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感情の境界線  作者: めだまやき
第三章 共鳴か孤独か
19/30

長い長い月曜の終わり

真柴が襲われ、自分には疑いがかかるという最悪の事態からつかの間脱した主人公、八倉志乃。

焼き肉店での会話の最中、久しく登場していなかった生徒会長、神霜三船の行動に疑問を浮かべる。


感情の境界線⑲


 警察からの尋問を終え、焼き肉店での俺たちの話はいまだ続く。

「神霜会長に協力を懇願するって言ってもなんでこの件に会長が関わってくるんだよ。」【今までその陰すらなかったぜ?】

「会長は知っての通り校内に危険分子がいたらその対象に容赦はしない。真柴は会長の立場を脅かす力を持ってると思わないか? だから会長は前に真柴に接触してきてたんだ。そして今の犯人、つまり真柴の元協力者は間違いなく危険分子なはずだ。なのにいまだに会長が動いてない。」

「でも、なんで会長が動いてないって分かるんだよ」【会長の動きを把握してるわけじゃないんだろ?】

 当然、俺は会長の動きを観察できるほどの人材も観察眼も持ち合わせてはいないがこれだけは分かる。

「確かに俺は会長の動きを監視してるわけじゃないけど少なくともこの件をあらかじめ調査してる俺に情報提供の協力要請が来ないのはおかしくないか? 会長本人じゃなくとも誰か聞きに来るはずだ。だけどまだ俺のもとにそういった人は来てない。」

 真相は会長に聞きにいかなければわからないが、前に借りがある以上、俺が直接聞きに行っても教えてくれる確率は著しく低い。ならばこの二人を使う、という形になってはしまうが、その方がより確実に会長から情報を聞き出せる。もし、会長がいま真柴の協力者について調べている最中ならば二人の聞いたことと問題は一致し情報を話さざるを得ない状況を作り出すことができる。

「それでさ、八倉君。私たちはできることなら明日にでも会長に聞きに行くけどさ、何を聞けばいいのか具体的に説明してくれない? 君の目的は別なんだろうけどそれは聞かないからさ。」【会長は予想外だったけど私たちにできることをしよう】

 東京の学校に進学するにあたり、真柴の対策のために探り合いや言語、表情の制御はかなり訓練した(実際には知識を身に着けた)が山崎には通用しなかったらしい。所詮は付け焼刃か。

「え、別の目的? なぁ志乃、お前俺たちに協力してくれるんだよな…」【信用してもいいんだよな?】

 陽太が不安げにそういったが、そのあとすぐに山崎が口を開く。

「如月、私たちは協力してもらってる立場なんだからそんなこと言えないんだよ。私たちが使われる立場であっても最終的にそれがメリットになるならここは彼を信じるしかないでしょ?」

 やはり山崎は人を説得するという点では突出した面があるな。そう感心しながらも俺は二人に具体的な内容を伝える。

「悪いな、陽太。具体的にというか注意点なんだけどさ、川岸の件に関しては正直に言ってもらって構わない。ただ、俺たちのことを聞かれても詳しい話は聞いてないってことにしておいてほしい。」

「つまり会長は俺たちが志乃と協力してることはもう知ってるってことになるのか?」【どうやって…】

「ああ、おそらく知ってるだろうな。前に俺が入院してるときに会長が見舞いに来てくれたんだ。その時には俺たちと真柴しか知らない情報をもう握ってたんだよな。」

 会長が俺の入院中に見舞いに来たことは政希たちにも伝えていなかったのでこれまで口を閉ざしていた稔が驚きを隠せないでいる。

「マジか、それは初耳だな。俺たちしか知らなかったことって何だったんだ?」【バケモンかよあの会長は】

「いや、俺が真柴の強盗のことを知ってるってことだ。あの時点でなんで会長が真柴があの病院の俺に会いに来たことを知ってるのか全く理解できなかった。」

「いやでも、R組にはサトウがいるだろうからサトウから真柴の動きを聞いたんじゃないか?」【サトウも気になるな】

 と政希が言うと、稔が返す。

「いや、真柴が強盗した時刻は四時頃だ。サトウが本当に生徒会だとするなら四時は仕事も真っ最中だぞ?」【まあ可能性はいくらでもある気がするけど…】

 抜け道はいくらでもあるが、会長の顔には確信が浮かんでいたことをよく覚えている。会長は人から聞いた情報だけであそこまで確信に迫ったような顔をとるとは考えづらい…

「いくらか抜け道は考えられるとしても俺が見た会長の顔は確信していた顔だった。さすがに人から聞いた情報だけだとしたらあんな顔はできない気がするんだよな。」

 と、少し話は脱線してしまったところで陽太が一度話題を戻す。

「やっぱ会長半端ないな。なんでそんなことまで知ってんだよ。」【演技とかできそ―にないわ】

「そりゃ俺にもわかんねぇな。」

 稔と陽太の間で妙な親近感が形成されつつあるがそれを見た実咲は小さく笑った。

「え、なんで実咲は笑ってんだよ。」【なんで?】

「あはは、口はうまくても気持ちを汲み取るのは下手なんだな。」

「そりゃ志乃にかなうわけねーだろ、そんなチー…」

そこまで言った稔の口に政希はすかさず肉を突っ込む。

「ふぐっ?!」【あ、やべ…】

 さすがにやる過ぎなきもするが取り合えず助かった。あのままだったら能力のことをぺらぺらと話し始めそうだったからな。

「えっと、湯谷君だっけ? どうしたのそんなに突然。」

 今の今まで話していた人の口に肉を突っ込むなんてふつうはやらない。山崎が不信に思うのもまあ、当然だろう。

「あ、いや、そろそろラストオーダーの時間だなって思ってさ。もったいないじゃん?」【不自然だな】

 さすがにその言い訳には無理があると思うが…

 それはさておき俺は一度店の外を見た。外はさっき見た綺麗な夕焼けから薄暗い紺へと変色していた。山崎は政希の返答に少なからず疑問を抱いていたようだが陽太は俺と同じく外の様子を確認していた。

「やっべ、けっこ―暗いじゃん。まだ今日月曜なのにゆっくりしすぎたかもな。志乃、取り合えず明日やることは分かった。会長に川岸の件で相談って名目で話を聞きに行けばいいんだな。」【まかせろって】

「如月、八倉君たちのことは聞かれても詳細は知らないって答えるのも忘れちゃダメ。」【だよね】

 そういいながら山崎が俺の方を向く。

「うん、よろしくね二人とも。」


 そうして少し強引な形ではあるがこの長い長い月曜日は無事終わりを迎えた。


 家に戻り、俺は着替えながら携帯でニュース動画を流す。いつも通り今日も強盗やら放火やらのニュースが次々と出てくるのを聞き流しながら俺は着替えを終え、風呂の準備をする。

――――ピロリロピロリロ~

 そんなときに俺の携帯から着信音が鳴った。

「はい、もしもし」

「もしもし、八倉君ですか? 私、西条高校の葉山と申します…」

 葉山、と名乗った女性の声はうちのクラスの担任だ。

「はい、八倉ですが。葉山先生どうなさったんですか?」

 大方先の事件のことだろうとカンタンに予想はできるものの事件のうちの何についてだろうか。

「あ、八倉君。今日は災難だったね。警察の方から聞いたの、今日はひとまず釈放だって。」

「いえ、お気遣いありがとうございます。そうですね、目が覚めたら手錠があったので驚きましたけど」

 このタイミングで警察から聞いたことを連絡してきたとなるとやはりさっきの俺のことを監視していた刑事がそのことを連絡したのだろうか。

「さすがに血まみれになってる生徒の一番近くにいた生徒も血まみれだとね。そう、それで連絡なんだけど、さっき緊急の職員会議で決まったわ。君は表向き目を覚ましていない状態だってことにするらしいの。警察の方からも釈放はしたが未だ判断しかねるって言われてねぇ、さすがに私たちも断れなくて…」

 なるほど、実質登校禁止というわけか。このタイミングでということに関して多少なり不満もあるがまあ仕方ない。あれだけのことがあって翌日に何もなかったように登校する方が難しい。

「わかりました。当分俺は登校できないんですね。」

「ええ、残念だけどそういうことになるわ。でもさ八倉君、あれは君じゃないでしょ?」

「はい。それは断言します。」

「だよね。君みたいな生徒があんなことするわけない。」

「ずいぶん俺のことを買ってくれるんですね。」

「そりゃあ担任として当然でしょう?」

「すみません、冗談です。」

「あ~、大人はからかうもんじゃないよ? 明日の朝にはもう一度警察の方から連絡がいくらしいからその時はそれに従ってね? 山下君と湯谷君、あと向井さんには私の方からこの後連絡するから。」

「わかりました。ありがとうございます。あ、あとB組の山崎と如月にもそのことをお願いできますか?」

「あら、B組のあの二人も君の調査に加わったの? わかったわ、伝えておく。じゃあ失礼します。」

「ありがとうございました。」

 通話を終え俺はふぅ、と小さくため息をついた。今日の疲れが、いや最近の疲れが一気にあふれたように俺の体はだるさに襲われる。

 やべ、風呂入んないとな…


【事務連絡】

 随時加筆、修正を行っておりますのでご了承ください。

 また、最近は一話から登場人物の描写を少し詳細に描いておりますので気になる方は見ていただけると幸いです。(現在は2話まで)


連載日は毎週土曜日と奇数週の水曜日です。

これからも感情の境界線をよろしくお願いします!

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