2026年7月3日 AM その3
山本さん宅を後にして、いつものように陸橋に上って火災の状況を確認した後で、最寄りのスーパーマーケットへ向かった。
この辺りは新興住宅街で、近隣には政令指定都市と、産業の集積地がある。
少子高齢化で人口減少が進んでいたこの国の中では珍しく、人口増加を継続している稀有な地域だった。
なので、徒歩圏内だけでスーパーマーケットが5店舗はある。
まずは、その中で最も近い場所にある中規模の店舗へ向かうことにする。
西側の都市河川を越えて数分歩くと、スーパーの広い駐車場が見えてくる。
普段の日中はそれなりの車が止まっていたはずのその駐車場には、今は一台の車も止まっていない。
手前の信号交差点、信号機は律儀に動いている。
進行方向が赤信号だったので、律儀に停まってしまった自分が少し可笑しくて、思わずくすっと笑う。
前後左右、どの道を見ても、走っている車はない。
遠くに、何台かスタックしている車がいるのが見える。
あの車たちは、まだエンジンが動いたままなのかな?とふと思った。
「3日目ともなると、さすがにガソリンが切れる車も多いような気がする、あとで確認しないと。」
そんなことをつぶやいている間に、信号が青に変わった。
思いがけず信号を守ることになってしまって、それがまた可笑しくて、
「私って、律儀だなぁ。」
って、笑いながら横断歩道を渡った。
スーパーの入り口まで来て、
「あー、そうだよね、そうだよ。」
と思わずつぶやく。
スーパーの建物はシャッターが下りていて、簡単には入れそうになかった。
念のため、建物の外周をぐるりと回ってみる。
バックヤードの入り口も扉が閉められていて、鍵がかけられていた。
このスーパーは、21時に閉店する。
定員さんたちは、そのあと、清掃をして、レジを締めて、シャッターを下ろすのだろう。
「そう、きっと深夜だったんだよ、みんないなくなったのは…」
そこで、ふと、2日前のある場面の記憶が紐づいた。
誰もいない駅。
無人の窓口の横に改札機があって、その先に、先発と次発の電車を示す電光掲示板がある。
AM00:01発。
ホームに入線して、扉が開いていたままの電車。
普通、ホームに入線した電車の扉が開いている時間は、長くても1-2分しかない。
つまり、
「7月1日0時0分に、私以外の、すべての人類が消失した…」
「ふ、ふふっ、、、くくっ!、あははっ…」
あまりにもできすぎた時間設定で、可笑しくて、笑いが止まらなくなる。
今更、そんな事実に気付いたところで、今の状況にはなんらの影響も与えないのだけれど。
もやもやしていたことの一つが解消して、世界の真理を一つ解き明かした気がして、なんだか無性に、嬉しかった。




