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2026年7月1日 PM5:58

「ごちそうさまでした。」

箸をおいて、手を合わせる。

静かなダイニング。

カーテンの隙間から入る陽の光が長くなってきている。

時計は、PM5:58を指していた。


思いがけずご飯を食べるのに時間をかけてしまったから、洗濯機はとっくに止まっているはずだ。

そう思って席を立って、食器をシンクまで運ぶ。


洗濯物を外に干す時は2階の両親の寝室のベランダに洗濯を干すから、洗濯用のハンガーやピンチは、両親の寝室に置いてある。

2階へ上がって、両親の寝室の前に立つ。

ドアノブを持つ手が、少しだけ強張っているのがわかった。


ドアを開ける。

カーテンから西日が漏れて少し眩しいこと以外は、今朝と変わらない景色。

サイドテーブルに並ぶ、充電器に繋がれたままの両親のスマートフォン。


朝、慌てて開け締めしたから、少しだけ締まりきっていなかったクローゼットの扉をそっと締める。

洗濯用品を入れている籠を手にとって、それ以外には触れずに部屋を出る。

部屋を出て、後ろ手にドアを締めて、一度だけ、深く息を吐いた。


ドアノブから手を離す。

振り返らずに、階段へ向かう。


洗濯機から洗濯物を取り出して、浴室のランドリーポールにかけていく。

感慨は、洗濯物の汚れと一緒に流せてしまったようで、淡々と干していくことができた。

最後に父の靴下をピンチで挟んで、浴室を出る。

浴室のドアを後ろ手に締める。

また一度、深く息を吐く。


浴室換気のリモコンで、換気扇を乾燥モードにして、リビングに戻った。


キッチンのシンクで、食器を洗う。

1人分の食器は、やっぱりすぐに洗い終わった。

朝から立てっぱなしの食器を仕舞わなくても、水切りかごに立てることができてしまう。

普段とは違う、がらがらの水切りかごから無理やり視線を切って、タオルで手を拭う。


カーテンの隙間から伸びる日の光はいよいよ長くなっていて、夜が近づいていることがわかった。

時刻は、PM6:30を回ったところだ。


明るいうちに、もう一度外の様子を見ておこうと思った。

冷蔵庫からお茶を取り出して、いつものカップに注ぐ。

半分だけ飲んで、残りはダイニングテーブルに置いて、リビングを出る。


靴を履いて、鍵を開けて、ドアを開ける。

玄関をくぐりぬけると、日に当たった肌が痛みを感じるくらいに、夏の西日が眩しい。


鍵を締めて、また陸橋に向けて歩いていく。

夕方になって、少し風向きが変わってきたかもしれない。

昼過ぎには南から北に向かって靡いていた黒煙が、今はほぼ真上に昇っているように見える。

夏は、日中は海から陸に向かって風が吹きやすく、夜間は陸から海に向かって風が吹きやすい。

だから、明け方と夕方には、一時的に風が凪ぐ。

確か、中学校の理科で教わった。


「きっとまだ、たくさん有るんだろうな…」

気づいていないことや、知らないことが、たくさん。


風向きのことなんて、3回目にここにきて、ようやく意識できた。

陸橋から北に目を向ける。

幸いなことに、北側の火災発生場所は、南側よりも更に遠そうでひとまず安堵する。


夕暮れ、赤く染まる空。

青空よりは黒が映えるな、なんて、そんなことを思いながら、私は、その景色を眺めていた。

次回は8/16(日)20:40頃に更新する予定です。

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