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2026年7月4日 AM その1

いつも通りの、目覚まし時計のアラームが鳴る。

ちゃんと自室に戻って眠ったのは、自分でも偉いなと思う。


目元を中心に違和感がある。

今日も、眠っている間に涙を流してしまっていたのだろう。

「私って、思っていたよりも感情的なのかな?」

昨日一日の自分を振り返って、寝ている間に涙を流していたであろう自分を想像して、そう思った。


起き上がって、窓辺まで歩いて、カーテンを開けてみる。

今日も清々しい朝だ。

夜に感じていた複雑な気持ちを、今はほとんど感じなくなっているのが、やっぱり不思議だった。

「すごいんだね、太陽さん。」

まぶしすぎて直視できないそれにも、なんとなく声をかけてみる。

窓越しでも伝わる夏の熱気が、応えてくれているような気がした。


カーテンを閉めて、壁に掛けてある制服を手に取って、部屋を出る。

見慣れた廊下、私以外が開けることはなくなった部屋の扉がもう2つ。

そのままにして、階段を下りる。


洗面所で、顔を洗って、歯を磨いて、髪を整える。

幸い、まだ水道は止まっていなかった。

昨日、近々髪を切ろうと決めたから、今日は髪を下ろして過ごすことにする。

これも、お別れの儀式だ。


持ってきた制服を洗濯ネットに入れて、洗濯機をセットする。


そのままキッチンへ向かう。

キッチンにあるHEMSのリモコンで電力の状況を確認すると、まだ外部からの電力供給が続いているようだった。

「水道はともかく、電気は思ったより長く保ってるなぁ、ありがたいことだ。」

蓄電池の残量は100%になっている。

一昨日の時点で、発掘したマニュアルに従って充電優先の設定に変更しておいたので、"停電よ、来るなら来い!"、という気分でいられるのも、本当にありがたいことだった。

備えておいてくれた父と、そのことに気づかせてくれた"彼女"と、無人になってから3日以上も運転継続できる頑強な自動化システムを構築してくれた電力会社のみなさんに感謝する。


「朝ごはん、どうしようかな?」

昨日までは当たり前に食べていた食パンは、もうない。

昨日スーパーで見てみたけれど、やはりパンの賞味期限は短くて、持ってくるのはやめておいた。


「水と電気があるうちに、乾麺の類を食べておくのが良いかもね。」

そう思って、鍋に水を張ってIHにかけて、パントリーに残されていたそうめんを取り出す。

水が停まったら麺を茹でるために潤沢に水を使うことはもったいなくてできないし、お湯を沸かすための電力もそれなりに必要になってしまうから、限りある電力を投入する先としても効率が悪い。

以前であれば手軽で質素だった料理が、前提条件が変わると贅沢品になるというのは、ちょっと面白かった。

お湯が沸いたらそうめんを投入する。

さっと茹でて、火を止めて、シンクでザルに移して、流水で洗う。

「うん、改めて作ってみると、本当に贅沢だ。」

水道が生きているうちに、そうめんは食べきってしまいたい。


野菜室から、昨日調達してきたトマトときゅうりを取り出して、切って盛りつける。

野菜も意外と日持ちするんだなって、今まで全然気にしてこなかったことに色々と気付けることは、素直に嬉しい。


食器をダイニングテーブルに運んで、いつもの席に座る。

1人でここに座るのにも、大分慣れてきてしまった。

手を合わせて、

「いただきます。」


ご飯を食べながら、今日1日の予定を組み立てる。


まずは、畑の観察と写真撮影。

日々の生育状況や天候を記録しておくと後々参考になると、農業関連のwebサイトに書かれていたので、お手本がある今のうちこそ実践しておくべきだろう。


次は、昨日とは逆方向にある、ホームセンター、図書館、総合スーパーの様子を見に行くこと。

これらの施設は深夜には営業していないので、おそらく入口は閉まっているだろう。

ただ、ひょっとすると守衛室とか夜間通用口みたいなところから入れるかもしれない。

もしも、簡単に入れる場所が無かったら…その時は、鍵やシャッターを壊してでも入らないといけないと思っている。

この3箇所には、他では手に入らない重要なものがたくさんあるはずだから。


あとは、家事。

洗濯は、出かける前にこの2日分の衣類も洗って干していこう。

掃除は丸3日間サボってしまっているから、そろそろ気になっている。

料理の作り置きも出来るならやっておきたい。


やるべきことがたくさんあるのは、今の、迷子の私には良いことだと思う。

手持ち無沙汰に感じるくらいなったときには、私は道を見つけていられるだろうか。


そんな事を考えているうちに、いつの間にか、そうめんの器は空になっていた。

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