07話 金貨を守るための強さが優先されます
マミカはひらめいた表情をした。
「『経験値または金貨のどちらにしますか?』
って、質問されるのかしら?」
「いいえ、ちがいます。
ダンジョンが金貨を与えても、マミカが弱かったら、他の冒険者に取られてしまいます。
だから、ある程度の強さが確保できるまで、金貨は出ません」
「ということは?」
「マミカはレベル50になるまで、金貨が出ることはないでしょう」
「でも、ゆきお様は強いですよね?」
「マミカが弱いうちは、ダンジョンからの支給は経験値だけになるでしょう。
そして、ボクは最大レベルの999です。
つまり、マミカとパーティを組んでいるうちは、ボクの取り分の経験値が金貨に変換されずに、全部、マミカの経験値になるでしょう」
マミカは申し訳なさそうな表情になっていた。
「なんか、ごめんなさい。ゆきお様」
ボクは出来る限り冷静な表情で笑顔を浮かべようと努力した。
「うんうん、だからね。マミカが早くレベル50になるように応援するからね」
「よ、よろしくお願いします」
マミカは、角度が90度のお辞儀をしてくれた。
「じゃあ、がんばって、ダンジョンモンスターを探しましょう」
「はい、がんばります」
ボクたちは必死にダンジョンモンスターを探した。
モンスターへのとどめは出来る限り、マミカにゆずることにした成果が出て、マミカは、レベル50になった。
「ありがとうございました」
「お疲れさまでした。もう日が暮れそうだから帰りましょう」
「そ、そうですね」
◇
ボクたちは、金貨を手に入れることはできなかった。
マミカはレベルアップしたけれど、金貨を得ることができなかったので、家に帰るとふたりとも疲れが2倍に感じた。
「もうちょっとだけでも、ダンジョンに残っていれば、少しは稼げたんじゃない?」
「うーん、暗くなると、ダンジョンモンスターのオスや冒険者の男性が増えてくるから、お薦めしないよ」
「どういうこと?」
「たぶん、予想しているだろうけれど、マミカはオークに犯されるか、冒険者にナンパされて犯されるかの2択だと思う」
「でも、ゆきお様は強いから余裕なのでは?」
「夜の彼らは、ある種の欲求に支配されるから3倍くらい強くなるよ。
腹をすかせたオオカミの群れよりも恐ろしいから、マミカを守り切ることは無理だね」
「そんなことないでしょ?」
「運よく守れたとしても、逃げ出した冒険者に殺人犯として通報されて、ボクは残りの人生を刑務所で過ごすことになるよ。当然、マミカも今の生活を続けられなくなるよ」
「帰ることにして正解だったのね」
「そう、大正解だよ。金貨は明日、稼げばいいよ。
レベル50を超えたら、経験値と金貨を同じ割合で、まあ半々でもらえるようになるから、タダ働きしなくていいよ」
「それを聞いて安心したわ。でも、人生逆転ダンジョンは融通が利かないわね」
「全部を金貨でもらって、他の冒険者に取られるよりは、よっぽどいいよ。
丸1日掛けて稼いだ金貨を盗られたら、むなしくなるよ」
「そう考えると、優しいダンジョンなのかもしれないわね。
なんだか、今日は疲れたわ。早く眠れるように、前倒しにしましょう」
ボクはマミカを獲物を狙うオオカミの目で見た。
「早く眠る前に、マミカと仲良く寝る時間が欲しいな」
マミカは分かっていますよ!という笑顔を向けてきた。
「ご心配なく、今日、ゆきお様は、ぼうず。儲け無しだもんね。
金貨はあげられないけれど、わたしの愛情をあげるわ」
「楽しみにしています」
「ええ、期待して良いわ」
マミカとボクは、前倒しで、お風呂、夕食、歯磨きを済ませた。
「ゆきお様、お待たせしました。準備が整いました」
ボクはマミカと手をつないで、寝室に移動した。
「ゆきお様、お召し上がりください」
マミカは、ボクの目をみつめてから、目を閉じて、唇をボクの方に向けてきた。
「はじまりはいつもキス」
ボクは開始の言葉を告げてから、マミカと仲良く寝ました。
「明日は、金貨を稼ぎましょうね」
「そうだね」
「ゆきお様、おやすみなさい」
「マミカ、おやすみなさい」
ボクたちは明日は金貨を稼ぐぞと想いながら、お互いを抱き枕にして眠りました。




