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7/23

2026年7月1日 AM10:34

「ただいまぁ。」

今回の"ただいま"はもう、大きな声にはならなかった。

この"ただいま"の先にはきっともう、両親はいない。

この"ただいま"は、自分に向けた”ただいま”だと思った。


玄関の鍵を閉めて、靴を脱ぐ。

冷房をつけたままにしていたから、リビングの空気が冷たい。

冷蔵庫に直行して、冷たいお茶を飲む。


とりあえず、この家は安全だ。

そう思うと、力が抜ける。

ふらふらとリビングのソファまで歩いて、へにゃりと座り込む。


さっき家を出るまでは不安を煽っていたこの場所が、今はいつもの安心できる場所に戻っているのが不思議だった。

あんなに気になった時計の音も、今は気にならない。

視線を上げた先にあるリビングの掛け時計は、AM10:34を指している。

今朝目が覚めてから、まだ5時間も経っていない。

状況の変化が激しすぎて、心の動きが複雑すぎて、思考がついていかないなと思った。


ソファの背もたれにもたれかかって天井を見上げる。

普段だったら、今は2コマ目の授業が終わった休み時間で、今日は水曜日だから次の授業は数学だ。

普段、いつも通りの日常。

ああでも、その"普段"は昨日までの私の普段であって、どうやら今日からの私の普段ではないらしい。

今日からの私の"普段"は、まだまだ全然、想像もつかない。


「お腹すいたな…」

落ち着いたら、空腹を自覚する。

そういえば朝ご飯を食べていなかったことを思い出した。

この気づきは今日三回目だなと思って、また自然と苦笑が漏れる。

今回は涙は溢れなかった。

大丈夫、だいじょうぶ…


何かを調理する気力はもう残っていなかったので、朝ご飯になるはずだった食パンを2枚、トースターに放り込んでタイマーをセットする。

冷蔵庫からいちごジャムと牛乳を取り出す。

卵が9個並んでいるのが見えて、家族三人なら3日で食べる量だけど、私一人で食べきれるかな?と思った。

野菜室を開くとミニトマトがあるので、3粒取り出して、軽くゆすいで皿に盛りつける。

"チンッ"という"平常通り"の音がしたのでトーストを取り出す。

食器を運んで、4人掛けのダイニングテーブルの、いつもの場所に座った。


私の前にはお母さんが座って、はす向かいの席にはお父さんが座って。

平日でも、みんな揃うのを待って、みんなでいただきますを言って、朝食を食べるのが日課だった。

仲のいい家族だったと思う。

今は、私一人になってしまったけれど。


トーストにジャムを塗って、一口かじる。

トーストの端が少し焦げてしまっていて苦みを感じる。


ミニトマトを1つ、口に放りこむ。

今どきのトマトにしては大分青臭い感じがした。


牛乳はまあ、いつも通りの味だ。


今日の朝食はちょっと失敗だねって。

そんな他愛もない感想を伝え合える相手は、ひょっとするともう、2度と巡り会えないのかもしれない。

タイトルを少し変更しています。


次回は8/8(土) 20:40に更新する予定です。

と思ってたら時間設定間違えててフライングしました。。。

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