No.30-始動-
今回も短くまとめあげる。
大騒ぎの夜から一夜、純哉達五人の帰ったセルフィッシュは、いつもの様に閑散としていた。
主、カシス・フランバースはいつも通り、穏やかな朝を満喫していた。
五人は今日の夜中、天界天空城本部『アウシ・アタ』に召集された。
カシスも召集をかけられていたが、「僕は実地に赴かず、サポートします。」と理由を付けてアウシ・アタには行かなかった。
「んー……にしても、こんな時期に召集とは……しかも上位ランクの奴らを片っ端から……」
カシスは嫌な予感がしていた。
こんな時期、ほとんどの魔物や悪魔、モンスター達は冬眠に向けた準備をするか、
外気温のせいで特定のモンスター以外はほとんど出現しない。
大型モンスターも弱り、Sランクあれば十分対応できるのだ。
しかし今回の召集、Sランク以下は召集されていない。
つまり、魔物だとしても超大型か、若しくは
知られてはいけない敵。
極秘の敵。外部に漏らしてはいけない者。
カシスは気になって情報を探ってみる。
情報管理局のデータベース、三大陸のGuardian本部のデータベースを確認したところ、
三大陸の各地で戦争や、反乱、抗争、紛争が相次いでいるようだ。
「これが……あいつの仕業じゃなければいいんだが……まぁ、十中八九そうだろうな。」
カシスはノートパソコンをパタンと閉じ、自身も万全のサポートができるように、一人三大陸に発つ準備をする。
「キュウ……今回ばっかしは早すぎるぜ……!」
同時間帯、アウシ・アタの総裁の話が終わる。
カシスの予測通り、三大陸の各地にてキュウが戦いを起こしているようだ。
理由等は一切不明。各地の戦いの鎮静化の為、上位ランクの戦士達が集められた。
各戦闘部隊と補助部隊は既に準備と心の整理ができた順から三大陸へ移動している。
そんな中、純哉と紗衣だけは総裁室に残される。
純哉と紗衣には事件の中枢を調査する任務が与えられた。
そして必要ならば、キュウを捕まえるのではなく、殺害せよとの命令を受けた。
そして、部屋を出て紗衣と純哉は転送ゲートへつながる廊下を歩いていた。
「純哉よォ、テメェにとッて、あのクソ野郎がどんな奴かは知らねェ。知る気もねェ。
けどよォ、そんな中途半端な気持ちでこの任務に出るなら、テメェは俺の足手まといにしかならなねェ。」
「わぁってる。お前に言われなくても、決着をつける気だ。お前こそ、暴走すんなよ?そうなりゃ、俺は真っ先にお前を殺す。」
「天使同士は殺せねェッつゥの。」
ハハハ、と純哉は笑う。それに釣られるように、紗衣も笑う。
どうやら、今現在、プレッシャーの類はほとんど無いようだ。
純哉は過去との決着の為、紗衣は奪われた自分の記憶の為。
お互い、この戦いには勝たなければいけないという意思を持っていた。それが、戦いの邪魔にならないレベルで。
転送ゲート室につくと、そこには見慣れた、けれどもほんの数時間前に知り合った面々が集まっていた。
「お前ら……何やってんの?」
驚いたように純哉がその面々に問う。
そこに居たのは、和民六葉、仁良彼方、天都弥勒の三人だった。
三人を代表するかのように、天都弥勒が純哉の問いに答える。
「まぁ、僕達仲間ですからねぇ。」
「そうですよ!私達はいくら数時間前に知り合ったとはいえ、確かな絆があるはずです!」
「うむ。有難迷惑かも知れんが、お供するぞ。キュウを倒すのだろう?
少なからず我々にも危害は及んでいる。私達も何かできるはずと思ってな。」
弥勒に続き、六葉、彼方も自分らが一緒についていくことを話す。
最初は戸惑っていた純哉だが、紗衣が「なら行こォぜ。」と言ったので共に闘う事になった。
「じゃあ、行きましょうか。んー、まず現地に既にカシス先輩と仙寿さんが向かっているそうです。
彼らとの合流を視野に入れ、まずは紛争等が起こっていない地域に行きましょう。まずは安全に、ね。」
弥勒は自慢の頭脳を駆使して、合流までの流れをパッと要点を纏めて話す。
全員一致でそれを了解し、各々は転送ゲートに入っていく。
運命の五人が、それぞれの思いを乗せ、三大陸に飛び立つ。