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レディ・ヴィエラは揺るがない  作者:
幼少期-領地編-
20/40

名前が持つ役割

今回と次回にかけて『お勉強回』が始まります。苦手な方はすみません。



 ヴィエラ発案の、突然の『特別授業』に参加するのは伯爵家と公爵家の子供達だ。

 だが教鞭を執るのはヴィエラではない。このメンバーの中で最も博識であり、年長のエルディオンだった。


「いや、教師役兄上かよ」

「はは……。僕も驚いたよ。でも発案者がヴィエラだからね。拒否権なんてあってないようなものさ」

「あら、わたくしはエルディオンお兄様に栄誉をゆずってあげたのよ? 文句を言われる筋合いはないわ」

「お前なぁ……」


 呆れるイリアスだったが、ヴィエラは取り合う気がないのかそっぽを向く。そして巻き込まれたフランとグランツ、そしてロアンは大人しくソファーの端っこに座っていた。


「それで、ヴィエラは皆に何を教えたいのかな?」

「家門について知るには、まずは“名前”からでしょう?」

「さすがにそれは知ってるんじゃないか?」


 当然のことだと語るヴィエラに対し、イリアスは「貴族なら皆学ぶことだろう」と返す。だがヴィエラは「そうとも限らないわよ」とロアンへと視線を向ける。


「ロアン。お前、貴族の名前や家門について教えてもらった覚えはある?」

「ないです!」

「ほら見なさい」

「いや! ロアンは例外だろ!」


 ロアンはその境遇故に知らなくても当然だが、フランとグランツはちゃんと教育係がついている。それでも改めて、家格が上であるエルディオンとヴィエラが伝えることに意味があるのだ。それを察したエルディオンは苦笑いしながらも立ち上がった。


「それじゃあ、初めて聞くロアンのためにも、改めてラストネームとミドルネームに込められた意味について、話そうか」

「はい! おねがいします!」

「お願いします」

「お、おねがいします」


 元気いっぱいなロアンに対し、フランは淑女らしく一礼し、グランツは「なんでこんなことに?」という疑問を隠せないまま頭を下げた。


「うん。それじゃあまずラストネームから説明しよう。皆知っての通り、ラストネームは家門を表している。僕達グラディアスは“公爵家”、アイゼンヴァルトは“伯爵家“、ストーンリッジは“伯爵家”というようにね。貴族名鑑を頭に入れている人なら、家門名を聞いただけで相手の爵位が分かる。というより、頭に入れておかないと社交界では相手にされないから、各自ちゃんと覚えるように」

「はい!」

「わかりましたわ。エルディオンお兄さま」

「うぅ……むずかしそう……」


 グランツは渋い顔をしているが、騎士になったとしても貴族の名前を覚えるのは大切なことだ。特に社交界で生きるためには相手の親族についても覚えておく必要もある。

 エルディオンは「そこについてはまだ教えなくてもいいか」と割愛し、次にミドルネームについての説明に入った。


「じゃあ続いてミドルネームについてだけど、基本的に家門で受け継がれていくものだ。女性と男性で異なるのが普通で、同じ家に生まれても性別が違えばミドルネームも違う。それに本家と分家でも違うし、分家でも『何を司るか』によってミドルネームは変わるから、一族の人間は必ずそれも覚えないといけない」

「じゃあ、ぼくの『ノア』もそうなの?」

「ええ、そうよ」


 ロアンはキョトンとした顔で隣に座っていたヴィエラに確かめる。当然知っていたヴィエラは頷き返し、ロアンも「そうなんだ」と納得したように呟いた。


「グラディアス公爵家でもそうだよ。僕とイリアスは公爵家の正式な血筋の元に生まれているから『ヴァルディア』を名乗れるけど、もし親戚筋なら名乗ることは出来ない」

「ヴィエラは女の子だから『ルナリエ』だけどな。公爵家の直系、もしくは本家に嫁いできた女の人は必ず『ルナリエ』を継ぐことになるんだ」

「そうなんですね。……あれ? でも、セラフィア様は『ルナリエ』って言ってなかったような……」


 首を傾けたロアンに、公爵家の面々は頷く。


「いいところに気が付いたね、ロアン」

「母上は『元王族』だからな。色々と違うんだよ」

「ちょっと難しいけど、それについても話そうか」


 エルディオンは微笑み、年下の子供達に『王族の名前について』教えることにした。



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