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感情の境界線  作者: めだまやき
第三章 共鳴か孤独か
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未来への選択

学校への投稿が禁止され、真柴薫は目覚めない。友達へ連絡し、調査を頼むと迷惑をかけるだろう。完全に行き詰っていた主人公、八倉志乃。


そんな日の夕方に彼のもとに一本の電話がかかってくる。相手は西条高校生徒会長、神霜三船。彼が語るこれまでのコトとこれからのコト。


いよいよクライマックスへ!


 火曜日の夕方。陽太とメッセージのやり取りをしていた最中に会長から電話がかかってきた。 「はいもしもし」

「やぁ八倉君。今、時間はあるかい?」

 会長はいつものゆったりとした自分のペースに巻き込むような口調で話し始めた。

「ええ、もう夕方のこの時間ですし時間はたっぷりありますよ」

「それはよかった。学校では君はまだ目覚めてないことになっているからね」

 その情報はどこから知りえたのだろうか。少し気にならなくもないが、生徒会長にまでなった人物がそんな情報を得ることなど容易いことなのだろう。

「そうなっているんでしたね。まぁ半分嘘で半分本当ですから」

「嘘には真実を少し含めて伝えるってやつだね。まあそれは置いといてそろそろ本題に入ろうか」

 さて、ここで会長はどう出るのか。場合によっては俺はこれで会長を味方に引き入れることも、逆に敵に回すこともできてしまう。慎重にこたえよう。

「率直に言おう。先の真柴薫の転落事件の犯人は誰だと思っている?」

 先ほどとは打って変わり、会長の声は冷淡で深淵を見据えたような声をしていた。声から今の会長の表情が手にとるように分かる。

「会長は真柴の転落に関して事件性があるとみているんですね」

「ああ。その根拠は? とでも言いたそうな声だな。確かに根拠はある、が君に教える気はない」

 そう簡単にはいかないか。俺の中では探りを入れたつもりでも会長にとっては見え見えだったようだ。

「まぁ君がそう言う気持ちはよくわかるが僕にもいろいろあってね。それで、君は誰だと思ってるんだ? ずっと真柴薫について調べ上げてきたんだ。それなりに情報はそろっていると見たんだが、僕の見当違いだったかな」

 探りを見透かされた後に繰り出される挑発的な口調。これをどう対処しようと考える暇もなく俺の口から今までの成果である情報が出ていきそうになった。それを何とか理性で食い止め、再び深呼吸をする。

「危なかったですよ。その挑発に危うく乗るところでした。」

 会長にも電話越しに俺の深呼吸の音が伝わったのだろう。会長の微笑の声がこちらに聞こえてくる。やはり電話越しで会長と話すには俺にはまだ荷が重い。

「そうですね。具体的にまだ誰と決まっているわけじゃありませんが犯人は一年A組にいると思っています」

「なるほど…」

 なるほど、か。会長のこの言葉はどうとらえるのが正しいだろうか。まず考えられるのはすでに知っていた情報だったということ。さらには予想していた情報だということ…

「会長は俺に何を望むんです? 協力関係ですか、それとも会長としての立場からの質問ですか」

「ははは、まあそんなにピリピリしないでくれよ。そうだね、じゃあその質問に答えよう。僕が君に求めるのは君の生徒会入りだ」

「はあ?」

 予想していた解答と全く違う方向で答えられ、俺はもろに動揺が表に出てしまった。

「言葉の通りだよ。じゃあ信用を得るためにもう一つ教えよう。僕は君の折っている人物、確か共有コントロールの能力者だったか、の正体を知っている。」

 会長の情報収集の早さが尋常でないことは知っていたが、俺の中にある情報よりもはるかに先に進んでいる。それが俺を混乱させ、理解するまでに時間がかかった。

「ちょっと待ってください。会長がその人物を知っていることはいったん置いておくとして、なんで共有コントロールの能力のことを知っているんで…」

 そう言いかけた時、俺の中に一つの可能性が浮かび、口が止まる。

「……」

 受話器の向こうにいる会長は何も喋らない。俺が何かに気付いたことに気付いたのだろう。

 電話は静かな沈黙に沈み、俺は思考の海に飲み込まれていく。


――――そして導かれる一つの可能性。



「会長は能力者なんですか…?」

 先の推理から仮に能力者だとしても会長の身長から共有コントロール出ないことは保証される、はずだ。

「……」

「会長、これには答えてください! 会長は共有コントロールのことを知っていた。でもそれはなぜ? 普通、しかもこれまでにこんなことをしてきた能力者は他人、それが会長であっても能力のことは話さない。だが話す相手が能力者であれば話は違う。となれば会長、あなたは能力者なんでしょう?」

この結論にたどり着いた時、これまでに一連の出来事で拭いきれなかった会長の影をはっきりととらえた気がした。俺は電話越しにもかかわらず、顔を紅潮させ、声も荒くなりながら会長にもう一度訪ねる。

「どうなんですか会長、いや、神霜三船先輩!」

「…まあ落ち着けよ、八倉志乃」

 お互いが熱くなるはずのこの時でも会長は冷静だ。

「神霜先輩、それはできませんね。これまでのあなたの影の正体がようやくわかった気がしたんですから」

「へぇ、そんなに僕の影はちらついてただ。まあ実際に見てはいないけど、ある程度は僕の部下が探っていたからね。さて、電話越しじゃあらちが明かない。こうゆうことは直接会って話した方がいいかもしれないね」

 そうだ。今すぐにでも神霜三船に会って直接話がしたい。そうでなければ今夜寝られないことは確実だ。

「八倉志乃、今から会えるかい?」

「もちろんです。」

「じゃあいったんこの通話は終いだ。今から君に場所を送るからそこに来てくれ」

「わかりました。すぐに行きます。」



 神霜先輩に呼び出された住所に行くとそこは見るからに柄が悪そうな輩が集うクラブだった。もう夕方も終わり夜の気配が近くなっているこの町に合わせクラブは始まったばかりのようだった。神霜先輩には個々の入口で待つよう言われていた。

「しっかし神霜先輩、こんなところに呼び出して何のつもりだ?」

 そんな独り言を呟いていると神霜先輩は中から出てきて俺の肩を叩いた。

「やあ八倉志乃。大丈夫、ここで間違ってないよ」【さすがに驚くよね】

「そ、そうですか? 少なくともここ以外にも話すに適切な場所はあると思いますが…」

「あ、ここからはタメ語でいいよ。僕たちはもう対等な立場だから」【そう、君は気付いた者なんだから】

 言っている意味がイマイチ理解できなかったが俺は神霜の言う通りにした。

「それで、なんでここが適切な場所なんだ?」

 ただ、三年の神霜にいきなりタメ語といわれても違和感が半端じゃない。

「あっはは。すっごい違和感。まぁいいや、とりあえず俺についてきて」【お楽しみはこれからだよ】

 そういいながら会長は俺の手を引きクラブの中へ入っていった。

 クラブの中は音楽が爆音で流れ、大勢の人が踊り狂っていた。奥にはバーのような場所が見えたが、音楽に合わせて光る何本ものライトが俺の視界を遮ってよくは見えなかった。

 そんな中、神霜は俺の手を引きながらどんどん奥へと進んでいく。

「そろそろいいかな」【巻けたよね】

 そうつぶやいた直後神霜は俺の手を引いて走りだし、店員であろう人に話しかけるとさらにその奥にある通路へと進んだ。

 その先には個室のような部屋があった。一応テレビとカラオケが置いてあるようだった。

「さ、話を始めよう」【ここからは君次第だ】

 さっきまでとは全く違う、電話越しにも感じた神霜の豹変ぶりを目にした俺は少し、気後れした。

「おいおい、この程度でビビるなよ? ここから先は君次第だ」【君はどの道を選ぶのか】

 俺の顔を見て第一声がこうだ。なかなか相手にするにはしんどいな。だけど、俺も切り替えないといけない。

「最初に聞いておきたい。神霜、お前は能力者なのか?」

「そうだ」【間違っていない】

 感情が制御されている。ということはつまり、俺の、いや俺が能力者であることに加え、俺の能力が感情を読みことだと知っているのか。つまりこの時点で俺のアドバンテージはなくなった。そして神霜は俺の目をジッと見つめ口を開く。

「僕は君が能力者であることもそれがなんであるかも知っている。でもそれじゃこの場がフェアじゃない。君にはヒントを上げるから僕の能力を当ててみろ」【まずはそこからだ】

 俺はこれに首を縦に振り応える。話すのは最低限にして、集中する。

「君は中学の時、真柴薫の内溝なぎさへの告白の手伝いをした」【つまり、そうゆうこと】

 なぜそれを、しかもそこまで詳細に、知っているのか。それを考えれば能力にたどり着くってことか。

 よく、よく考えろ――――――











「神霜、お前は…過去を読める、のか」

「へぇ、やるね」【あれだけでたどり着くと思わなかったよ】

「その発動条件は相手を見ること。お前と話すときは尋常じゃない回数目が合う。そのあとに決まって俺たちしか知らないことを知っている。いくらお前の部下がリアルタイムで俺たちを監視していようが瞬時に伝えるのは不可能。真柴に最初に接触した時に俺に向けた感情はそうゆうこととしか考えられない」

過去解析オブザーバー、それが僕の能力だ。あれだけの情報でよくわかったな」

 神霜は能力者、そして過去解析オブザーバーか。発動条件は明かさなかったものの、大方さっきの俺の回答で間違いないだろう。

「さて、さっきここに来た理由が疑問だったと思うけどそれは君の監視、即ち警察を巻くためさ」

 なるほど。確かに俺は保護観察下にあったな。そんなやつらの前で能力者が二人話していたら不信に思うにきまってる。

「で、話の続きだ。残念だが俺は君には協力できない。僕は共有コントロールと協力関係にあるんだ。だが、彼女の計画に賛同するつもりもない。最終的には彼女は俺の方で処理する。」【まあその理由は君にあるんだけどね】

「それに彼女に僕の能力のことまでは教えてないしな。よって、君にもう一つ情報をあげよう」【これを生かすも殺すもはたまた君次第】

 電話で考えたことは半分外れってことか。にしても神霜は共有コントロールと協力関係にある理由は俺にある? 言っている意味を完全には理解できないながら俺は神霜の言葉を忘れることはなさそうだ。

共有コントロールが考えている次の計画は君、つまり八倉志乃の社会的抹殺――――」【僕に話せるのはここまでだ】


【事務連絡】

随時加筆、修正を行っておりますのでご了承ください。


連載日は毎週土曜日と奇数週の水曜日です。


これからも感情の境界線をよろしくお願いします!

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