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2026年7月3日 PM その4

気がつくと、右の頬に冷たくて硬い感触があった。

すぐには、状況がわからない。

頭が混乱している。

目を開ける。


しばらくして、どうやら、自室の床の上らしいと理解する。


徐々に、意識を失うまでの記憶が蘇ってくる。

「私、生きてるんだ。あんなに苦しかったのに…」

呼吸はすっかり落ち着いていた。

普通に息が吸えることのありがたみを実感する。

このまま死んじゃってもいいかもしれないと思いかけたことも、この3日間に何回かあったけれど、やっぱり、私は死にたくはないようだ。


腕を床について、上体を起こす。

一度、深く息を吐いて、息を吸う。

いつもと変わらない、ただの自室の空気なのに、何だかとても、新鮮な感じがした。


改めて見回すと、見慣れた自分の部屋の景色が見える。

椅子から立ち上がろうとして倒れたときに払い落としてしまったであろうマウスが、机からだらりと垂れ下がっていて、赤外線スキャナの光が壁を照らしている。


時計を見ると、まだPM4時を少し過ぎたところで、そんなに長く意識を失っていたわけではないとわかる。


とりあえず、生きていることに安心する。

また、さっきの症状が現れたらと考えたら、泣きそうになるくらいには怖かったし、苦しかったけれど。


「⋯私、大丈夫だよね?」

自分なりに、起こったことを分析する。

上手く呼吸ができなくて、苦しかっただけで、それ以外の症状はなかった。

一度症状が治まった今は、もう、息苦しさは感じていない。

恐らく、心理的ストレスに伴う発作的な身体反応の一種だろうと推測する。

そういえば、高校受験のときに、試験会場でよく似た症状を起こしていた生徒がいたと思う。


「ま、仮に何かの病気だったとして、今の私にできることは何もないんだし、だったら、気にしたって仕方ないかな…」

そう思うことにする。

私でもできることで、私がやるべきことが他にもたくさんあるのだ。

できないことで悩む暇があったら、前に進んでいくべきだろう。


何より、

「ここまで嫌われると、逆にしがみついてでも長生きして、幸せに暮らしてやらないとって気になるよね。」

って、思うから。


立ち上がろうとすると、ひどい立ちくらみに襲われた。

ふらふらとベッドに倒れ込む。


すぐに起き上がる気になれないくらいには、心も身体も消耗しているようだった。

「このままもう少し、休もう…」

そう決める。

ここで無理をしたって仕方がないのだから。


右腕で視界を覆う。

視界が塞がれて、脳の処理負荷が下がったのがわかる。

規則正しい時計の音だけが響いて、思考を整える手助けをしてくれる。


"世界"という何者かがいて、本当に私に対して悪意を向けていると、本気で思っているわけではないのだ。

ただ、運悪く私1人が取り残されただけ、きっと、その程度のことのはずなのだ。

何かのせいにした所で、今のこの状況が、変わるわけではない。


でも、

「そう思ってたほうが、頑張れそうじゃん…」

せめて、戦う相手くらい作っておかないと、この状況を乗り越えていけそうにないから。

だから、そう思っておけばいいのだ。

だって、こんなにも理不尽を押し付けられているのだもの、憎まれ役を押し付けたって、バチは当たるまい。


「それくらい、サービスしてくれてもいいでしょう?」

って、"世界"に向かって話しかけてみる。


そのまま、また少し意識を手放す。

とにかく今は、身体と心が、休みたがっていたから。

明日以降しばらくはDailyでの更新を予定しています。

投稿時刻は引き続き20:40頃の予定です。

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