2026年7月3日 AM その4
ふぅ、と、ようやく一息つく。
ひとしきり笑ったからか、何だか気持ちが楽になった気がする。
"7月1日0時0分に、私以外の、すべての人類が消失した"
こう仮定すると、次に行くべき場所が明確になって、そのことがまた、私の機嫌を上向かせる。
「つまり、24時間営業のスーパーなら、簡単に入れるってことだよね。」
駅の東側に、24時間営業の少し大きなスーパーがある。
そこに行けば、シャッターは閉まっていないはずだ。
なんだか今日は、足取りが軽いなと思う。
今いるスーパーは、2日前の駅からの帰りに通った大通りに面している。
なので、2日前とは逆方向に、駅に向かって歩いていく。
途中、2日前の事故現場の横を通る。
あの時動き出したSUVは、バイクと一緒に反対側のガードレールにぶつかって停まっている。
他の車は大体元の位置のままで、どの車も、すでにエンジンは停止していた。
きっと、燃料が切れたのだろう。
安心すべき材料なのだけれど、これもまた一つ、無くなっていってしまうものなのだと思うと、寂しさを覚えた。
コンビニのある交差点を曲がって、駅に向かう。
信号機のある交差点。
赤信号だったけれど、念のため左右を確認してから、青に変わるのを待たずに渡ってしまった。
駅が見えてくる。
高架橋のペデストリアンデッキと一体化している駅舎の下に、2日前からずっとそこにいるであろう、電車が見える。
階段を上る。
ペデストリアンデッキを抜ける途中、2日前と全く同じ状態の改札が見える。
改札機の先に見える電光掲示板に、先発 AM00:01発の文字が見えて、また、クスリと笑ってしまう。
「この前は、あんなにも怖かったのにな。」
今は笑えているのが、やっぱり可笑しかった。
線路を越えて、階段を降りる。
そのまま進んで、線路の東側にある幹線道路との交差点に差し掛かったところで、ここまで可笑しさが勝っていた気持ちがスッとリセットされる。
交差点から少し離れたところに、大破した2台の車が見える。
1人きりになってはじめて、本当の交通事故現場に遭遇した。
どうしても確認したくなって、少し寄り道をする。
近づくと、路上に車の破片が散乱しているのがわかった。
お互い車体の前面が大きく破損していたので、正面から衝突したことがわかる。
「きっと、十分に減速する前にぶつかったんだ。」
改めて考えれば、そういうケースも、あるよねと思う。
確率は、低いのだろうけれど。
多分、広い世界では、もっとたくさんのひどいことが起こっていたはずだ。
いや、今もひどいことが続いているのだろうと思う。
今もまだ燃え続けている、数多の火災現場のように。
「運がよかったんだな、本当に。」
本当に、そうだと思う。
気持ちを切り替えて、元の道へと戻る。
「深夜だったから、この程度で済んでいるのかもしれない。」
そんなことを考えながら。




