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『シン世界』、日本最強の92歳が全てを斬り伏せるッ!!  作者: のっぽ童子
『各国最強』編

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ルコウ星

(この集中......万祝(バンショウ)にも劣らない)


虎龍(フーロン)の瞳が獲物を狙う獣のように鋭くなる。


彼に幾つもの選択肢が過ぎる。

『纏絲勁(てんしけい)』でいなし、打を放つ。

上か下に潜り込み、撃を無意味にする。

コンクリートの破片で投に徹する。


だが、武に生きる者として無粋な術は不可能。

仕掛けるのは純粋な突撃。


左足が槍の間合いへ入る。

一刹那......流星が鞘走る。


臍(へそ)上に一条の血が咲く。

だが、虎龍(フーロン)は半歩身を引いていた。

とはいえ、その鋭さは見た目以上に深い。


「『流光星(るこうぼし)』」


この技の名前らしい。

振り終わりに槍の血を払う。


「これがお前の人生か?」


後ろに下がった虎龍(フーロン)は何食わぬ顔で訊く。


「違うな。これは元々、俺の友のものだ。それだけじゃない、俺の技術は全てが周りの人間に支えられている」


轟道の背にいるのは数十......数百の人たちの力。

言葉通りの百人力である。


「当然、2度目はない」

虎龍(フーロン)の腹部の出血が弱まる。


「なるほど......お前は人間か?」

(あの傷は浅くも深くもない。出血は相当。それを腹圧だけで抑えている)

轟道は真正面に穂の位置を下げる。


「複数あれば難しいがな、1箇所ならば容易だ。試しにやるといい」

その時、出血が完全に止まった。


「誘いは嬉しいが、歳を取ると億劫になるんだ。そっち側から来てくれんかな?」

轟道は悪い笑みで迎える。


「狐め」

虎龍(フーロン)もニヤリと返す。

瞬間、二人の間が消えた。


虎と狐、一触即発である。


既に槍の間合い。

槍が跳ね上がる。

それは神速の突きに繋がる。


(目で追うな、持ちうる全てで感じろ)

瞬間、虎龍(フーロン)が刃をすり抜け、右へ歩を進める。


「お前にはまだ見せてなかったな、鎌を」

轟道が下がる。


すると、槍が元の位置へ戻ろうとする。


(こっちに来れば脚を崩してやる)


神速には行かないまでも鋭さは突きの類ではない。

その左鎌が虎龍(フーロン)の左半身を襲う。


赤の唐装に刃が入る。

その瞬間、虎龍(フーロン)の右手から放たれた一撃が柄を弾く。


「まさか......」

轟道の両手が傾く。


「その顔......やはり、狐だったな」


虎龍(フーロン)が出した一手、それは......形意拳が一つ『蛇拳』。

全身の筋肉を弛緩させ、局所的に気を集中、それが爆発するが如き速度を実現させる。


気を食らった柄に亀裂が走る。

だが、割れることはなかった。


それでも轟道の体勢は万全ではない。

大きな隙だ。

技の起こりを読もうと轟道は虎龍(フーロン)を凝視する。


しかし。

虎龍(フーロン)が後ろへ退く。


「狭いな、貴様もそうだと思うが......別へ移るか?」

虎龍(フーロン)から出たのは場所変えの提案。


(俺は今、情けをかけられたな)

「ここで十分だ。お前を斬り伏せるにはな」

轟道は槍を手元に戻した。



槍が頼りなくなった。

俺がそう思ったのは、これで2度目だ。


いや.......違うだろ。

槍を頼っているのは俺だ。

その俺が槍に見限られたと思ってどうする。


とはいえ、このままだと敗北(ま)けてしまう。

ならば、方針転換と行こう。


通常では槍の使用が8割だったが、それを変え、近接技術を8割へ!


でなければ、こいつは倒せん!



現在、虎龍(フーロン)に与えられた唯一の傷は腹圧によって塞がっている。

かたや、轟道は内部がもうぐちゃぐちゃだ。

もう一度同様のものを受ければ敗北は免れない。


轟道が左にいる虎龍(フーロン)へ向き直る。

その時、彼の目は虎の威を狩る狐だった。


(......面白い。纏う空気が一変した)

虎龍(フーロン)が『弓歩(ゴンブー)』の体勢で迎える。

その口角は上がっていた。


轟道が槍を投擲。


(武器を手放すか)

虎龍(フーロン)は反応し、右へ避ける。

すると、槍は奥にあった店のガラスを破り、ある商品棚で止まる。


同時。


轟道が駆け出していた。

『縮地』。

虎龍(フーロン)との間にあった大地が消え去る。


「それは見た」

虎龍(フーロン)には予測されていた。

直線上に上げられた左脚が置かれる。


だが、肝心の轟道が視界にいない。

轟道は彼の足下にいた。


(金的かあるいは足を崩させるか)

虎龍(フーロン)が足を戻し、轟道の首へ喰らわせようとした。

瞬間、腹部に重い勢いが伝播する。

その衝撃に逆らえず、虎龍(フーロン)が店内へ侵入する。

倒れた場所にはガラスが散りばめられていた。


「何をした?」

虎龍(フーロン)がおもむろに起き上がる。

すると、ガラス片は彼に刺さることなく、地面へ全て落ちた。


「こっちの方が訊きたいさ。だがいい、教えてやろうか。これは『合気道』だ」


『合気道』は護身のために創られた技術で相手の力を利用して受け流すもの。

果たして今のはそうと言えるのか。


「ん? 妙だな。その技術は攻撃そのものではない。するとしても、別の技で補わないといけない」

虎龍(フーロン)の疑問はもっともだ。


「力を流す。これはお前の技の延長線上だろう? そこを利用したまでよ」

轟道がまたもや、突撃する。


空手で培われた体幹と腰運動。

柔道での粘り強さ。

合気道の流しと力の読み。


「ふっ! はっ!」


それらを全て駆使し、目にも止まらぬ速さで連撃を繰り出した。

虎龍(フーロン)は両腕を守りに集める。


(虎龍(フーロン)さんならなんとかしてくれる.......いや、なんか押されてない? 押されてる!?)

外から覗き込む王(ワン)は驚愕していた。


あの虎龍(フーロン)が正面から押されていることに。

だが、それには利用があった。


(一見、乱雑な拳.......だが、その全ては打撃が有効になり得る部位のみ。守りから攻めへ転じられるとこうも厄介なのだな)

と考えつつも、虎龍(フーロン)は『化勁』で威力を地面に流していた。


ある地点へ迫った時、虎龍(フーロン)の横には槍の穂先が見えた。

瞬間、轟道の右手が槍の柄を掴む。

突如、槍が下から跳ね上がる。


(守りから攻めへ? まるで違った。ただ、割合が変動させただけだったのだ)

虎龍(フーロン)にできる抵抗は腕を引くことだけだった。


刹那、逆袈裟に胴体から赤が零れる。

虎龍(フーロン)が後ろへ跳ぶ。

商品棚が背にある状態だ。


(こやつ......俺を倒すためのマニュアルを完成させつつある.......だが、1つ惜しい。それはまだ我が全てを見せていないことだ)

虎龍(フーロン)は笑いそうになるのを堪え、更に気を引き締める。


ここまで来ても依然、虎龍(フーロン)が優勢。

なぜ、彼はここまで強いのか?


昔、虎龍(フーロン)には好敵手......ライバルがいた。

その名は載(タイ) 星宇(シンユー)、分家の生まれである。

虎龍(フーロン)が初めて対峙したのは10歳頃だ。

載(タイ)家では10歳に上がると、同じ歳の相手と実戦をすることとなっていた。

彼は星宇(シンユー)を見た時、分家が本家に勝てるわけがないと高を括っていた。


だが、結果は引き分け。


虎龍(フーロン)はショックを受けた。

そして、対決して分かった。

自分よりも星宇(シンユー)の方が武の才に恵まれている、と。


それと同時に決心した。

15歳までに星宇(シンユー)を圧倒してみせることを。


だが、その願いは叶わなかった。

14歳の頃、星宇(シンユー)が自身の独立に反対した者たちを殴り倒したのだ。

正式な試合ではない。

ここまでの悪事見逃すわけにはいかない。

そうとなれば、その末路は破門である。


彼は自分が一族の傀儡となることを潔しとしなかった、当然の結果だ。


だが虎龍(フーロン)、彼はいつかまた会う時まで鍛えておくことにしたのだ。

今までの鍛錬を2倍、3倍とこなしていった。

その全部は星宇(シンユー)を倒すため.......だが。

その努力と強さは本人の意図せぬところで一族の偶像となっていく。

そして、いつしか『載(タイ)一族現当主』と成る。

本人はただ勝ちたい、その一心だったというのに。


彼の本気を見ることはできるのだろうか。

そして、轟道はこの男に勝つことができるのか。

勝利はどちらの手に......!?



ピーッ、ピーッ、ピーッ。

時を同じくして......病院にて。

依然、神橋は病床に臥している。


「神橋君......まだ目を覚まさないか。だが、生体反応がある以上、私は諦めないよ」

その傍らに『最強』でもあり、医者のリテロがいた。


「ん?」

リテロが目を丸くする。


ピーッ、ピーッ、ピーッ。

電子のバイタルセンサにほんのわずかな変動があったのだ。


(脈拍、呼吸数、体温、血圧、全てが上昇傾向......? しかも、下降した状態からでなく、最高に記録している数値をわずかだが越えている。これは......覚醒の兆候!?)

普段の医師ならば見逃しかねない動き。

だが、それを目で掴んでいた。


「ま、起きるにしても時間かかるだろうけど」

リテロが席を外す。


去って数分が経つ。

神橋は変わらぬままに眠っている。


......否ッ!


ドクンッ。

鼓動するようにバイタルが急上昇。

すると、奇跡が起こったのだ。


彼の瞼(まぶた)がゆっくりと開かれた.......
























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