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感情の境界線  作者: めだまやき
第一章 交錯する声音
8/30

新たな能力者の影

生徒会長、神霜三船と接触し様々な疑念が交錯する中何者かに襲われた主人公、八倉志乃。

病室で彼女である向井実咲と襲われたことについて話していた。そんな矢先、宿敵、真柴薫が彼の病室へと尋ねる。お互いに憎悪しあう仲である二人の間の絶望的な壁。そんな中起こった出来事とは...


「助けてくれ八倉。俺の体が言うことを聞かない。今日、クラスメイトから勝手に強盗してたんだ。」【もう何が何だかわからない】


助けて。確かにそう聞こえた声に自分でも驚くほど冷たく低い声で答える

「は? 帰れよ真柴。」

呆然とした顔を真柴はしていたが俺は構わず続けた。

「お前の相手をしてやれるほど俺は元気じゃない。」

 自分で出した声に自分で驚く。が、それを無視して襲ってくる圧倒的な憎悪。真柴の言ったことの後に聞こえてくる感情はそれをさらに増幅させる。


「っちょっと志乃? どうしちゃったの?」【こわい】

 沈黙に包まれた俺の病室で実咲が声を上げる。

「……」

 今の俺はおかしい。そう自分でも思っていただけに俺は何も言えない。

 依然、真柴は俺の顔を伺い何も喋ることはできずに呆然としたままだった。

「えっと、とりあえず真柴君。悪いけど今日は帰ってもらってもいいかな。明日なら志乃も少しは落ち着いてるだろうし。ごめんね。」

 実咲が提示した真柴への助け舟。俺と真柴の両方のことを考慮しての判断だった。でも、

「そんなに悠長に待ってられない!」

 実咲の提案は真柴の強い口調によってかき消される。俺も普通じゃなければ真柴も普通じゃない。真柴はその場に膝をつき、異様な雰囲気が病室に立ちこむ。

「まぁいい。とりあえず、俺が話を聞こう。」

 沈黙を破り政希が声を上げる。

「真柴君、俺と病室の外で話さないか。別に志乃に頼るにもあいつは俺らと一緒にやろうとするだろうし、問題はないよな?」

 真柴は政希に肩を叩かれ我に返ったようで、病室から出て行った。

「ごめん。なんか俺、変だった。あいつには恨みが多いけどいつもならあんなになるまで言わないし。」

「……志乃がそう言うならいいけど」【でもさすがに今日おかしいこと起こりすぎ】

「いや~、あんな顔するんだな志乃。」【驚いたわ】

 実咲と稔の前であれだけの憎悪をさらけ出すなんて…

「じゃ、じゃあ私そろそろ帰るね。」【ちょっとやらないといけないことあるし】

 もう5月だがまだ肌寒く暗くなるのは早い。今日は実咲には心配かけっぱなしだ。

「ああ、ごめん。あとありがとな、実咲。」

「ありがとうの方だけ受け取っておくね。」【また明日】


実咲が病室から出ていき、離れたことを足音で確認してから稔の話を振る。

「ねぇ稔。気付いてる?」

「何をだよ。」【おいおいまさか】

「真柴の違和感。」

「さすがだわ。俺しか気付いてないと思ってたんだけどな。」

【少なくともあの二人は気付いてなかった】 

「いやいや、稔の眼を見てなかったら気付かなかったよ。」

 政希が肩を触った途端真柴の様子が変わった。ちょうど俺は稔の視線を観察してたから運よく気付いたのだが。

「政希が肩に触れた時のことだろ?」

「ああ。その時に真柴の意識が戻ってた。明らかにそれまでの真柴は何かにおびえていた。」

【これも実咲の言ってた新しい能力者がいるってことなのか?】

「それはまだわからないけど、少なくとも可能性はあるね。でもあんまり偏らないほうがいい。ただ無我夢中になってただけかもしれないし。」

「だな。それよりまずは真柴の強盗のことについて明日は調べてみるぜ。」【よっしゃ】

「ああ。頼む。生徒会とサトウのことはいったんやめて真柴のことについて調べてほしい。」

「そうか。じゃあ俺もそろそろ帰るぞ。」【明日が楽しみだ】

「うん、じゃぁね稔。」



病院の屋上、数分前。

「それで、どうしたんだ?」

 湯谷政希は落ち着いた口調で真柴薫に話しかける。真柴は政希に渡された缶コーヒーを一口すすり、話し始める。

「ありがとう。とても簡単に説明すると僕は放課後に教室で勉強していた時のことなんだ。僕は普段通りに4時頃に帰ろうとしていた。4時を回って教室から出た時、見たことない奴に突然手を引かれて1-Cの教室に連れていかれたんだ。そいつは全身黒いフード、たぶん演劇部にあった備品、を着てたんだ。誰だかわからなかったが声は高かったな。で、そいつと話してたら突然意識が飛んだんだ。で、気が付いた時にはR組にいて顔も知らなかった生徒に恐喝した後財布を奪ってた。その時に我に返ってすぐに返して謝ったから生活指導に行くことにはならなかったよ。」

「なるほど、だから強盗したのにこんなところまで来られたのか。」

「確かに疑問に思うよね、そこは」

政希の目を通してみて真柴が話しているときに不信に思ったところははく、真柴が本当のことを話しているように思えた。話したことが事実と決めるにはまだ足りないが説得力はある。

「もう気分は平気か?」

「大丈夫だよ。いろいろとありがとう。さっきの俺は無我夢中になりすぎておかしかった。話しかけてくれてた女の子にも誤っておいてほしい。」

そう言い残して真柴薫は帰っていった。



 稔が俺の病室から出たのとほとんど入れ替わりで政希が帰ってきた。

「ありがとう政希。俺、あの時おかしかったから助かったよ。」

「いや、俺も志乃の立場だったらああなってたと思う。まぁ、少し言い過ぎだったとも思うけどね。あ、真柴から聞いてきた話、きく?」【何気に収穫あったぜ?】

「そういわれると気持ちが軽くなるよ。うん、聞かせてほしい。」

 政希は真柴から聞いた強盗の一部始終を俺に話した。


「なるほどね。話してただけで意識が飛ぶ...か。正直もう能力者としか考えられないね。」

 意識はそう簡単に奪えるものじゃない。となると考えられるのは何かしらの能力、と。そしてその能力とは人を操れるものの可能性が高いな。

「いや、真柴が嘘をついてる可能性もあるだろ?強盗の話は俺も学校で聞いたから事実だけど、それまでの過程が事実とは限らない。」【まだ信用はできないな】

政希の言う通りだった。肩を触られたこと我に返った様子からしても俺に助けてと頼んだのは本心ではないかもしれない。

だが、それはすぐに否定する。俺が能力者だと知っているのは西条高校に真柴と実咲、稔、政希の四人だけだ。となると真柴をここに来させる理由がない。

「少なくとも真柴がここに来たのは自分での意思だと思うよ。」

俺は政希にその推測を説明する。

「なるほど。とすると明日調べるべきは真柴の周辺のことか。これまで調べてきたからある程度は分かるな。」【その時の目撃者に話を聞こう】

「なーんかストーカーみたいだね、俺ら。こうやって知らないところでその人の周辺洗ったりしてさ。今更だけど」

「それは、そうだな。まぁ、おかげで面白い事件に潜れそうだしいいんだけどな。」

【ワクワクする】

「へぇ珍しく熱くなってるね政希。楽しくなってきそう?」

「当然だ。俺はこういう展開、大好きなんだ。」【これはマジ】

「そうだね。俺も本当は動きたいところなんだけど、任せてもいいかな。」

「ああ。じゃあまた明日な。」【お大事に】

 そういい政希も俺の病室から出ていく。


 静まり返った明るすぎる病室の中で俺は頭を回し始める。

 生徒会長やサトウについて気になることもある。それでも今、最優先すべきは真柴の強盗についての情報を集め、真柴の証言が本当かを確かめること。そして真犯人である人(おそらく能力者)を洗い出すことだ。おそらく、俺を襲った人物と真柴に仕掛けたのは同一人物だろう。 そこに関係があるとすれば俺に感情を読まれ、能力者であることを恐れたのか。だが、これはさっきも考え、否定した考察...

 いや、本当にそうだろうか?別に俺の能力を知る四人がほかの人に俺のことを伝えていても何ら不思議ではない。(あの三人だったらショックだが)やはりすべてを疑わないといけない。

 まず一番に疑うべきはやはり真柴。真柴が生徒会長との対決が起こるとするならば一番に俺を排除すべきだ。とすると真柴の取り巻きに能力者がいるのか。でもそれだと真柴は裏切られたことになる。真柴は俺に比べてずっと友好関係が広い。ならば、俺の知らないうちに他の能力者を見つけていてもおかしくはない、か。

 この方向で考察を深めるとさらに手がかりが見つかる。

 さっき政希は真柴はC組に連れ込まれたといっていたな。これが事実とするならば能力者はC組の生徒?いや、放課後はどこに何組の生徒がいようと関係ないか。

 どちらにせよ、その能力者とやらは俺と真柴の両方のことを詳しく知っていそうだな。



某所、ある人物はその部屋の中で不適に笑う。

そのスマホの電源を入れロック画面に映るのは二人の人物。

「許さない。ゼッタイ許さないんだから…」

ロック画面に映るのは笑顔のその人物と、内溝なぎさ――――――。


事務連絡

先週に投稿ができなかったため、来週は水曜日と土曜日の二回投稿いたします。


お待たせして大変申し訳ありませんでした。

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