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『シン世界』、日本最強の92歳が全てを斬り伏せるッ!!  作者: のっぽ童子
『各国最強』編

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マ境

ここは道場。

中央ではルウェットは木刀でエスは竹刀で撃ち合っている。

エスの撃が少しではあるが、彼を掠めていた。


その端にデンマーク、カナダ、日本の審判と轟道がいた。


轟道は長い治療期間を経て、復帰していた。

その姿勢はゲンナリとはしていなく、逆にいつもより良かった。


「轟道さん、本当に大丈夫ですか?」

神橋が訊く。


「大丈夫だと言っているだろう。落ち込んだところで何も産まん」


(よく言うよ、神橋......先輩がやられた時、いの一番に心配してたって言うのに)

デンマーク審判アレックスが轟道を細目で睨む。


「2人とも......! そろそろ休憩しましょう......!?」

カナダ審判ローラがおどおどとした手つきで水筒を2つを掲げた。


「お言葉に甘えよう。なぁ? エス」

ルウェットの体にはピンク色の箇所が複数あった。


エスがローラの方へ行こうとする。

だが。


「ルウェット、先の言葉はどこ行った?」


瞬間、ルウェットの右から木刀が放たれる。

しかし、それが加速しきる前にエスが竹刀の腹で止めていた。


「うるせぇ、勝ったら関係ねぇんだよ!」

ルウェットはもう一度膂力を込めると、受けている竹刀が湾曲する。


その時、エスが左脚をすっと上げ、その足先でどこかを蹴り上げた。

チーン。

良からぬ音だ。


「あっ......」


ルウェットが地面に倒れ込む。

彼は武器を離した。

右手でその部分を押さえ、左手で床の一部を掴んで、木片にする。


それほどまでの激痛。


「エスさん......何を?」

思わず、ローラが困惑する。


「なんかぶら下がってたから」

エスは淡々と竹刀を轟道のところまで持っていく。


「まさか、俺にもするわけじゃないだろうな」


「違うよ、単純に訊きたいことがあったんだ。轟道、槍はどうなった?」


轟道の十文字槍。

それは虎龍(フーロン)が繰り出した2匹の蛇にて砕かれた。


「.......まだ、修復に取り掛かっているそうだ。当然とも言えるだろうな。あれは昔より道場が政府に渡すのを拒み続けた名槍『鐘鳴鞘胤(かねなりのさやつぐ)』。今とは比べようもない技で造り上げられた最高峰の武器、柄だけだとしても時間は掛かる」

轟道はそれでも心の均衡を保ち続けている。


「その槍をあんなあっさりと......それほどまでに中国の壁は高かったか」

エスが彼を真正面に胡座をかく。


「俺が使える技はせいぜい数百ほど、だが、やつは数千にも上ると見ている。要はだ、虎龍(フーロン)は俺を相手取って底すら見せちゃいない」

その言葉に辺りは慄然とした。


ルウェットが動きを止めるほどに。


「似たような話がわんさかあるよな。前の中国を破った『インド最強』、モンゴルの弓士を殺めた『タイ最強』、オランダの予見者を倒した『ロシア最強』......ここは魔境かよ」

ルウェットから珍しく汗が滴り落ちる。


「この場所がどうであれ、俺のやるべきことは変わらん。虎龍(やつ)との再戦(リベンジマッチ)をいざ!」

轟道は燃えていた。

限りなく強い男を相手にしてなお、闘争心(ほのお)は尽きることを知らない。

それどころか薪を焚べるに等しいものだった。


「言うが、勝算はあるのかよ」

「ルウェットさんの言う通りだな」

野次が降ってかかる。


「良くも悪くも戦争に理由は要らん。そうだろ?」

刹那、轟道の顔に悪魔的な微笑みが現れる。


神橋の脳裏に様々な言葉が浮かぶ。

本気・敗北・無理・逆転・流石・凄......など。

そこから1つの言葉を紡ぎ出した。


「あのすまし顔引っぺがしてやりましょう!」

神橋はガッツポーズで答えた。


その時、神橋の右ポケットが揺れた。

正体はスマホであった。

神橋がそれに応じる。


「誰ですか」


〈もう忘れてしまったのかい? 私だよ、荒川だ〉

その声で神橋ははっとした。

荒川、彼は神橋が護衛をしていた大臣である。


「どうしたんですか、急に......」


〈感動的な再会だが、国際電話だからな、手短に話すぞ。轟道さんも聞いてください〉

荒川は淡々としていた。


「ああ、聞くさ」


〈今回の敗北は相手が中国と鑑みたら、あまりに大きいですが、私は、轟道さん......あなたならいくらでも取り返せると思っています。ただ、国会にて戦争の一時停止を締結されました。あまりにも消極的であくびが出るほどっですよ〉

日本の戦線離脱の旨。

轟道が口を噛み締める。


「ミスター轟道......」

「ここに来ての離脱は手痛いね」


〈ん? 君たちは誰だい? 知らない言語が飛び交っているのですが〉


「ああ、そうか。荒川は入れていなかったな。こいつらはデンマーク、カナダの代表だ」

ルウェットとエスを順番に指して言った。


〈仲が良くてなによりだ。上にはその二国へ便宜を図ろう〉


「その件の期間はいつまでだ」


〈決めるのは総理なので、そればっかりは私にも分からないですね〉


「つまり、再開するまでに鍛え上げろ、ということだな」


〈それは素晴らしいと思うのですが......でもやっぱり、実戦こそが最高の鍛錬じゃないのですか?〉


「基礎がおろそかなら、実戦で磨いたって意味はない。これを機に俺の技術を盤石にして見せるさ」

轟道が長丁場になることを覚悟する。


その右横で神橋も腹をくくっていた。


「あ、それとだな、荒川。日本最高の樫(かし)を用意しろ」

轟道の目が笑った。


〈え? いやいや、武器が壊れているのは存じておりますが、そんな簡単に言われてもですね〉


「お前は日本最高のツテだ。信じている」


〈いや、まぁ、はぁ。ありがとうござ......〉


瞬間、轟道と荒川の通話が斬れた。

いや、斬ったのだ。


「せっかくの連絡だろ? もう終わっていいのかよ?」


「構わん、死なん限りはいつでも話せる」


「ひえぇ......」

「ストイックだな」


「ははは......! ルウェット、エス、アレックス、ローラ、神橋君。ここからが苦しいぞ」


エスはやる気でいる。

他の四人は重い腰を上げた。

彼らが待ち受けているのは一体なんだろうか。


それを知るのは......轟道のみである。



その時、ブルネイの部屋が戦慄していた。


そこにいるのは『ブルネイ最強』ファグル・アルマニアと審判ラフマンである。

2人とも、サラリーマン風の格好をしている。

ファグルがパソコンを立ち上げている。


「ついに来たか、『ドミニカ最強』......」


「てっきり代表を出さないまま、耐えるのかと思っていましたよ」

ラフマンがハンカチを取り出す。


「流石に泣き寝入りするばかりではないと考えていたがな。うん、俺の情報源によると名前はアミニ、男、年齢は......14歳だと!?」

あまりに若い。

若すぎる。


「気でも狂ったのですかね」


「少し待て。映像が送られてきている」

カーソルをそのファイルへ運ぶ。


動画時間は1分ほど。

アミニと思われる少年がゴロツキに絡まれている。

身長、筋肉量、体重からしても少年が勝てる見込みは低い。


だが、少年がその場からゆったりと去ろうとする。

背中にナイフが突き立てられる。

がしかし......ナイフが砕け、ゴロツキが崩れ落ちる。


「社長......今の見えましたか......?」


「僅か......だがな。対面すれば避けるのが精一杯だと思っている」

ファグルは『インド最強』に負けはしたが、決して弱くはない。

しかし、そんな彼を持ってして回避で手一杯。


アミニ、どんな怪物なのだ......




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