第18話 同じようで違う展開
高校に入学してから約一か月が経過した。五月三日の今日は憲法記念日であり、祝日となっているため今日は学校も休みだ。世間一般的にいうゴールデンウィークに突入しているため、SNSなどを見てもこれから遊びに行くといった感じの楽しそうな投稿が多い。
「そう言えば一年生の時のゴールデンウィークって五連休だったっけ」
二年生と三年生のゴールデンウィークは最大四連休であり、一年生の時と比べて一日短くなったためがっかりとした気持ちになった記憶が残っていた。そんなことを思い出しながら俺は外出の準備を始める。
今日はこれから両親と家族旅行に行く予定だ。校外研修の時に天音からゴールデンウィークの予定を尋ねられた際は無いと答えていた俺だったが、あれは半分は本当で残り半分は嘘だった。
五月三日から一泊二日の家族旅行の予定が入ることを俺は事前に知っていた。それは前回がそうだったからだ。もしかするとバタフライエフェクトの影響で今回は家族旅行はないかもしれないとも思っていた。
だが、前回と同じく四月の下旬に入ってから母さんが行きたいと言い始めたため今回も行くことになったのだ。ちなみに行き先についても前回と同じく東隣にある隣県だった。だから天音にも今日と明日は家族旅行でいないことを事前に伝えている。
天音は土日でも普通に俺の家に来るため、伝えておかなければいないにも関わらず来る可能性があった。それから準備を一通り終えたところで部屋の扉が開く。
「グッドモーニング、瑛人。今日も来てやったわよ」
扉の向こうには天音が立っていた。当然今日は学校がある日ではないため制服姿ではない。ロング丈のワンピースを身に纏っており、高身長の天音にはよく似合っていた。思わず見惚れてしまった俺だったが我に返って口を開く。
「って、何でうちに来たんだよ!?」
俺がそう口にした瞬間、周囲の温度が急に下がったような感覚に陥る。 言うまでもなく目の前にいる天音がその原因だ。
「……私が会いに来ると何かまずいことでもあるのかしら?」
凍てつくような視線を向けられて全身に寒気を覚える俺だったが、それに怯まずそのまま言葉を口にする。
「昨日も言ったように今日はこれから家族旅行に行くんだ。だから、来てくれたのは嬉しいけどすぐにお別れになるぞ」
「ああ、それなら問題ないわ。だって私も一緒に行くんだから」
「……えっ?」
天音の口から飛び出した衝撃的な言葉を聞いて俺は思わず間抜けな声をあげた。すると天音は納得したような表情になる。
「なるほど、私も一緒に行くってことを瑛人はまだ知らされてなかったのね」
「完全に初耳だぞ!」
天音の口ぶり的にどう考えても父さんや母さんも絡んでいるとしか思えない。事前に家族旅行と聞いていたため、天音が参加するなんて想像すらしていなかった。
てか、前回は確か全員同じ部屋で宿泊していたし、流石にこれはまずいのではないだろうか。ひとまず俺は事情を聞くために部屋を飛び出して、キッチンで洗い物をしていた母さんに話しかける。
「なあ、天音も一緒に来るって本当なのか?」
「ええ、旅行の話をしたら天音ちゃんも一緒に行きたいって言ったから仲間にいれたのよ」
俺が問い詰めるような口調でした質問に対して母さんは平然とそう答えた。やはり今回の件には母さんが関与していたらしい。
「なら、何でもっと早く教えてくれなかったんだよ?」
「やっぱりサプライズがあった方が楽しそうじゃない」
「確かにめちゃくちゃ驚いたけどさ……」
くすくすと笑う母さんに対して俺は呆れ顔になりながらそう返した。母さんは昔からこんなふうに悪ふざけをするところがあるから本当に厄介だ。
「……てか、今回は家族旅行じゃなかったのか?」
「天音ちゃんは家族でしょ、昔産んだような記憶もあるし」
「いやいや、父さんや母さんみたいな平均身長未満からあんな長身な子供は絶対に産まれないだろ」
父さんは百六十五センチで母さんは百四十九センチのため、俺の両親は平均身長よりもかなり低い。だから二人の間に産まれた俺が百六十八センチまで伸びたのもかなり奇跡だと思っている。
「それはギリギリ百五十センチに届かない私に対する嫌みかしら?」
「ご、ごめんって。謝るから辞めてくれ」
足を踏んでくる母さんに俺はそう懇願した。子供の頃は悪いことをすると頭をぐりぐりされていたが、身長が逆転してからは足を踏まれるようになった。これが地味に痛いため何とかして辞めさせたい。そう思っていると救世主が現れる。
「身長は遺伝だけじゃなくて環境要因も影響するので、私が産まれてもおかしくはないと思いますよ」
「流石天音ちゃん、良いことを言うわね」
天音のおかげで母さんからの足踏み攻撃は止んだ。てか、天音もその設定に乗っかるのかよ。
当たり前のように家族旅行に参加しようとする系ヒロインってなんか良くない⁇




