始まりの依頼
消えた話で何を書いていたのかやんわり思い出したのでなんとか軌道に戻せました。
「おさらいはこれでお終い。いよいよこれからの話をしましょうか」
一応は店を閉めてまで始めたこの会議のような場であるのだから、本来は手早く進めるのが普通であるのだろうが、今回は克人という新人に説明するために随分と遠回りをした。
「今、私たちが追っているのはとある機械の行方、その供給元と供給先についてよ」
パティがまた手元のパネルを操作してスクリーンに投影された情報が切り替わる。
この街、デザイアの全容を映していたスクリーンには今は謎の四角い箱型の機械が映し出されている。
それは克人には見覚えが非常にあるものだった。
「これは...」
「ええ、あなたが納品した機械よ。この機械の扱いは、やれ薬だの、武器の横流しだのとこの街ではキリがないほどに横行する取引とは違って随分と慎重に行われているみたいでね、これを扱っている組織の名前や本拠地すら分からないって状況だったんだけど...克人が関わってくれたおかげでそれらの一部が分かったわ」
「なるほど、それは克人に感謝ですね」
「ええ、前に克人へ接触を計ったのは正解だったわね」
克人はこの機械については見覚えはあってもどういう物なのかというのは何も知らない。知らなければ、無駄に危険なことに関わらずに済むと知っていたからだ。
そうして依頼された納品だけを何も聞かずに、何にも興味を示さない様にして達成したのだ。
だが、その中で克人の行動から、何かを掴んだことで仕事が進んだと喜ぶ人間が目の前に二人いる。
もうあんな保証も安全もないヤバい仕事をするつもりは全くないが、自身の迂闊さに戦慄を覚えていた。
克人としては、最低限の接触にとどめてそれ以外の少しでも危なくなるような関係は築いていないつもりだったが、少なくともここにそんな涙ぐましい努力を嘲笑うかのように克人から関わっている組織の情報を抜き取られている。
「ていうか、なんで俺がその機械を組織に納品した前提で話が進んでるんだ?マスターにはあの時、知らないと答えて、マスターも分かったって言ってなかったか?」
「そりゃ、そもそもあのタイミングでお前に話しかけた時点で、納品というよりあの機械に関する依頼を受けたって事は掴んでいたからな。あのとき路地裏の話も話題に出したろ?最初からもう分かっていてお前に話しかけてたぞ?」
「じゃあ、なんで一回は見逃したんだ?」
「そりゃ、私達が誰でも襲うような組織じゃないからだ。さっきお嬢様が説明した通り、私達は何でもかんでも依頼を受ける訳じゃないし、誰彼構わず襲ったりもしないんだ」
「...いや、襲われたけど?」
最初から克人が妖しいと、何かしらの関係があるとして接触してきていたという事実自体は以外でもなかった。
克人自身もまた、あの時惚けた返事をしたのはやけくそではあった。
既に何もかもバレていると思って、ただ一度は否定してみようぐらいの気持ちで答えていた。
だからこそ、マスターにそのまま見逃されそうになって、裏があると警戒したのだ。
あんな適当な上っ面だけの言葉で信じてもらえるとは微塵も思っていなかった。
マスターとしてはそれでも見逃そうと思っていたようだが、実際克人は朱利に襲われている。
それだけは言葉と実際に起きたことが矛盾していた。
「あ~、それについては本当に申し訳ない。アレは完全に朱利の暴走なんだ。敵対したり、話をする前に逃げられると面倒だから、建物から逃げてきた奴は合図をしたら取り押さえろって指示していたんだが.........合図を待たずに殺しにかかったみたいでな...」
多分に呆れを滲ませた流し目を朱利に向けるマスターにつられて、克人も先ほどから静かな朱利を見る。
「.........すぅ............すぅ」
そこには座った姿勢のまま、気持ちよさそうに寝息を立てる朱利の姿があった。
いや、今は仮にも依頼についての話をしているんじゃないのかと克人は大丈夫なのか心配になる。
「あらあら、話が長くなってしまった物ね、飽きちゃったのかしら」
「はぁ、また後で説明しておきます」
「大丈夫よ、どうせ動くのはもう少し後になる予定だから......その時改めて伝えましょう」
「あまり甘やかさないで欲しいですが、分かりました」
「え、いいのか?」
仮にも裏に通じる組織で、後ろ暗い任務に関わる話なのにこんな奔放で大丈夫なのかと心配になる。
克人としては、そう言ったところが指示を無視した暴走に繋がるんじゃないかと、割と正論を考えていた。
「いや、度し難いが朱利はそれが許されるぐらいには戦闘能力が高い。こいつの裏稼業での役目は徹頭徹尾、戦闘員だ。作戦も考えない、教えられても興味がなければ特に覚えてない、正直頭を悩ませている。だが、その戦闘能力という一点だけは信頼が出来る。だから、今みたいな会議の場ではお嬢様が許しているのもあって、放置することにしているんだ」
「......そんなに強いのか?」
「それはお前が身をもって知っているだろう?」
確かに知っている。
克人は知っている。克人の体にまだ薄っすらと残る切り傷が知っている。
躊躇うことなく急所を狙い、正確で素早い動きで取りに来るその勢いは、あの時の一瞬のあいだに何度も死を覚悟させるほどの物だったと改めて思う。
ただ、同時に克人は知っている。自分が素人と比べたらいくらか戦えても、ガチ戦闘になれば大したことがないって事を。
だからこそ、克人を殺しきれなかった朱利の強さを計りかねている部分もあった。
「まぁ、一緒に依頼をこなしていれば、嫌でもその強さは知ることになるさ」
「......そうか」
マスターのいう事はその通りなのだろう。
きっと今後、朱利と一緒に依頼をこなすこともあるのかもしれない。
その時には、きっとそれを特等席で見ることが出来るだろう。
「あ、すいません。話が脱線しましたね」
「いいのよ、むしろそうやってお話しを重ねて絆を深める事の方が大事だと思うもの。さて、それで克人のおかげで分かったことなんだけれど......」
パティはそこで一度言葉を切って、さらにパネルを操作してスクリーンの情報を切り替える。
そこには、今回克人が取引をした相手だと思われる組織の名前と本拠地について書かれていた。
「次に調べるのはここになるから、覚悟しておいてね」
直近の目標は、
[中位七層:文化区]ペイラファミリー
中位層でそこそこの幅を利かせているギャングのようだ。
キャラクター紹介
<名> 朱利
<称号> 罪ある無垢
<年齢> 20
<願い> 人になりたい、人と同じになりたい
<ステータス>
STR 55(75)
CON 50
SIZ 40
DEX 75
AGI 95(125)
POW 120
<取得技能> ・なし
<起動キー>『COde:Luna開始』
<装備>
頭・長距離通信デバイス/片耳式
胴・反発式布服/タクティカルパーカー
腕・汎用補助手袋/指ぬき
腰・汎用補助布服/短パン
脚・加速式脚部装甲
<武器>
・護身用簡易剃刀『スラ―』
<アクセサリ>
・反応強化型コンタクトレンズ
<能力>
人間
<詳細>
喫茶店Lunaの看板娘。
明るくて朗らかな性格の彼女は店に来る客に一定の人気がある。
考える事を苦手だと思っており、最初から放棄しがち。
戦闘に関しては特に訓練したこともなく、
最初からある程度戦闘が出来た。
また特別目がよく、観察力に優れる一面がある。
エネルギーカラーは紅




