11話 優しかったマミカは、もういない
迫りくる敵の男性12人全員が、ボクたちの半径10m以内エリアに立ち入ったとき、マミカはニヤリと笑った。
「【サキュバスレイヤー】」
12人の男性は、白い血を吹き出して倒れた。
「これは、マミカのスキルだよね?」
マミカは涼しそうな顔で答えた。
「ええ、そうよ。身につけて良かったわ」
「ぶっつけ本番で使うなんて、不発だったらどうするつもりだったの?」
「そのときは、ゆきお様に助けてもらうわ。余裕でしょ!」
「ま、まあね。じゃあ、どうしようか?
彼らの記憶を消してから、逃げようか?」
マミカは手を振って、ボクの考えを否定した。
「もっと良い方法があるわ」
と自信たっぷりの笑顔を向けてくるマミカを見て、任せても良いかと思った。
「どうするつもり?」
「まあ、見てて」
マミカは、元気を無くして、気を失って倒れている男性に近づいていった。
「ハイジャーンプ」
マミカは高く飛んで、敵の男の首に着地した。
敵の男性の首の骨を折ろうとしたのだろう。でも、マミカの体重は軽そうだから、無理そうに見えた。
でも、ボキッと骨が折れたような音が聞こえた。さらに、剣で首筋を斬ることで、確実にとどめを刺そうとしていた。12人全員に処置をしたマミカはやり遂げた表情を見せた。
ボクは、どう言葉を掛けようか考えていた。
マミカは、にっこりとほほ笑んでボクに説明した。
「ゆきお様、彼らを逃がしたら、他の女性が犠牲になります。
幸いにして、人生逆転ダンジョンで死んだ冒険者の死体も装備も、灰になって風で飛んでいきます。
だから、これが一番正しい処置ですわ」
ボクは、どう答えるべきだろう?
「その通りだね。
マミカはケガしてない? 足をねんざしなかった?」
マミカは、その場で軽快にジャンプをして見せた。
「大丈夫よ。今、見てもらった通りよ」
ボクはうなづいた。
「そうか、良かった。
でも、今日は、もう出よう。
誰とも、すれ違わないように気を付けて、家に帰ろう!」
「そうね、しらけちゃったわね。
でも、金貨を換金して現金にしたいわ」
「うん、でも1か月分の生活費だけだよ」
「安心してよ。目立つ額の換金はしないわ」
ボクは、【②検索レーダー】のスキルを使って、他の冒険者の位置を見失わないように、慎重にダンジョンの出口を目指した。
金貨を換金したマミカは、ご機嫌だった。
「これで、わたしも生活費を出しているって言えるわ」
「ありがとう、助かります」
◇
ボクたちは、家に帰った。
テーブルの向かい側に、マミカが座っている。
「マミカ、今回のキミの判断は正しかったと思う」
「でしょ、でしょ!」
「それでも、目撃者がいない限り、という条件がある」
「なにか文句があるの?」
「ボクはマミカのことが大事なんだ。失いたくない。
だから、自分の安全をもっと大切にして欲しい」
「なにが言いたいの?」
「人生逆転ダンジョンの中では、確かに死体や装備品は跡形もなく消える。
それでも、万が一、誰かに見られたら、マミカは犯罪者になちゃう。
それだけは嫌なんだ」
「わかったわ。気を付けるわ。
でも、ひとつ確認したいんだけれど」
「なにかな?」
「あの男どもを殺すことは反対だったの?」
「いいえ」
「じゃあ、わたしが完全犯罪する分には良いの?」
「悪人相手に、完全犯罪する分には良い」
「わかったわ。そんな顔をしないでよ。
次からは、もっと慎重にするわ」
「よろしくお願いします」
優しかったマミカは、もういない。
でも、女性を犯そうとする男性を殺すべきだ。殺すしかないということも理解している。ダンジョンの外では、過剰防衛で刑務所行きだけれど、ダンジョンの中では見つからない限り、完全犯罪になる。
ボクは、これからもマミカを守りたい。だから、他の冒険者との距離には、もっと注意して警戒しようと決心した。




