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感情の境界線  作者: めだまやき
第三章 共鳴か孤独か
18/30

築き上げる協力関係

真柴の負傷、警察の尋問、解放、観察...

一日にて様々なことを経験した主人公、八倉志乃。

B組の山崎夏乃らとの協力関係を築くべくして始まった一日は思ったよりも長く、その中で改めて考えなくてはいけない問題も発生?




 警察からの尋問が終わりとりあえず釈放された俺は政希、稔、実咲、陽太そして山崎さんと一緒に警察署の近くにあった焼き肉店に居た。俺の労い、慰めの会ということもあって俺のお代はすべて稔が持つらしい。帰郷から帰ってきたときもそうだったがこうゆう時に稔はいつも律儀だ。そんなことを考えながら、俺は後ろのテーブル席を横目で見る。グレーのスーツをまとった、眼鏡をかけた小柄な若い男性がいる。一見会社員に見えなくもないが眼鏡をかけているにも関わらず、顔が全く歪んでいない。とするとあれは伊達メガネだろう。それにそこから覗く鋭い目つきは俺に向けられている。

 面倒だな。あの人物は十中八九刑事で間違いない。この店に入ってから肉をほとんど食べずに視線が俺に向いてることが俺の推測を裏付ける。一応釈放された身ではあるが警察は俺を保護観察という名目で監視するつもりだろう。

「それにしても何があったの? 警察に聞いたんだけど詳しいことは教えてくれなかったんだよね。」【あんまり詳しいことは知らないの】

 と実咲が俺に話しかけてくる。

「あ、えっと。昼休みに俺が話し合いから抜けたのはさ、真柴から連絡があったからなんだ。」

「うん、それは聞いたよ。」【志乃私に言ってから行ったもんね】

「マジか。それ初めて聞いたんだけど。」【俺だけ?】

 確かに昼休みに伝えたのは実咲だけだったな。

「そうそう、真柴からの連絡が入ってさ、実咲にしか言ってなかったね。ごめん。」

「いや、いいんだけどさ。」【そりゃ真柴からの連絡だったら飛んでくわ。協力しようとしてる立場だしな】

 政希とは日曜に真柴をこちらに引き入れる意思があることも俺は伝えていたから話の呑み込みが早い。

「待てよ、今の出なんで理解できるんだよ、政希。」

 その話を聞いていなかったのか、稔は政希に質問する。

「ああ、それは俺が説明するよ。」

 別に政希に任せてもいいのだが、真柴と協力する話をこの二人の前で言われると困る。

「二人にとっては少しつらい話になると思うけどいいかな?」

「昼休みのよりもかな…?」【あれ以上つらい話なんてあるの?】

「わかった。」【覚悟した方がいいな】

 山崎さんは昼の話で真柴が犯人でそれが自分のせいだと責任を感じている節もあって精神的にも相当疲弊しているのだろう。陽太もそれなりには疲弊しているのだろうが川岸のことについては山崎さんよりかは負担は軽い。(彼女と比べてはという話だが)

「ごめん、昼よりも重要だよ。昼にはさ、川岸のイジメの裏にいるのは真柴薫だって言ったよね。でもさ、裏でって少し違和感感じない?」

「…」【裏…】

「た、確かに!」【全然気が付かなかったぜ】

「そう。裏、つまりイジメの黒幕は真柴なんだ。だけどね、山崎さんは分かってると思うけど人の上に立つことを善しとするものは表は完璧じゃないと気が済まない。つまりリスクのある選択はしないんだ。」 

「…そう、だね。」【イジメなんてリスク高すぎだよね】

「おい、それって矛盾してるじゃんか。真柴がイジメの黒幕ってことを否定してるように聞こえるぞ?」【おかしくね?】

「だからこその裏なんだよ。黒幕ってのは実行犯のことを指さないよな。つまり川岸のイジメを計画したのは真柴だったとしてのあいつはそれを自分の手を汚さずにやったんだ。」

「協力者の存在…」【だからこその裏】

「山崎…?」【どうゆうことだ?】

「山崎さんの言う通りだよ。川岸のイジメの裏に真柴がいるってことは実行犯、つまりは協力者がいるんだ。」

「協力者が…」【どっちも許せない…】

「でもっ、それならなんで真柴は今回みたいになってるんだよ。あいつの表の顔しか知らない連中なら真柴を恨む奴なんてそういないだろ?」【だって表は完璧なんだからさ】

「そこが今回の焦点なんだよ。真柴は表で恨まれることはまずない。ってことはその協力者が裏切ったってことにならないか?」

「真柴薫が…裏切られていた?」【そんなの…あり得るの?】

「マジかよ。じゃあ俺は川岸にどう説明したらいいんだ…」【わからない…】

「俺には過去に真柴に陥れられたことがあることは話したよね。それは簡単に払拭できるものじゃないけどさ、最近真柴が裏切られてるんじゃないかって疑って本人に話を聞きにったんだ。きっかけはほら、R組の強盗事件。」

「あの事件で?」【あれは真柴君がやったことなの?】

「ああ、あれか! 放課後R組の誰かが強盗に合ったけど寸でのところで我に返って誤ったとかいうやつか。」【誰がやったのかは特定できなかったけどな】

「そう。俺たちはそこから真柴が裏切られた可能性が高いんじゃないかって思ったんだ。俺が話を聞きに行ったときに真柴はそれを認めたよ。ただ、裏切られたのは川岸が階段から落ちた後の話だ。つまり、病院で呼吸器と点滴が外れたことを真柴は全く計画していなかったってこと。」

「でも階段から落としたまでは真柴の計画なんだな?」【それなら許さねぇ】

「そうゆうことになるね…」

 俺が答える間もなく山崎さんが答える。

「その協力者は聞いてて分かると思うけどかなりの危険人物だと思う。だから協力者のことは俺たちに任せてほしい。」

「ちょっと待てよ、志乃。その真柴を裏切った協力者が危険ならなおさら志乃たちに頼るのは間違ってる。俺たちがもともとお願いした立場なんだし、何が危険かはなんとなく予想できるけどそれを志乃たちに押し付けるのは違う。それこそ俺たちが請け負うべきだ。」【志乃たちが傷ついたらそれこそ俺たちの立場がなくなる。】

「そう…だよ。八倉君たちがわざわざ危険な方に行くなんて…。これはもともと私たちがお願いしたことなんだから…」【それは私も反対】

 普通のことならここはそうだね、といって俺はもう一度考え直すかもしれない。ただ、今回の件だけは別だ。これは真柴が起こした問題。真柴の被害を俺が止める、そう決めて西条高校に来たのに今それを実行しなかったら俺は結局前と同じだ。また何もできずにココロを痛めて傍観するだけになってしまう。そんなのはイヤだ。だからこそここは絶対に譲れない。確かに山崎さんや陽太が言うこともわからなくもないがそれでもやっぱりダメだ。

 そうして俺は声を低くして声を放つ。

「これはそんな簡単に解決するような問題じゃない。真柴がきっかけとなったことは俺が許さない。だから悪いけど君たち二人にはこのことは任せることはできない。」

 こんな声を俺は友人の前で出したくはなかった。真柴のことが絡むと俺はどうしようもない憎悪に駆られてこうなってしまう。

「っ…志、乃?」【どうしたんだよ突然】

「八倉君...?」【私は…】

「志乃、まだ話の途中だよ。」【ここで決裂したら意味がなくなってしまう】

 動揺を抑えられずにいた二人を見た政希は俺に声をかける。

「ごめん、ちょっと熱くなりすぎた。」

「お、おう。」【熱いってよりか冷たかったけどな】

「…」【私には理解できない事情があるんだよね…】

「うん。それでさ、俺が真柴の協力者の方は何とかするから陽太と山崎さんは生徒会長のことをお願いしたいんだ。」

「は? 生徒会長って神霜三船生徒会長のことだよな?」【いやさすがに無理があるような…】

「わかった。」【こうなったら八倉君に任せるよ】

「え、ちょ、山崎?」【マジで?】

「うん。八倉君が何を掴んでるのか私には想像できないけどさっきの様子から見てこれ以上私たちがやるって言ったところで彼は譲らない。それなら八倉君が考える構図にして協力者を確実に明かした方がいいと思う。」【そうでしょ?】

 さっきから二人で話しているように見えるが俺に感情が聞こえてくるってことは俺に向けて話しているってことでもあるんだよな。それにようやく見えた気がする。いくつか選択肢のあるこの状況のなかでできるだけ全員が得をするような形になるような未来を想像し、それをもとに周りを説得する。山崎の慧眼とその説得力。リーダー格にはもってこいのものだな。

「そ、そっか。じゃあ志乃、協力者のことは任せたぜ。にしても生徒会長のことってどうゆうことだよ。」【交渉とか俺には向かないしな】

 この問題に欠かせないのは真柴の口から出る真実と生徒会長の情報力。そのためには

真柴をこちらに引き込み、生徒会長の情報網を駆使する必要があるのは言うまでもないだろう。

「陽太と山崎さんには生徒会長、神霜三船に協力を懇願してほしい。生徒会長の立場上、学校内でイジメが発生して、それを報告してくる生徒がいたらないがしろにはできないはずだ。」

 そう、あの神霜三船なら校内でのイジメや今回の事件など見逃すはずがない。過去のっ例から言っても危険分子と判断した時点で監視、情報収集、接触のどれかはこれまでも行ってきていたはずだ。思えば真柴のこともそうだった。

 だが今回はこれほどコトが大きくなっているにも関わらず、いまだ会長は動いているようには思えない。いったい、何が起きている――――


【事務連絡】

随時加筆修正を行っております。ご了承ください。


【お知らせ】

水曜日と土曜日に更新を行うことにしました。

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