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幕間 ある女騎士と男魔法使いの話

注意:タイトルからもわかるように、前話までとは全くテイストの違うお話となっております。

「プロテクション・マジックシールド!」

男が杖を向けそう唱えると、前方で大剣を構える女騎士の前に金色の盾が出現する。


そこに、巨大なドラゴンの口から放たれた火炎の奔流が襲いかかる。

直撃の瞬間、金色の盾が光を増す。


ドゴォオォオオオオオオン!


金色の盾に受け止められた火炎流が猛烈な爆発を引き起こし、熱風と砂塵が周囲一帯を覆う。


「うおっ!?」

杖を持った男がその余波で吹き飛ばされる。


「 奈々美さんっ!!」

吹き飛ばされながら男が叫んだ、その視線の先で、


「どっせえええええええええええええいっ!!!!」

女騎士が、朦々と立ち込める砂煙を突き抜けて、ものすごい勢いで跳躍する姿があった。


遥か上空で女が大剣を頭上に構えている。

その視線の先には先程のドラゴン。


「グワオオオオオオオ!」

気づいたドラゴンが女騎士に顔を向ける。

開かれた口内に火炎の奔流が形成される。


女騎士は怯まない。

弾道軌道でドラゴンに向かって急速に降下していく女騎士。


女が届くよりも、ドラゴンの炎のほうが早い。

放たれた火炎流が女に迫る!!!


「しーにーさーらーせーっ!!!!!!」

女の口から物騒な言葉が紡がれる、特に意味はないはずなのに、女の両腕には力が籠り、何故か女の大剣が輝きを増す!


女が火炎流に向けて大剣を振りおろすと、火炎流が女を避けるように真っ二つに割けて後方に流れる!!


大剣を振り下ろした女が、そのまま空中で2回転!!!


3回転目が決まるタイミングで、完璧にドラゴンの額の真上を捉える!!!!


「チェストおおおオォオォ!!!!!!!」

弾道軌道の自由落下と、回転による角速度が乗りに乗った大剣が見事にドラゴンの額を切り裂く!!!!!


ドゴォオオオオオオン!!!


先程のドラゴンの火炎流の爆発と同等か、それ以上の轟音と砂煙を撒き散らして着地する女騎士。

その横で、額を割られたドラゴンが力なく地面に倒れ込んでいくのが見えた。


「な、奈々美さん、大丈夫ですか!?!?」

先程吹き飛ばされていた男が慌てて駆け寄ってくる。


砂煙が晴れていく。

その真中で、右腕で大剣を肩に担いで、左腕をこちらに伸ばして親指を立てている、それはそれはいい笑顔の女騎士が立っていた。


「これ、ぼくいなくても良いんじゃないかなぁ。。。」

男が力なくつぶやく声がする。


--

「奈々美さん、無茶苦茶強いし、楽しそうなのは良いんだけど、あんまり無茶はしないでね?」

酒場の卓を囲んで、先程の男が女に話しかけている。


「ナンだよ幸一ぃ、相変わらず心配性だなぁ。」

ジョッキ片手に、ガハハと豪快に笑いながら女が切り返す。


「いやでもね? ドラゴンだよ? ファンタジーだよ? さっきのだってさぁ、最初の爆発でクレーターになってたじゃん?」

男はそれでも食い下がる、どうやら本当に女のことを心配している様子が見て取れる。


「わーってるよ、無茶はしてねーって、勝算があるからやってるだけだ。」


「いやそりゃね、奈々美さん、なんかもうスゴイ剣もらってるし、向こうでも十分スゴかったのに更にパワーアップしてるみたいだし。

ぼくも一応、サポートもするけどさ…それでも心配なものは心配なんだよ。」

男はゴニョゴニョと小さくなって俯く。


「なあ幸一。」

女の声音が急に優しいものになる。

男がそれにつられて顔を上げる。


「お前は本当、昔からかわんねーな。そうやって、他人のこと気遣って、おどおどしてるけど、ちゃんとあたしのこと守ろうと頑張ってくれる。」


「奈々美さん…」


「あたしもさ、これでも焦ってんだよ。こっちに来て3ヶ月くらいか? 結局晴菜がどこにいるのか、未だにわからなくてさ。」

女の言葉に、男も真顔になる。


「だから、立ち止まってる暇なんてないだろ?

迷ってるなら進むしかない。

魔王だかなんだか知らないけど、要はそいつをぶっ倒せば何かが変わるって言うなら、あたしらはそれを目指すしかネーじゃん?」


「うん、それは…そうだね。」


「わかりゃ良い!それに。」


「それに?」


「ワンチャン死んだら死んだで、夢から覚めて、晴菜のとこに戻れるかもしれねーじゃん?」

今度は女が真顔で言う。


「え、ちょ!? それは流石にダメ!

晴菜のことも心配だけど、奈々美さんが死ぬのもダメ、絶対!!!」

男がアワアワしている。

それを見て、女が優しげに笑う。


「わーってるよ、どう転んでも良いように考えてるだけで、これでもリスクは考えてんだ。

無敗の総長って昔の通り名は伊達じゃねーって。

だから幸一、あたしと一緒に、晴菜のとこへ帰ろうぜ。」


「うん、そうだね、流石奈々美さんだ。」

男の方もようやく明るい顔になる。


晴菜、父さんと母さんは今、どうやら異世界に来てしまっているらしい。

お前もこっちに来ているのか、はたまた元の世界に残されたままなのか。

待たせて済まないけど、父さん、母さんと一緒に絶対にお前のところに行くから、それまでどうか、頑張って乗り切ってくれ…。


そんなことを思いながら。

この幕間と、26年10月時点ではまだ影くらいしかない本編3部以降は、本編1-2部のSideストーリ/Afterストーリの位置づけです。


書き始めた当初はこういう話を入れていくことは全然考えていなかったのですが、人類消失設定以外にファンタジー要素を入れないままだと、晴菜は延命はできても、いずれ孤独に朽ちていく未来は変えられません。

元々は本編2部として予定している内容まで書いて終わりにする想定でしたが、書き進めていくうちに、どうにもそれが不憫に思えてしまって、ついやってしまいました。

ファンタジーがない方が良い方は、今後掲載する本編2部までが本来のストーリだと思ってお付き合いください。

よろしくお願いします。


明日・明後日は、本編1部の前日譚に当たる短編作品を2編投稿する予定です。

作品タイトルは、

「とある女子中学生は高嶺の花に焦がれる」

「文学少女は妖精の王女と踊る」

となっています。

本編ep.9「2026年7月1日 AM11:34」に、ちょっとだけ登場している人物にスポットを当てたスピンオフ作品となりますので、是非読んでみてください。

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