伯爵家の子供達
伯爵家の子供達と遊ぶことになったが、ここで問題が起きた。
人形遊びがしたいフランと、剣の訓練がしたいグランツが喧嘩を始めたのだ。
「なんでよ! お人形ならみんなで遊べるじゃない! 剣のくんれんなんて、レディにはできないわ!」
「だったら見てればいいだろ! なんで男が人形あそびをしなくちゃいけないんだ!」
ワーワーと取っ組み合いの喧嘩を始めた二人を、慌ててエルディオンとイリアスが止める。
この二人、姉弟でありながらも非常に仲が悪かった。
「エルディオンお兄さま! こんな意地の悪い子はほうって、二人であそびましょう!」
「おまえみたいなワガママ女、こっちからねがいさげだ!」
「待て、グランツ。今のはいいすぎだ。まったく……母上もめんどうごとを押し付けてくれるぜ……」
最後にこっそり悪態をついたイリアスだが、しっかりとグランツの口元はハンカチ越しに塞いでいる。グランツはムスッとしていたが、尊敬するイリアスに止められたのだ。暴れるような真似はしなかった。
一方そのやり取りを眺めていたヴィエラは「バカバカしい」と顔を顰め、ロアンは「すごいなぁ」と二人の剣幕に圧倒されていた。
「アイゼンヴァルトはキシの家門でもあるんだぞ! 剣のクンレンをするのはトーゼンだろ!」
「剣よりお金のほうが大事だわ! それにお父さまだって剣がニガテじゃない! それに、剣をかうのにもお金が必要なのよ!? わかってるの?!」
フランの『ごもっとも』な意見にグランツは言葉に詰まる。それでも何か言い返そうとしたところで、エルディオンが手を叩いて意識を分散させた。
「はい。そこまで。フランもグランツも、熱くなりすぎだ。それに、剣もお金もどっちも大事だよ。どちらか片方が優れている、なんてことはないんだ」
「……はい」
「ごめんなさい……」
尊敬するエルディオンに叱られ、二人の姉弟は同時にシュンとする。そして傍観していたヴィエラが「お前たち」と声を掛ける。
「一つ、確認なのだけど。お前たちは“家門”のことをどれだけ知っているの? グラディアスとアイゼンヴァルトの関係は?」
「えっと、公爵家をささえるためにいるって……」
「公爵家と兵士たちのためにいるって……」
突然『家』についてどこまで知っているのか問われ、二人はまごつきながらも答える。だがその曖昧な答えにヴィエラは呆れたように嘆息した。
「甘いわね。その程度の認識だからわたくしたちの前でケンカなんてするのよ」
「ヴィエラは手厳しいなぁ」
「いや、お前が賢いだけだからな、ヴィエラ。普通の子供なんてこんなものだぞ」
「あら。おほめいただき光栄だわ。イリアスお兄様」
「褒めてねえって」
高慢な妹にうんざりとした顔を向けるイリアスだが、ヴィエラは無視して年上の姉弟に向かって歩き出す。
そしてビクリと体を反応させた二人を見上げながら、小さな『女帝』は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「よろこびなさい。お前たちに“特別授業”をほどこしてあげる。いかに自分たちが愚かだったのか、骨身にしみこませなさい」
「は、はい……」
幾ら年下であろうと、気品と威厳を持つ姿には誰もが圧倒される。ましてや子供ですら分かる輝きを放っているのだ。
ヴィエラの高慢な物言いでさえ気にならないほど、二人の姉弟はヴィエラの空気に飲み込まれていた。




