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感情の境界線  作者: めだまやき
第二章 暗躍する能力者
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残酷なる光景

B組の山崎夏乃、如月陽太とともに作戦会議の最中に宿敵、真柴薫に呼び出された主人公、八倉志乃。


しかし、呼び出しで見かった先にはとんでもない事態が待ち受ける...


―――今すぐ来い


 B組の山崎夏乃と如月陽太に川岸のイジメには真柴が関連していると伝え、場がなんとも言えない沈黙に染まっていた時のことだ。俺の携帯の着信音がその場に響き渡る。

 真柴からのメッセージを受け取ってすぐに俺は実咲にそれを伝え一人で真柴の所へ向かう。再びメッセージが送られてくる。

「場所は南階段の」

 よりによって南か。さっきまでいたところが北の中庭だったからそれなりに時間がかかってしまう。それに南階段の何階なのか分からない。普通に考えれば話がしやすいのは屋上の階段だが、それ以外の場所も多少なりはスペースがある。つまり、一階から登るしかないか。俺はもう一度携帯を確認するが真柴からそれ以上のメッセージはなく、そのことを悟った。 下駄箱に着き、急いで上履きに履き替えると俺はすぐに南側の階段へと向かった。一階から順に上っていったが途中で真柴は見かけていない。となるとやはり屋上の階段だろうか。

 4階まで上がった時、かすかに声が聞こえた。苦しむようなその声。俺は足を止め屋上につながる階段を見上げた。その時、階段から真柴が現れた。俺は真柴のその姿を見てゾッとする。あいつは頭から血を流し、肩ははずれているように見えた。

「ま、しば?」

 様子がおかしいなんてレベルじゃない。誰かに意図的に殴られたりされない限りあんな風には決してならないだろう。というか歩けている方がおかしいくらいのキズだ。


――――ぐっ

 

必然、というか何のためらいもなくい真柴は階段から転げ落ちた。そして俺の前に鮮血が飛び散る。

「おい、おい真柴! どうしたんだよその傷!」

 目の前に転げ落ちてきた真柴の傷は思っていたよりもずっと深く、血も大量に出ている。俺は親父が轢かれた時のことを思い出し、息が荒くなる。

「や…ぐら…? 俺…は…」【た、助けてくれ】

 息も絶え絶えの中真柴が発した言葉には感情が籠っていた。いつもならこれが本心なのか確かめるところだが、この状況でこれが本心じゃなかったら何が本心だろうか!

「う…しろ…」【気を…付けろ】

 そして真柴は静かに目を閉じた。

「後ろ? おい、真柴! どうゆうことだ! 真柴! 薫!!!!!」

 もう限界だった。正常な人間が人が目の前で鮮血に染まる瞬間を短期間で二回も見て耐えられるはずがない。

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

 理性の聞かない口が叫び声をあげる。俺のシャツは真柴の鮮血に染まり目の前の色はすべて赤に染まっていく気がした。

 その時、後ろのトイレから誰かが走り去っていった。こんな状況を見ながらそそくさと出ていく奴なんて一人しかいない。共有コントロールの能力者! 理性の働かなくなった頭でそう判断すると俺はそいつに殺気を向けながら追いかける。四階の階段の踊り場から廊下へ、そして左へ―――

 次の瞬間、俺の視界は髪の長い少女とその少女から延びる手に覆われる。その手が離れた瞬間少女は目の前からすっかりと消えていた。次第に俺は意識が薄れていき、その場を通った生徒が叫ぶのを聞きながら意識を失った―――



 目が覚めたのは明るい部屋の中。ただただ白が広がる部屋の中だった。ここは…病院の個室? 目に見える照明に手を伸ばそうとしたときに左腕の自由が聞かないことに気が付く。

「手錠...? なんで…」

 起き上がり真っ白な布団をどかして左腕を見るとやはりベットと俺の左手首が手錠で繋がれていた。

「…は?」

 それ以外に体には特に異常はなく違いといえば血に染まったシャツから病院の患者衣になっていたくらいだ。

「目を覚ましたようだね。」【ずいぶん待たせてくれたじゃないか】

 どこかの異世界転生漫画や小説で最初に言われるような声を太い声でかけられる。声のする方を見る。その声の主は黒いスーツを着た目つきの鋭い人物だった。多分刑事だろう。目を覚ましてからこの状況で医者よりも先に刑事を見ることになるとは。だいたいは予想できるがいったい何が起こったんだ?

「まぁまずは担当医に来てもらうことにしよう。」【まずはな】

 そういいながらその人物は廊下にいる部下であろう人たちに合図を送った。そしてそいつは俺のベッドの横に座る。そいつは喋らず俺のことをじっと見ていた。ほどなくして医者が来た。医者は俺の脈などを測り、いくつか俺に質問をした後、もう大丈夫ですね、と言い残して病室から出て行った。

「あの、これはいったい…?」

 俺は刑事に手錠について聞いた。

「まずは退院の用意をしようか。」【話はそれからだ】

 そういった刑事はそれ以上は言葉を発することなく外にいる人たちに合図を送った。合図を送ってすぐに病室には政希に稔、実咲に陽太、山崎さんまでもが一斉に入ってきた。が、いつものように俺に話しかけたりせずにただ黙々と俺の退院の用意を手伝っていた。その最中、五人は唇を噛み締め、実咲は目に涙を浮かべていた。俺が一度政希に話しかけたが、政希は答えず、ただ黙々と作業を続けた。

「準備が整ったようだ。逃げ出そうだなんて考えるなよ?」【逃げたところでって話だがな】

 そのスーツの刑事はそう言って俺の手錠を外し俺に着替えるよう言った。用意された服は新しいシャツと制服だった。早急に着替え、俺はその刑事に連れられ外に出る。退院の手続きはすでに済んでいるようだった。


 抵抗するべきではない。そう思った俺は素直に刑事に囲まれて最寄りの警察署へ連行された。その時に政希や実咲たちとは別れることになった。尋問室であろう部屋に通され座った俺にようやく刑事が口を開く。

「さて、何の抵抗もせずについてきたのは賢明な判断だったね。では八倉志乃君、まずは君からの質問を聞こうじゃないか。」【まだ決定したわけではないからな】

 俺を威圧しないように聞いているんだろうがその眼光は依然として鋭いままだ。

「えっと、まずは俺がここに連れてこられた経緯を教えてください。」

「まったく、この状況で落ち着いていられる学生などそういないだろうね。」【驚いたな】

 そうして刑事は何が起きたのかを話し始めた。

 

 簡潔に言うと俺は今、参考人として拘束されている身にあるらしい。

学校で俺が意識を失った後、近くにいた生徒が俺とその後ろに倒れていた血だらけの真柴を見つけ救急車を呼んだそうだ。当然俺と真柴は病院に搬送された。治療の結果、真柴は命に別状はないが未だ意識が戻っていないらしい。ただ、そのあとが問題だった。救急車を呼んだ生徒が同時に先生を呼んだ。その時の先生は真柴の様子を見て事件性があるものだと考え、通報もしたそうだ。救急車と同時に警察が学校に到着し、警察は現場検証をしたらしい。どうやらあの屋上の踊り場には血の付いた椅子のパイプがあり、やはりこれを事件と断定したらしい。鑑識がパイプを調べた結果それに指紋はついておらず一番近くにいた血にまみれていた俺を参考人として拘束したとか。

「俺はやってません! 俺は…」

「最初はみんなそう言うんだ。」【まったく、ベタなこと言いあがって】

「でも俺は、俺は屋上の階段に上っていません!」

「君が屋上でやらずとも別のところで彼を傷つけて凶器を屋上に投げればいいじゃないか。」【可能性はありうるぞ】

「でもっ、俺と真柴はあの学校で唯一の同じ中学同士ですよ? それなのに…」

「そんなものは理由にならないだろう? 君と真柴君の仲が悪かったのは君のお母さんに確認済みだよ。同機はいくらでもあるだろう。」【我々を甘く見ては困るな】

「そ、それでもっ…」

 その時、刑事の携帯が鳴る。刑事はいったん部屋から出て話を始めた。そして戻ってくると…

「出ろ。釈放だ。」【チッ】

「え、どうしたんですか?」

「真柴君の携帯から君へのメッセージが見つかた。あの時間に送信していたのだから君がこれに関与していないことが一時的に証明された。」【あのクソ上司がっ】

 そして俺は学校に持って行ったカバンを持たされ警察署を出た。


「志乃! 大丈夫か?」【安心したぜ】 

 警察署から出ると政希が俺に駆け寄ってきた。五人は俺を待っていてくれたみたいだ。

「うん、心配かけてごめん。一旦だけど無実が証明されたみたい。」

「よかったぁ。まあ何はともあれ無事で何よりだよっ。今から焼き肉行こ? 稔のおごりで。」【ホントよかったぁ】

「はぁ? なんで俺なんだよ!」「そりゃ明暗だな」「ふざけんな」「まぁまぁ」

そんな会話を聞きながら俺の目からは涙が零れる。尋問のストレスは思った以上に俺の精神を削っていたのを身にしみて感じる。

「し~の~、泣かないでよ。私も泣いちゃうじゃん…グスッ」【心配したんだよ】

「よ~し、飯食いに行くぞ志乃! 元気出せ!」【俺のおごりだ】


 そうして俺は町が夕日に照らされる中信頼のおける友と、ユーモアのある友と、ほとんど彼女と、守らねばならない人と共に歩き出した。


奇数週の水曜日と毎週土曜日に投稿していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。



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