第14話 断ち切れない前世
昼食を終えた後、バスに乗って次の目的地にやってきた。目の前に鳥居があることからも分かる通り、俺達が現在いる場所は神社だ。午前中はうどん作りをしていたが、午後からは神社への参拝を行う。
参拝に関しては特に一緒に回るメンバーの指定はされていない。そのため先程のうどん作りで仲良くなったクラスメイトと一緒に回ったり、入学してから二週間の間に出来た友達と回るなど基本的に自由だ。
一般的に参拝と聞くと参道から本殿まで長くても片道十五分くらいだと思うが、ここに関しては奥社まで回ると片道一時間以上かかる。
奥社まで行くためには二千段近い階段を登る必要があるため、参拝よりも登山の方がイメージは近いと思う。今日の校外研修は革靴ではなくスニーカーを指定されていたが、もちろんこのためのはずだ。
「じゃあ私達もぼちぼち行きましょうか」
「ああ、そうしよう」
俺と天音は自動販売機で飲み物を買いながらそんな会話をしていた。もう既に出発している同級生達もいたが、俺達のように準備を整えてから行こうとしている同級生もいるためその辺りは様々だ。
ちなみに、早く頂上に到着したら景品があるらしいが、そこについてはあまり興味がない。景品が何なのかは公表されていないが、前回と同じであればスポーツドリンクのペットボトルのはずだ。
それを知っているため余計に頑張って早く到着しようとは思っていない。そんなことを考えながら買った飲み物をリュックに入れて靴紐を結び直していると、どこからともなく視線を感じる。
隣にいる天音ではなさそうだったので一体誰だろうと思っていると、見覚えのある顔と視線が合う。目が合った瞬間に視線を逸らされたが、間違いなく陽葵だった。陽葵は女子達数人とそのまま歩き去っていった。
「さっきから難しそうな顔をしてるけど、一体どうしたのよ?」
「……あっ、ごめん。ちょっと考えごとをしててさ」
「何かあったら相談くらい乗るわ」
「ありがとう、天音がそう言ってくれてマジで元気が出た!」
俺がそう言葉を口にすると天音の表情は一気にほころんだ。天音は美人で気が強そうな顔立ちをしているため苦手意識を覚える人もいるかもしれないが、俺は彼女の表情変化が好きだった。
いわゆるこれがギャップ萌えというやつなのかもしれない。まあ、流石に本人に対しては絶対にそんなことは恥ずかしくて言えないが。それから俺と天音は二人で参道を進み始める。
「事前には聞いてたけど、本当に頂上までは時間がかかりそうね」
「だよな、前回も結構時間がかかったような記憶があるし」
「前回?」
「ああ、実は前も来たことがあってさ」
「なるほど、確かに観光地としても有名だもんね」
ついうっかり前回のことをポロッと話してしまったが、上手いことそれっぽい説明をしたおかげで、天音は都合よく解釈してくれた。特に訝しんでいるような様子もないため問題はないだろう。
気を抜くとこんなふうに本来は知らないはずの情報を喋ってしまうことがあるため注意が必要だ。特に一周目で本人からは聞いていたが、二周目ではまだ聞いていないような話は特に気をつける必要がある。
流石に俺が未来から逆行しているとは誰も思わないだろうが、知らないはずのことを知っているのはかなり不気味だ。下手したらストーカーをしていると疑われてもおかしくはない。
だから天音とのやり取りは本当に楽だ。一周目の人生で関わりがなかったおかげでそういうミスをする心配はまずない。だから先程のように失言をしてもリカバリーすることは容易だ。
逆に陽葵のように前世から濃い付き合いがあった相手に対しては細心の注意を払う必要がある。それもあって一周目の世界では仲が良かった同級生とは積極的に交流をしていない。もっとも、陽葵を避けてしまっているのは別の要因も絡んでいるが。しばらく二人で雑談をしながら歩き続け、中間地点に到着した。
「ちょっとお手洗いに行ってくるわ」
「オッケー、この辺りで待ってる」
そう言って俺はトイレの近くにあったベンチに腰掛ける。俺や天音と同じ制服を着た同級生達の姿を中間地点で結構見かけるため、参拝ペースとしては多分普通くらいなのだと思う。
そんなことを考えながらポケットから取り出したスマホを操作していると誰かが俺の前で立ち止まる。天音にしてはあまりにも早過ぎるため別の誰かだと思って顔を上げると、そこには眼鏡をかけた委員長系女子で幼馴染の陽葵が立っていた。
「やあ、瑛人」
「陽葵か、何だか会うのは久しぶりな気がするな」
陽葵に話しかけられてそう答えた俺だったが、果たして動揺は抑えられていただろうか。
幼馴染である陽葵がようやく物語に絡み始めます
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