満足した俺達はホテルに戻る。そしてロビーに置かれていたコーヒーマシンで紙コップに温かいコーヒーを注ぐ。
「天音は砂糖とミルクはいらないのか?」
「ええ、私はブラック派だから」
「意外だな、ブラックコーヒーとか苦手そうなイメージがあったし」
むしろその逆でコーヒーには砂糖とミルクを大量に入れそうなイメージがあった。昨日の実は家庭的な部分があると知ったこともそうだが、今回の旅行を通して天音の意外な一面が次々に明らかになっている気がする。
「もう大人になったから砂糖とミルクは卒業したのよ」
「いやいや、俺達は高校生になったばっかりなんだからまだ子供だろ」
「今のは精神的な部分の話よ、女子は男子よりも大人びてるって言うし」
俺の言葉を聞いた天音はほんの一瞬だけ動揺したように見えたが、そんな雰囲気は微塵も感じないため気のせいだったのかもしれない。
確かに天音の雰囲気は同い年とは思えないことがあるし、精神的には俺よりも大人な気はする。実は俺よりも何歳か歳上なのではないかと錯覚してしまうことがあるくらいだ。前世の分まで含めると実年齢は天音よりも上なはずなので、俺が年齢よりも幼いだけかもしれない。
ちなみに前世も含めると天音は二十歳、瑛人は十八歳(意識不明の二年間は除外)となっています




