2026年7月1日 AM9:38
家を出て歩き出す。
まずはその先にある陸橋の上に行こうと思った。
陸橋の最頂部から街並みを眺める。
鉄道の架線をまたぐ陸橋なので、最頂部は高さ15mくらいだろうか?
今日訪れた場所の中では一番見晴らしがよい。
少し上から眺めた私の家は、東側に3区画進むと線路に、西側に2区画進むと小さな都市河川に行き当たるという、狭い島のような場所にあった。
南に3区画進むと、今登っている陸橋のある、比較的幅の広い道路が通っている。
線路の東と西は、この陸橋でつながれている。
北にはしばらく住宅街が続いているけれど、500mほど北で都市河川が線路に交錯している。
そういえば、あの川にかかっている線路沿いの橋に車が刺さっていたなと、陸橋から北の風景を眺めて思い出す。
火災の規模が思っていたよりも大きいことがわかって、咄嗟には言葉が出なかった。
遠くに見える黒煙まで含めると、20や30では利かないと思う。
しかし、大きなマンションやスーパーマーケットなどの目立つ建物との位置関係から、一番近い延焼地点でも2kmくらいは離れていそうだとわかって、少しほっとする。
まだかなり距離があるし、仮に近くまで迫ってきたとしても、容易には川や線路を越えることはできないと思われたからだ。
小学生の頃に防災教室の一環で見た、過去の巨大地震を記録した映像を思い出す。
去年、この場所を選んで家を建ててくれた両親のことに思い到った時に、少しだけ胸が痛んだ。
ダメだ、弱気になっちゃだめだ…
陸橋を囲うフェンスをつかむ手に力を込める。
差し迫った危険があるとすれば、この区域の中で新たな火災が発生することだろうか。
とはいえ、今の時点で出火していない家屋から新たに出火する可能性は低いだろうと考えていた。
私が朝起きてからでも、すでに4時間近くが経過している。
今は夏であることから、電気ストーブのような比較的温度の低い熱源が屋内に存在するとは考えづらいので、今回の火災の発生原因はほぼ火の不始末によるものだろう。
そして、火の不始末から延焼が広まるまでにかかる時間は精々2時間くらいだと思うからだ。
となると、残る不安要素は自動車の暴走だけれど、幸いなことに、火災と同じく自動車についても、これから新たに線路や川を越えてくるというのは難しいと思われた。
それらを越えられるとすれば橋や踏切を渡るくらいで、その確率は非常に低いだろう。
唯一南側からは侵入の可能性がありそうだが、陸橋の南側には住宅地が広がっており、長い直線道路がないためその可能性も低そうだ。
つまり、川と線路、この陸橋に挟まれている区域に動きそうな自動車がなければひとまずは安全、と考えて良いと思う。
「ひと通り回って確認してみよう」
次の行動を具体的な言葉にして、自分を動機づける。
陸橋を降りて、自宅の周辺区域を一通り回った。
こちらも幸いなことに、朝見かけた2台の車以外に動いている車は見当たらなかった。
運がよかったなと思ってほっとしたけれど、はて今の状況は本当に運がいいと思ってよいのだろうか?とすぐに思い返して、思わず苦笑が漏れる。
「なんだ、私、笑えてるじゃん」
そう思うとなんだかおかしくて、それなのになぜか、目じりから一粒、涙がこぼれてしまった。
次回は、8/6(木) 20:40に更新予定です。




