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感情の境界線  作者: めだまやき
第一章 交錯する声音
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垣間見える手がかり

生徒会長、神霜三船と接触しいくつもの疑問が交錯する中信じられる友と少しずつ会長の意図を探り始める主人公、八倉志乃。

そんな時に彼に非情な現実を与えるものが...


神霜会長が真柴に接触したその日。俺と別れてから真柴からの連絡は夜までなく、真柴が会長と話した詳細を聞くことはできなかった。おそらく真柴は俺のことなど気にも留めず会長へ挑戦するための準備を始めたのだろう。


翌日。俺は朝起きるといつものようにトースターにパンを放り込むと焼けるまでの間に頭を回す。今日すべきことは何か。高校生活をこんな風に投げ出すのは少し心苦しいがそれも自分で選んだ道。言い訳なんてできない。

今、最も気になるのは会長だ。でも、神霜会長は相当のやり手だと聞いている。四月にあった激戦の選挙も切り抜け、情報戦においてはトップクラスの強さを誇る。信頼を置ける部下と役員の個々の分析力。相当な切れ者が集まっている生徒会の長に最初から向かっていくのはやはり気が引ける。

次に気になるのはサトウ。昨日も考えたがサトウは会長と知り合いだった。しかもかなり親しげに話していたことも含めて考えるとやはり気になるところだ。真柴が驚いたことに「筋違い」と会長が言っていたこともあって、十中八九サトウは以前から会長とのかかわりがあるのだろう。

ただ、念頭に置いておかないといけないことが一つある。サトウは完全な未知数。今まで俺は全く絡んだことがないし、昨日Rクラスの前で真柴と話し、放課後も真柴と話していたことをみられている。そのことを含めると俺がサトウに接触してもサトウは取り合ってくれない可能性が高い。もし、応じてくれたとしても強い警戒をされることは避けられない。

どちらにせよ、今日はこの二人のどちらかに接触しない限りらちが明かないだろう。となると最初に接触するべきは―――

チンッ

パンが焼けたようだ。これ以上考えていると止まらなくなる。学校に着くまでにまだ考える時間はあるはずだ。



下駄箱で実咲と会い、そのまま二人で教室に向かう。その途中、俺に向く周りの視線が変わっていることに気が付く。その視線は実咲ではなく俺日釣りに向けてのものだと歩いているうちにわかり悪寒を覚え、その場で立ち眩む。その時、かすかに後頭部を誰かに触れられた。そしてすぐに俺は脳震盪のうしんとうでも起こしたように視界が揺らぎその場で倒れる。

「え、っちょっと志乃?!」【%#“%(‘)&’!】

突然隣の人が倒れれば当然驚く。実際実咲もかなり焦っているが、いつものように大丈夫。

と受け答えすることもままならない。

「と、とりあえず保健室行こっ」【$W%“(‘&#’&】

意識も朦朧とし、聞こえてくる感情は全く読み解くことができない。実咲に支えてもらうことで何とか立ち上がったが、すぐに足元はぐらつき膝をついてしまった。その時、保健室の先生だろうか。誰かが実咲に呼びかけ、俺は担架に乗せられる。安心したからだろうか俺は完全に意識を失い視界が暗転した。



――――んん...

「あっ、志乃。起きた?」【よかったぁ】

「あれ、実咲...?俺はここで何してるの?」

事態が全く呑み込めない。病院のベットで寝ているのだろうが何故かそうなったのか全く思いだすことができない。

「センセ~、八倉君起きました。」

「あら、やっと起きたのね。よかったわ。」

カーテンを挟んでそんな声が聞こえた。起き上がろうとしたときにちょうど保険の先生が入ってきた。

「駄目よ、まだ起きちゃ。あなた脳震盪を起こして倒れてたんだから。」【しかも急に】

「あ、すみません。脳震盪って急に起こるもんなんですか?」

「ふつうは起こらないわ。脳に激しい振動が起きた時によくなるものだもの。でもあなたは突然廊下で倒れたって向井さんが言ってたわよ。」【ホントにどうして急になったのかしら】

「ありがとな、実咲。ところで今、何時ですか?」

「当然だよ~。志乃が倒れたなんてただ事じゃないもん」【ホンットに心配したんだから】

「ちょうど四時半よ。倒れたのが八時過ぎだからちょうど八時間くらい寝てたのよ。当然学校はもう終わっているわ。一応検査は寝ている間に済んだけど、大事をもって明日までは入院してもらうわ。」【そうしたら週末はゆっくりできるでしょうし】

「わかり...ました。」

 そういった保険の先生はまだ仕事があるからと言って帰った。

今日は木曜日。明日まで休みとなれば今週はもう学校には行けないな。これ以上真柴たちに突っ込むのはやめろという暗示だろうか。そんなときに一つ重要なことを思い出す。

「なぁ、実咲。俺が倒れた時に近くにだれかいなかったか?」

「ん~、誰もいなかったと思うよ。どうして?」【だって突然倒れたんだもん】

「俺が倒れる前にだれかに後頭部を触られたんだ。それからすぐに視界が安定しなくなって斃れたんだけどさ。どうだった?」

確かに触られた感触がいまだに後頭部に残っている。思い出すとまだゾッととする。

「え、それヤバくない?...でも触ったくらいじゃそんなに大きい振動は起こらないよね。」

【でもその人が原因としか考えられないよね】

「そうなんだよ。その人が何かしたのは確実だとして誰だかわからないと話にならないよね。」

「あっ、まって。絞ることくらいはできるんじゃない?」【いいこと考えてたんだ!】

「絞る?」

「うん。志乃が倒れたのはちょうど四階の東階段の踊り場だったよ。朝にあの階段を使うのって私たち1-AからCまでの生徒じゃないかな。DからFの生徒は普通、四階の西階段使うからっさ。」【どうかなどうかな???】

「なるほど!千人近くいる生徒の中からそれに絞れるのは大きいな。でも先生も疑わないとだよ。あんまり考えたくないけど。」

こうゆうときはすべてを疑う。これまでの経験からそう考えるのが鉄則だと思った。

「それならだいじょうぶっ。先生はHR始まるまでマジで上がってこないから。」【完璧でしょ?】

実咲は言いながらとても楽しそうだ。これだけ考えてくれていたのは素直にうれしい。そんなとき実咲の携帯から着信音が鳴る。

「もしもし。え、今から?うん...うん。わかった。」

「今から政希と稔が来るってさ。まぁ、政希は部活だからしょうがないけど稔はないのに何やってたんだろ。」【なんか最近特に抜けてるよね】

「二人とも来てくれるんだ~。うれしいなぁ。」

「ちょっと。そのかわいい志乃メッチャ好き。」【普段もだけど】

くすくすと笑いながらそう言われるとこっちが恥ずかしくなってくる。

「え?そんなにだった?」

「うんっ」【ホント好き】

「あはは。こうゆうとき感情って読みたくないね。」

「あっ、ちょ、読まないでね??」【何言ってんだろ私】

「もう遅いかも」

「え~。だよねぇ。」【いいんだけどっ】

「稔、なんでそんなとこに隠れてんの?ほら」

「っおい。お前クール通り越してもはや鈍感じゃねーか」

「ちょ、うそでしょ?盗み聞きなんてたち悪いよ、稔。」、「鈍感だったか?俺。」

「二人同時にしゃべるなぁ!」

「あはは、大変だね稔。二人とも来てくれてありがと。」

「お、おう。ほんとに驚いたぜ、志乃が急に倒れるなんて。」【遅くなって悪いな】

「ごめんね、志乃。俺ライブ近いから練習休めなくって。」【もっと早く来たかったんだけど】

「いやいや、気にしないで政希。俺が倒れたのが悪いんだから。」

「いやでも...」【それでも】

「それより、俺の脳震盪は不自然なんだ。」

「おい政希、志乃がそういったらもう折れねーって。それで、不自然ってどうゆうことだ?」

【不自然?】

稔の声は言いながら震え、顔は紅潮している。きっと誰よりも先に不自然の意味を理解したのだろう。

「うん。実は...」

さっきまで実咲と話していたことを二人に話す。

「つまり、その誰かのせいで志乃は脳震盪を起こしたってことか?」

「うん。間違いないよ。」

「でもそんな小さな力で脳震盪は起こらないんじゃないか?」【さすがに無理がある】

「そうなんだよね。でも実際に起きてるわけだし正直まだ説明しきれないことがいっぱいある。」

正直俺も倒れただけあってその時の記憶がはっきりしていない。それに明日も学校を休むとなると来週になるまで真柴を追いかけることができない。

「あ、言い忘れてたんだけどさ。今日サトウと話してきたぜ。」【なんもできなかったけど】

「えっ、ほんと?今日ちょうどサトウと話そうと思ってたんだよね。」

ただ、昨日サトウが会長と一緒にいたことだけしか二人は知らないはず。俺の知りたいサトウと生徒会の情報についてはあまり期待しないほうがいい。とはいえ、サトウ本人の情報はいくらあっても困らないため素直にありがたい。

「ああ。サトウと神霜会長が一緒に生徒会室にいたから志乃の名前使って話を聞いてきたんだ。

昨日はほとんど真柴のことしか話してなかったけど電話で聞いてた内容からいくつか気になることがあったからな。」【サトウが生徒会なのかとか】

「ほんと・すごい助かる。俺もそれとかについて聞こうと思ってたんだよね。」



稔と政希はまず、俺が倒れたことを知った後、昼休みに俺の代理で昨日のことについて聞きたいことがある、と訪ねたらしい。二人の目を何度か見た後神霜会長はサトウに席をいったん外すように促し、話を聞いたという。まず、なぜ突然真柴の前に現れたのかということ。

 会長によるとサトウから一昨日真柴の周りでいじめられている生徒のことを聞きクラスの中心人物である真柴についてクラスの現状を聞きに行った。というのが会長の回答だったらしい。

 正直、これについては建前だろう。その話ならば俺に長時間席をはずせとは言わないはずだ。

 次に聞いたのはサトウのことについて。

 この時会長は本人から話を聞いたほうがいいとサトウを生徒会室に戻した。サトウにそれを聞いたところ彼はそれを認めた。

 サトウは生徒会役員、会計監査。会計監査の仕事は会計への仕事の指示、生徒会予算の支出計画立て、会長への報告、とのことだった。また、会計監査は会長が任命しても公表はされないらしい。

 あるかどうかも一般生徒にはわからない胡散臭い役職。だが、わざわざ本人に話をさせた以上本当だと信じさせるためだろう。


二人から聞いた話はそういったものだった。

「本当に二人ともありがとう。おかげでなかなか助かったよ。明日も学校には行けないらしいからさ。やっぱり生徒会はこの一見を使って真柴をつぶそうとしているのかもね。どちらにせよ、俺たちは傍観者に過ぎない。真柴が暴走するなら止めるつもりだったけど生徒会が介入してくるなら俺たちは何もしないほうがいいと思う。でも念のため、生徒会については調べてもらえないかな。」

「ああ。」【もちろんだ】

「ハナからそのつもりだぜ?」【ちょっと寂しくはあるけどな】

「…」

いつもは真っ先に反応する実咲が何やら真剣に考えこんでいる。

「どうした?実咲。」

「あ、あのさ。すっごい自然に考えてみたらさ、能力を持った人って志乃しかいないのかな。だって後頭部に触れただけで脳震盪起こさせるって...」【なんで今まで気づかなかったんだろ】

「…」

それを聞いた俺たちは四人そろって黙り込んでしまう。


その時だった。病室の扉が騒々しく開いたのは。



「助けてくれ八倉。俺の体が言うことを聞かない。今日、クラスメイトから勝手に強盗してたんだ。」【もう何が何だかわからない】



「は?帰れよ。」

とっさに口に出た。驚くほど冷たい、低い声。

「お前の相手をしていられるほど俺は元気じゃない、真柴。」


来週は諸事情により誠に勝手ながら休載させていただきます。大変申し訳ございません。

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