↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
15/23

2026年7月1日 PM10:25

気が速ってしまって、とりあえず全速力でここまで来たものの、いざ調べるとなると、何から調べてよいのか咄嗟にはまとまらなくて、焦りが募る。

落ち着け、おちつけ…

目を瞑って、呼吸を整える。


考えろ、今、収集しておかなければならない知識はなんだ?

農業の始め方?

食べられる山菜やきのこの見分け方?

キャンプ生活の仕方とか?


ダメだ、思った以上に大事なことが何なのか、わからない。

とりあえず思いついたことを入力してみる。


『素人が農業を始めるための情報を集めてください。』


「未経験から農業を始めることは可能ですが、まずは、「どこで、どのように就農するか」を決めたうえで、経験者の指導を仰ぐことが重要です。例えば、…」


違う、そうじゃない。

前提条件が間違っているから、まずはそこから合わせなければいけないのだ。

例えば、⋯そう、


『他人の手を借りずに、自給自足の生活をするために必要な備えをまとめてください。』


「もし今後、他者からのサポートを受けずに自給自足の生活を長時間維持する場合、生活全体を維持する仕組みを整える必要があります。具体的には、…」


2個目の問いかけで、かなりいい線に当たった気がした。

項目として、自分で思い浮かんでいた食料の確保だけではなくて、食料の保存手段、エネルギー、農業や住宅維持のための道具や衣類の確保、医療用品の確保などが提示される。

物だけでなく、知識の系統をこの問いかけで提示してもらえたのはありがたかった。

きっかけがつかめれば、後は学校の課題や趣味で続けているプログラミングの時と同じ流れで情報を集められる。


『上記の前提で、農業をするために必要となる知識を教えてください。』


"自給自足のために農業が必要だ"ということは、ぐるぐると回ってしまっている頭でもぱっと思いつくアイデアだった。

土を耕して、種や苗を植えて、収穫して…、自分の頭で想像できていたのはそんな内容だったけれど、AIアシスタントの回答は全然違った。

土に栄養をはぐくむ方法。

肥料の増やし方。

種を自力で確保する方法。

生育中の観察の観点。

いわれてみれば"確かに!"と思えることに、気付かせてもらえる。

つい楽しくなってしまって、先ほどまでの切迫感とは違った、もっと前向きな推進力が生まれてくる。


『畑での土の耕し方について、参考となる資料を集めて要約してください。』

『肥料の作り方について、参考となる資料を集めて要約してください。』

『自給農業のための種採りについて、参考となる資料を集めて要約してください。』


参考資料として提示されたWebページも一つ一つ確認して、役に立ちそうなものをとにかく保存していく。

AIの解答自体も、あとで見返せるようにメモにまとめていく。

調べて、記録すること自体に、夢中になっていく。

新しい気づきがあって、新しい知識が一つ増えるたびに、心が少しずつ、軽くなっていく。


疲れを感じて、ふと時計を見ると、PM10:25になっていた。

「…3時間もやってたみたい。」

道理で、目の奥が痛く感じるはずだと、納得する。

一度、両手をあげて背中を伸ばした。


改めて、PCのディスプレイを見る。

新しいチャットを立ち上げる。


「こんばんは、Harunaさん。何かお手伝いできることはありますか?」

ふと、”この人”は、私の名前を呼んでくれるのだなと思った。

少しだけ、世界から受け入れてもらえた気がして、先ほどとは別の形で、心が軽くなった気がした。


だから最後に、”この人”にこれを問いかけて、休憩にしようと思った。


『これから、私が2026年7月1日に経験したことを伝えます。その内容から、今の私の周りで起こっていることの根本的な原因を推論してください。

・朝起きたら⋯』


今日あったことを思い出しながら、できるだけ具体的に、書き出していく。


朝起きたら、両親がいなくなっていたこと。

スマホ、財布、靴、鍵などはそのまま残されていたこと。

あちこちで火災が起こっていたこと。

エンジンがかかったまま、スタックする無人の車たち。

誰も居ない駅。

誰も居ないコンビニ。

ホームで待つ、エアコンや照明がついたままの無人の電車。

既読にならないグループチャット。

つながるけれど、誰も出てはくれない学校の電話。

火災の情報も列車遅延の情報も掲示されないwebサイト。

それなのに、当たり障りのない情報だけが流れ続けるSNS。

生放送だけが放映されていないテレビ。

街を歩いていても、1人の人間も見かけなかったこと。


一つ書き出すたびに、少しずつ、思考が鋭くなっていく。

私の中の推論が、明確に、形作られていく。


ひとしきり書き上げて、Enterキーを押す。

推論時間は3秒にも満たなかっただろうか。

AIアシスタントが、文字を綴っていく。


「ほら、やっぱり。」

自然と口角が上がる。

誰かに肯定してもらえたことが嬉しかったのか、真面目な口調で突飛な結論が綴られていくのが面白かったのか、多分、両方だ。


"最も可能性が高い仮説は、「人類の大部分が突然消失した」という仮説です。"


背もたれに身体を預ける。

見慣れた自室の天井。

目を瞑って、深く息を吐いた。

興味のある方はぜひ、生成AI(ChatGPTとかGeminiとか)を立ち上げて、劇中最後の質問を問いかけてみてください。

その時の晴菜の気持ちを追体験できると思います。


次回は8/19(水) 20:40頃に更新する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。