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感情の境界線  作者: めだまやき
終章 あなたの声音を聞かせて
26/30

探る両者

主人公八倉志乃が取れる最後の方法は江藤沙耶の自供。


ただし自供させるには信用できる情報と、その証拠が必要不可欠である。仲間の向井実咲の人脈を使って直接本人に探りを入れて活動開始!


いよいよクライマックス。犯人が分かったからといって読むのを止めないでくださいね(笑)


 江藤沙耶が共有コントロールの能力者であり一連の事件を起こした張本人である。そう確信した俺たちは江藤沙耶を自供させる情報を集めるべく、行動を開始した。

 あの夜、実咲は時間的に少し遅くであるにも関わらず江藤沙耶に電話をかけ、翌日に女子で集まって遊びに行く予定を取り決めた。実咲によれば、江藤とこれまで二人きりで出かけたことはなく、単独では疑われる危険性が増すため、あえて集団の中から探るということにしたらしい。

 残念ながら、俺たちはこれに協力することができない。彼氏のことで相談がある、という名目上、俺がそこに参戦したら事態は混乱を招くだけだろう。とはいえ、その間にずっと暇を持て余しているわけにもいかない。つまり、俺たちは振出しに戻り、江藤沙耶についての情報を集めることになった。



 木曜日の朝。

 学校が臨時休校に入ってから一日目。私、江藤沙耶は学校が休みにもかかわらず、いつもと同じ時間に起床した。昨日の遅くにクラスメイトの向井実咲から今日遊ばない? との誘いを受けたからだ。実咲とは普段からよく話すし、別に仲が悪いわけでもない。私は別に断る理由もないためすんなりと了承した。

 起床してまず一番に目に入るのはアラームを切るために取ったスマホだ。アラームを切ると自然とロック画面が映し出される。そこに移るのは二人の少女。カメラに向かってピースサインを突き出し、満面の笑みを浮かべている。これは確か、抽選で当たった高級ホテルのケーキバイキングに行った時の写真だったはずだ。中二の時に撮影したものだから画質からもかなり古いものであることが伺える。だけど私の隣に移る彼女、内溝なぎさの笑顔を見ると思わず真柴薫、遅れて八倉志乃への憎悪と怒りの念が沸き起こる。

「っ……」

 いけない。今日は実咲たちとの集まりがあるのだ。親しくしているクラスメイトにこんな顔を見せるわけにはいかない。

 私はベッドから起き上がり、一階にある洗面所へと向かう。

「おはよう、沙耶」

 リビングに入るとパパとママが私にそう言った。

「おはよ」

 最近は学校があんなことになったこともあって良心は私に気を使ってくれている。でも……


 それを引き起こしたのが私なんて口が裂けても言えないよね。


 洗面台で顔を洗い、鏡を見た。うん、いつもの私。これでさっきの顔になることはないかな。スイッチを切り替え、もう一度自分の部屋に着替えに戻ったときにスマホに通知が届く。

 いつも使っているチャットアプリだ。相手は実咲? と思ってスマホを開くとその予想ははずれていた。

「学校が休校になったけど、八倉志乃はどうするつもり?」

 相手は神霜三船。さっきスイッチを切り替えたばかりなのに間が悪い。彼のチャットを一時的に非表示にして置き、出かけている間に通知が届かないように設定した。

 ただ、ここで一つ疑念が生じてしまった。向井実咲が今日私を遊びに誘ったのには何か理由があるのではないか、ということ。実咲は学校でもいろいろなグループに入っていけるから別に私のことを誘うのもさほどおかしなことじゃない。けど実咲は八倉志乃ともつながりがある。噂ではあの二人はすでにできているとの話だけど、それ以上に八倉志乃のグループは真柴のことを前から調査していた。となれば今日のこの遊びも実咲は私に探りを入れてくるのではないか……問う疑念が私の頭をよぎる。

「考えすぎかな?」

 実咲は確かに人の輪ならどこへでも入っていけるけど、参謀という能力値に関しては期待できそうにない。それに、もしもの時は私の共有コントロールで忘れさせればいい。


 着替えて、いつもはしない化粧を少しした私はママに実咲たちと出かけてくるという旨を伝えると待ち合わせ場所である駅前のカフェに向かった。

 カフェに着くと実咲といつもメンバーがそろっていた。

「ごめん、遅れちゃった?」

 どうやら私が最後についたみたいだ。

「ううん、私も遅れちゃったから」

 そのままカフェで待っていたのころ二人を呼び、私たちは平日の昼間っからショッピング、ご飯、カラオケなどなど、一日中遊びつくした。そして最後に少しお茶をしようとショッピングモールに入っているファミレスに入った。

「ねぇねぇ、そういえば実咲ってさ八倉君とは結局どうなの?」

 と、一人が実咲にそう話を振った。

「え~なんのことかな~」

 明らかにごまかそうとしているが私も八倉志乃の話ならちょうど聞きたかったところだ。八倉志乃が、感情感知マインドサーチの能力を持っていることは前に神霜からきいていたが、普段から近くにいるならば、ましてやもしかしたら付き合っている人物からならその能力のことを知っているのかもしれない。この時間を利用してさりげなく探りを入れよう。

「それメッチャ気になってたやつ!」

 私もつられてテンションを上げる。

「も~沙耶までそんな~」

「あはは、もう言っちゃいなって。楽になるよ、楽に」

「なにそれー、なんか怖いんだけど~」

 とかまあワイワイしてれば実咲も探りを入れられてることになんて気付かないでしょ? とまあそんなことを考えれる間に実咲はついに告白する体制に入った。

「じ、実はね志乃とはちょっと前から付き合い始めたんだ」

 恥ずかしそうに言う実咲はちょっとかわいいけど、今はその気持ちを封じ込めよう。

「キャー、やっぱり? いつからいつから?」

「早速名前呼びなんだぁ。羨ましぃ。それできっかけは何だったの?」

 ほかの二人は興奮して実咲を質問攻めに指定す。

「やっぱりー。実咲、おめでと」

「うんん、ありがと沙耶。沙耶はなんか落ち着いてるね」

 怪しかったかな? 今の反応はどうとらえたらいいんだろう。こうゆう時の感情感知マインドサーチってマジで強くね? とか考える自分が憎い。あの八倉志乃の能力なんぞ羨ましがるなんてあってはならない。朝にスイッチを切り替えたつもりなのに目の前に実咲がいるとどうしても警戒してしまう。

「それでさ、みんなにちょっと相談があるんだよね」

「え、相談? もしかしてさっそく彼氏のこととかぁ???」

 私もこの空気に入っていかないとあっという間に話が見えなくなる。探りを入れるんだから置いて行かれるなんてダメだよね。

「そうだよ……///」

 赤くなりながら答えた実咲はやっぱり可愛い。

「あのね、志乃ってすごいいい彼氏なんだけど、なんか思ってることを見透かされてるような感じがするんだよね。そのおかげで私が言う前に何でもやっててくれたりするんだけどちょっと怖いっていうか……」

 いや、まあ当然だろう。感情感知マインドサーチの持ち主なんだから。彼女にくらい教えてあげても不思議じゃないけど、八倉志乃は教えてないみたいだ。

「え~でもそれってめっちゃいい彼氏じゃない?」

「うんうん、だって気持ちを分かってくれるってことでしょ?」

 知らない人からしたらその通りだ。それに今は色恋話の空気のまんまだし疑問に思うはずもない。

「そうだよ実咲。八倉君に大事にされてる証拠じゃん」

「ん~そうだけど。でもやっぱりそれが何回もってちょっと不気味かも……」

「まあ実咲の勘違いってこともあるだろうし、今度本人に直接聞いてみたらどうかな。もし原因が分かったら私にも教えてよ」

 八倉志乃が実咲に感情感知マインドサーチのことを教えるかどうかは分からないがこれで少なくとも能力の情報がさらに深堀出来る。彼女なら少し詳しく説明してもおかしくないはず。続いて私はこう付け加える。

「もしかしたら八倉君には何か秘密があるのかもね」

 そこまで言ってはっとした。もし、実咲が私に探りを入れていたとしたら失言だ。でも、私は八倉志乃に気付かれるような行動は……

 自分の行動を振り返り疑われるようなボロを出していないのか確認する。

 

 大丈夫だよね……

「沙耶?  どうかしたの?」

「あっ、ううん。何でもないよ」

「そっか。なんか黙り込んでたからさぁ」

 やってしまった。と思って実咲の顔を見るがまったく疑っている表情ではない。友達を心配している目だ。あるいはそう信じたかった。

「あ、そういえばなんだけどさ。真柴君ってまだ目覚めてないんでしょ?」

「そういえば! てゆかさ、ホント信じられないよね。真柴君をボコボコにするなんてさ」

 と、八倉志乃の話がようやく終わったと思ったら今度は真柴薫の話に転換した。一息つく暇すらない。

「あれはやりすぎだよね~。まあ真柴君はすこーし俺様感あるからそれが気に入らない人がいたんだろうね~」

「え、沙耶ちゃんあれはやりすぎって直接見たの?」

「あ、いや、噂でだよ噂。真柴君の状態があまりにもひどかったって友達から聞いたんだよね」

「そっか~。でもその子も驚いただろうね。あの真柴君が目の前に倒れてたらさ~」

 ふぅ。危なかった。そう思って実咲の方を見る。

 ん?

 実咲の方を向いて目に入ってきたのはテーブルに置いてあるスマートフォン。もしかしてこの会話、録音されてる? 

 そんなことを瞬時に思いつき、もう一度実咲の顔を見る。実咲は特に私を疑っているようなそぶりを見せていない。

 ただ、次の瞬間実咲はテーブルに置いてあるスマホをとりあげ、こっちを見ながら画面を操作し、電話をかけ始めた――――――


【事務連絡】

随時加筆、修正を行っておりますのでご了承ください。


連載日は毎週土曜日と奇数週の水曜日です。


※お知らせ

 身勝手ながら来週、再来週の連載は土曜日、水曜日共に休載にさせていただきます。申し訳ございません。

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