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2026年7月1日 PM5:02

今日3度目の帰宅は、無言でドアをくぐる。

"ただいま"を言わなかったのは、きっと外にいた時間が短かったからだと思った。


ドアを閉めて、鍵を締めて、靴を脱ぐ。

いつもなら、この時間にはお母さんはもう帰ってきていて、もう少しすると私が帰ってきて、お父さんは最近締切が近いとかであまり早く帰ってはこない。

お母さんが普段1人で見ていた景色は、こんな感じだったのだろうか。


リビングに入って、ダイニングテーブルに置いておいたお茶を飲む。

見上げた先にある時計は、PM5:02を指している。


やろうと決めたことが途切れると、色々なことが頭に浮かんでくる。

今起こっていること、その原因。

これから起こること、その対策。

そして、生きていくためにこなしていかなければならない、普段通りのこと。


「洗濯、しちゃおうかな。」

パッと思いついたことにとりあえず手をつけることにする。

洗濯機を回して、その間に夕食を食べて、洗濯を干して。


もっと優先してやるべきことや考えなければならないことがあるような気がするけれど、もうこれ以上、今日のことを考えるのが難しくて、普段通りのことをこなしていくことにする。


席を立って、キッチンにかけてあるタオルを回収して、脱衣所に向かう。

洗濯機に洗剤をセットする。

我が家の洗濯機はドラム式ではなくて縦型だから、この時間に洗濯をすると乾燥には浴室乾燥機を使うことになる。

今夜はお風呂に入れなくなるけれど、お昼に一度入っているからいいやと思うことにした。


それよりも、昨日までの日常の残滓を、早く洗い流してしまいたいと、思ったのかもしれない。

だって、前だけを見ていないと、昨日までの普段に囚われてしまって、身動きが取れなくなってしまいそうだったから。


蓋を閉めて、スタートボタンを押す。

水が流れ出す。

水が溜まって、洗濯槽が回りだす。

その中で、私と両親の衣類が、混ざりあって回る。


洗濯機を見つめる。

昨日までの日常が廻っている。

お父さんと、お母さんと、3人での生活が、洗い流されていく。


その光景から、目を離せなかった。

不意にまた、涙が溢れる。


「あれ、…なんで?」

こんなつもりじゃ、無かったのに。

早く終わらせて、前を向こうと、思っていたはずなのに。


昨日までの日常が洗い流されていってしまうことを悲しんでいるもう一人の私が、私をこの場に縛り付けている。

きっと、後ろを振り返っていないと、今日からの現実に圧し潰されてしまって、息ができなくなってしまいそうだったから。


泣いている私を横目に見ながら、洗濯が終わるまでに夕食を食べてしまうのは難しそうだなと、ぼんやりと考えていた。

次回は8/14(金) 20:40頃に更新する予定です。

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