03話 警察と裁判所には期待しない
「ゆきお様、あなたの御力で、わたしのカタキを取ってくれませんか?」
美女マミカはすがるような目で、ボクを見てきた。
「対価はどうしますか?」
マミカは困ったような顔をして、ボクに質問をしてきた。
「なにを差し出せば良いのですか? わたしに残されたものは、この身体だけです。
そして、ゆきお様にお楽しみくださいとお渡し済みです」
『そう言われると困ってしまった。なにをもらえば良いのか?
でも、対価を取らずに応じてしまえば、ボクに気が有ると誤解されて、思いあがられるかもしれない。だから、なにかをもらわないとダメだ!』
「じゃあ、ボクに告白してもらおうか?」
「なにを白状すれば良いのですか? わたしの好みのタイプですか?」
「うーん、それは、聞いても仕方ない。だから、恋愛ゲームにあるような、愛の告白をしてもらおうか?」
「すでに、身体を差し出しましたから、順番的には不要なのでは?」
「イヤそうだな。良い対価になりそうだ」
マミカの表情をのぞき込むと、『こころだけは渡せない!』と苦渋に満ちた表情だった。
ボクは、ゾクゾクしてきた。『これが、美女を支配する快感なのか?』
マミカは、ボクをひとにらみした後で、恋する乙女の演技を始めた。
「わたしは、夢を見てきました。いつか、わたしをピンチから救ってくれる素敵な殿方が現れてくれると。でも、大人になるにつれて、王子様どころか、正義の味方さえ存在しない。物語と現実は全くの別物だと、あきらめていました。
でも、それは、間違いだったと、今日わかりました。
ゆきお様、あなたは私を助けてくれました。
わたしの王子様になって、残りの人生を共に歩んで助けてくれませんか?」
目に涙を浮かべながら、すがるような眼差しは捨てられた子犬が、拾ってくださいと懇願するようだった。
「そうだな、マミカが俺を得させてくれるうちは、守ってやろう」
「うれしゅうございます。ゆきお様」
ボクは、マミカを抱きしめて、マミカの香りと感触を楽しんだ。
「じゃあ、約束を果たすには、どうすればいいかな?
考えるしかないか...」
ボクは対処方法を思いついた。
【②検索レーダー】のスキルを使おう。
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マミカの敵を検索しました。
レーダーを表示します。
合計で3人います。
周囲に他の冒険者はいません。
それなりに強いモンスター(レベル50)と戦っているようです。
なまえは関心無いですね。
彼女たちのレベルは、32、30、28です。
現地までのルートを表示します。
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ボクはマミカを見た。
『【①すべてを鑑定】のスキルを使おう。
でも、関心が無いから、レベルだけでいいかな』
まみか
レベル 43 / 888 MAX
『なるほどね、美しさでもレベルでも負けるから、マミカは全員にとって邪魔だから、いじめられたんだな。どこにでも、こういうズルイ奴がいるんだな』
「よし、マミカ。キミのカタキが見つかった。
急ぐぞ。抱きかかえて走るから、ボクに身体を預けろ!」
「はい、ゆきお様」
ボクは、マミカをお姫様抱っこした。
まるで、5kgのお米袋のように軽かった。
「マミカは軽すぎるな。ダンジョンを出たら、美味しいものを食べさせてあげよう」
「は、はい、お願いします」
マミカは頬を染めて、顔をそむけた。
「マミカは可愛いな。お姫様抱っこが恥ずかしいんだろう。
これからもするから、今度は可愛い顔で見つめてもらうからな」
『わたしは、57kgあって重いのに、軽々と持ち上げるなんて...
素敵すぎる!』
ゆきおは気付かなかったが、マミカをお姫様抱っこして走る間、マミカは恋する乙女の顔で、ゆきおの顔を見つめていた。
◇
5分ほど走ると、マミカの敵のところにたどり着いた。
ボクは、マミカをゆっくりと下ろして、着地したことを確かめた。
「よし、立てるか、ちょっと手伝ってくるからな」
マミカの敵は、苦戦していた。
『もう、虫の息だな。今度は、剣技を試したいな』
ボクは、【④戦士、剣聖】のスキルを使った。
モンスターは、大きい棍棒を振り回していた。
ロールプレイングゲームで見たサイクロプス、ひとつ目巨人に似ているな。
マミカの敵Aは、残りのふたりに声を掛けた。
「もっと、バフを寄越せ! もっと、魔法で攻撃しろ」
マミカの敵BもCも涙目であきらめかけていた。
「マミカがいないのに、無理だよお」
「マミカがいたら、置き去りにして、逃げられたのに」
ボクは彼女たちを見て、あきれかえっていた。
『うん、心根も外見も並以下というか汚いな。期待させてから殺処分しよう』
ボクは味方の振りをして、駆け寄った。
「もう大丈夫だ。助太刀しよう」
ボクは、サイクロプスを一刀両断した。
モンスターを倒した。
経験値は、ゆきおの仲間のマミカに振ります。
マミカはレベルがひとつ上がった。
【③賢者、呪文全部】のスキルを持つ者向け特別解説です。
モンスターレベル50 - マミカのレベル43 = 7
7÷10=0.7 四捨五入して、レベルがひとつ上がりました。
ボクは作り笑いをして、マミカの敵に振り向いた。
「お嬢様たち、もう大丈夫ですよ」
マミカの敵たちは、乙女の顔をして、抱きついてきた。
「なんて、素敵な殿方。ありがとうございます」
「お強いんですね」
「助かりました」
ボクは表情を作るのに、必死だった。
『こういうズルい奴は嫌いだ。ボクにとっても敵だな』
ボクは殺気を感じた。
マミカが駆け寄って来た。
「ゆきお様、話が違うじゃありませんか?
わたしのカタキを討つ約束を思い出してください」
マミカの敵たちは、白々しい言葉を吐き出した。
「まあ、マミカさん。探していましたのよ」
「生きてて良かったわ」
「ケガはありませんか?」
マミカは怒り狂った。
「しらじらしい。わたしの装備を返して!
わたしをだまして、ここで死なせようとしたことを警察に訴えてやる」
マミカの敵たちは、白々しい言葉を吐き出した。
「まあ、こわい」
「ダンジョンの恐怖で気でも狂ったのかしら」
「騎士様、お助け下さい」
マミカは怒りを鎮めて、言い返した。
「わたしは正常よ。気が狂っているのは、あなたたちのほうよ!」
マミカたちは、にらみ合い言い争っていた。
ボクはゆっくりと、その場を立ち去って、サイクロプスの大きい棍棒を拾った。
そして、後ろから、マミカの敵たちを棍棒で殴って、地面にたたきつけた。
うずくまるマミカの敵たちの両足をつぶして、立てなくして差し上げた。
これには、マミカが真っ青になっていた。
「ゆきお様、なにをしているのですか?」
ボクは首を左右に倒した。
「マミカこそ、約束を忘れたのか? ほら、この棍棒を使え、重いから気をつけてな」
マミカはレベルが44に上がったとは言え、棍棒を10cm持ち上げるのがやっとで、5秒と持たなかった。
「お、重い。どうして、こんな重いものを渡すのですか? ゆきお様」
「マミカの敵たちは、サイクロプスにやられたんだ。
ボクたちが到着したときには、全員が手足と頭をつぶされて、手遅れだった」
ボクのセリフを聞いたマミカは、ニヤリと笑った。
ボクの意図するところが分かったらしい。
「こんな、ひどい目にあっているなんて、あんまりだわ」
マミカは棒読みでセリフを読み上げた。
サイクロプスの棍棒を引きずって、持ち上げては、落としていた。
「ぎゃ、痛い、なにするの?」
「さ、裁判で訴えてやる。うちには凄腕の弁護士が居るんだから」
「わ、わたしたちが悪かったわ。ゆるして」
マミカの敵たちは、マミカの同情を引こうとしていたが、無意味だった。
無理だと分かったマミカの敵たちは、ボクの助けを求めてきた。
「騎士様、あなたの性奴隷になります。お金もあげます」
ボクは、聞こえないふりをしながら、【②検索レーダー】のスキルを使って、周囲を警戒していた。近くに冒険者はいない。人の形をしたモンスターたちの鳴き声を聞かれる心配は無さそうで安心した。
「ボクは、警察と裁判所には期待しない」




