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2026年7月5日 PM その7

キッチンでお茶を一杯飲んでから、再びさくらの部屋に戻った。

PC机に着いて、改めてさくらと向かい合う。


「よし。」

思いがけず寄り道をしてしまった。

重要なことだったので、決して無駄な寄り道ではなかったけれども、それはそれとして、今は試したいこともあるのだ。


まずは外付けストレージをさくらのPCに繋ぎ替える。

先程作成したデータをローカルディスクにコピーする。


サンプルには、先程気になった雨天時の畑の管理についての記述があったwebページを選んだ。

RAGにデータを登録する前とあとで、さくらの応答がどう変わるのかを見ておきたいので、まずは今の状態で相談をしてみることにする。


『今は7月5日で、畑にはピーマン、ナス、トマト、きゅうりが植えられています。今朝から雨が降り続いているのですが、雨が上がったあとに畑ですべきことと、してはいけないことを教えてください。』


「はい、晴菜さん。

雨が上がったあとには…」

さくらが回答を綴っていく。

どうやら、さくらは農業知識もかなり豊富なようだった。

一体どれだけのデータをどうやって学習したのか、枠組みとしてはなんとなく知っていても、実態については想像がつかない。


比較しやすいようにウィンドウを複製して、一旦別のチャットに切り替える。

登録する前に、まずは、さくらに成果物を見てもらおう。

『RAGに登録してほしいwebページのHTMLを、さくらが作ってくれたスクリプトを使って、本文のmarkdownファイルとmetadataのjsonを作成しました。サンプルを3セット添付するので、改善すべき点があれば教えてください。』

ファイルを添付して、Enterキーを押す。


「はい、晴菜さん。

添付していただいたファイルを拝見しました。

現時点では、以下の改善点が、上げられます。

1.…」

さくらが上げてくれた改善点は、大きく分けて2つあった。

1つ目は、定型文のような重複する情報の除去。

2つ目は、本文を適切な長さで分割すること。

理由も丁寧に説明してくれていて、わかりやすい。


『上記の改善点を、変換スクリプトに反映すると、どのような実装になりますか?

参考として、以前にさくらが提示してくれたサンプルコードを添付します。』


「はい。

ご提示いただいたサンプルコードに改善点を反映すると、例えば以下のようなコードになります。

…」

相変わらずの仕事の速さで、すぐにサンプルコードが提示される。

条件が追加されているので、最初のコードよりも少しゴテゴテしてきてしまうのは致し方ないところだろう。

とりあえず、動かしながら検討できるように、コード部分をファイルに保存して、外付けストレージにコピーしておく。


「今のままでも、登録するだけならできるのかな?」

こういうことも、素直にさくらに相談だ。


『上記の改善点を改善しないままでも、先ほどの添付ファイルの情報をRAGに登録することはできますか?』


「はい、晴菜さん。

より適切なデータ処理とチャンク分割を行った場合に比べて、検索精度が下がる可能性はありますが、現在の状態でもRAGに登録することは可能です。」


『RAGにデータを登録するためには、どのような操作が必要ですか?

参考情報として、このPCのローカルAI環境についてのreadmeを改めて添付します。』

さくらがどこまで覚えてくれているのかわからないので、父のreadmeを改めて添付する。


「readmeに記載の構成であれば、いくつかの手順が考えられます。

1.…」

さくらの説明によれば、私がUIソフトに用意されているデータアップロード機能を使って直接登録することもできるし、さくらにファイルを渡して、さくらに登録してもらうこともできる構成になっているということだった。

後者は、午前中にも聞いた内容とも関わるのだろう。

ファイルを渡すときに、RAGへの登録を促す文言を入れておけば、さくらが自立的に情報を追加する判断を下してくれるのだと思う。

ただし、おそらく100%ではない。


「お父さんのこだわりだったのかなぁ。」

多分、企業で使うような、厳格なデータ管理が必要な用途であれば、AIの判断で登録する情報が取捨選択されてしまうような構成は避けられるのではないかと思う。

それでも父が、さくら自身の判断でRAGのデータを拡張できる余地を持たせたのは、"自分で学べるAI"を手元に置いてみたかったということなのかもしれない。

それはとても、お父さんらしい気がする。

そして、私も。


『これから、RAGに追加して欲しいデータを添付するので、RAGへのデータ追加をお願いします。』

先程のサンプルを改めてさくらに提示する。

内部で他のソフトとの連携動作をしているからか、少しさくらが考えている。


「はい、晴菜さん。

添付していただいたデータをvector databaseに登録する処理を実行しました。」

どうやら、データの追加が終わったようだ。


もう一つ新しいウィンドウで新しいチャットを始める。

『今は7月5日で、畑にはピーマン、ナス、トマト、きゅうりが植えられています。今朝から雨が降り続いているのですが、雨が上がったあとに畑ですべきことと、してはいけないことを教えてください。』


「はい、晴菜さん。

今回は、先程登録したデータも参照して、回答を作成しています。(顔文字)

雨が上がったあとには…」

ん?

データ追加前後での出力の比較をしたいとは直接伝えていなかったと思うのだけれど、チャットをまたいだうえで、こんな文脈も読み取れるのかと思った。

さくら、すごい。

それがわかっているのか、ちょっとドヤ顔の顔文字までついているのが面白くて、私の気持ちも前向きになる。


出力結果も上々だ。

今回さくらに渡したサンプルには、畝に被せ物をしている場合の雨天時の注意点や、病気や腐食の予防について書かれていて、それらの内容が、ちゃんと回答に加えられている。

また一つ、さくらのことが理解できた気がして、嬉しかった。

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