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感情の境界線  作者: めだまやき
第二章 暗躍する能力者
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伝える事実、呼び出し

久々の学校、それは情報収集の好機。容疑者は誰だ?


複雑に絡まる謎には新たな仲間が不可欠だ。

主人公八倉志乃は信頼できる仲間を獲得できるのか…


 教室に入って俺に真っ先に視線を向けてきたのは坂上夏帆さかがみかほ野口修也のぐちしゅうやの二人。そして席に着き、机を見た時には小川帆花おがわほのか。とりあえずA組で怪しく感じたのはこの三人だ。ただ、怪しいからといってその人がそのまま能力者であるとは限らないため今のところはマークくらいにしておこう。まだA組に能力者がいると決まったわけでもないしな。


八十分授業が嘘のように過ぎ去りあっという間に昼休みになる。俺たちはB組の山崎夏乃やまざきなつの如月陽太きさらぎようたと話すため中庭に移動する。

「あ、三人ともさ、俺が感情読めるって二人は知らないからそれは秘密にいておいてね。」

 俺はいつも通り山下稔やましたみのる湯谷政希ゆたにまさき向井実咲むかいみさきと一緒に移動中に言った。

「あ、まだ話してなかったんだ。」【如月君には話したのかと思ってた】

「ああ、わかった。」【当然】

「まかせろっ」【大丈夫、だよな…】

「まあ、稔が話しちゃったらそん時はあの二人に教えちゃってもいいけどね。」

「教えて大丈夫なのか? その、なんかトラウマがあるんだろ?」【俺が言うことじゃねーが】

「うん、まだトラウマは残ってるけど話を聞いた感じだと山崎さんと陽太なら大丈夫だと思う。ただ、教えないほうが俺としては気が楽かな。」

 西条高校の中庭は校舎からは見えない一棟の北側にある。職員室は一棟西の一階に、1-DからF、そしてR(特進)組は一棟西の四階に位置している。二から三階には二三年の教室があり、二棟には音楽室などの予備教室がずらりと並んでいる。

 

 そんなことを考えているうちに中庭に到着する。山崎さんと陽太は先についていたようで事情を知らない人から見たらカップルに見えるかもしれない。

「悪いな、昼に呼び出したりして。」

「いや、協力してもらうのは俺たちの方だし気にすんなよ。」【頼むぜ志乃】

「夏乃~!! なんか久しぶりだね~。」

 中学が一緒なだけあって実咲は親し気に話しかける。山崎さんも実咲に応え、明るく返事をしていたがその声と表情はどこか疲れが見て取れる。

「それじゃ、じゃれてないで始めよーぜ。」【早く解決したいしな】

 と陽太が告げる。

「えーと、こんなテンションで話すことじゃないけど。うちのクラスの川口がイジメられてしかも入院してることは知ってるよな。志乃にはそれの犯人に目星がついてるってわけだけど…」【ホント許せねぇ】

 二人は、いや五人は俺に一斉に視線を向ける。

「うん、とりあえず紹介するよ。こっちが山下稔で、内のクラス委員。で、こっちが湯谷政希、軽音部だよ。あと実咲を含めた四人でだいたい俺たちは動いてる。」

 口に出して他人に伝えると少し恥ずかしさも感じる。俺がこんな能力を持たずにこんなことをやっていたら中二病もいいところだな、と我ながら感じる。だが今はそんなことを言ってる場合ではない。早くに川岸のいじめと事故の犯人を突き止めB組の二人に情報を提供し、俺たちはその能力者に真柴の強盗事件について聞き出さなければならない。

「よろしくな、湯谷、山下。」【クラス委員にクールな男子か】

「え、私の紹介それだけ!?」【嘘でしょ?】

「いや、俺も向井さんのことは知ってるし別に大丈夫だよ。山崎に至っては仲いいんだろ?」【そりゃ向井さんは結構有名だしな】

「そうだよ、実咲。いろんな意味で有名なんだから。」【最近は色恋沙汰もあったんでしょ?】

 まだその問題は解決していなかったのか。悪いことをしたな…

「そっかぁ。」

 俺と山崎さんの関係といえば部活のマネとのかかわり程度だったため、改めて山崎さんを観察していた。ここまで聞いて、見てみても彼女が噂に聞いていた学年屈指のリーダー格とはとても思えない気がしていた。彼氏の川岸のことなだけあって息をひそめているだけかもしれないが、それだけじゃない気がする。

「じゃあ、さっそく犯人の目星について話そうか。」

 場もいったん落ち着いたことだし俺は一度観察を止め、本題に入ることにした。

「ああ、率直に聞くと誰だと思ってるんだ?」【どうやって分かったんだか】

「まだ予想の段階ではあるけど川岸をイジメてた犯人の裏にいるのはRクラスの真柴薫だと思う。」

「マジか。」【あの優等生が?】

「っ、やっぱり…」【真柴君だったんだ】

 真柴の名前を出し、驚いたのは陽太。そしてやっぱりと呟いた山崎夏乃。これが一体何を意味するのかは一つしかないだろう。


―――山崎夏乃は川岸のイジメの裏に真柴がいるとわかっていた。


ということで間違いないだろう。それを知っていながら止められなかったのか、はたまた止められなかったのは別としてやはり違和感は残る。

 この違和感に一緒に聞いていた政希も気が付いたらしく鋭い目を山崎夏乃に向けている。

「そ、それで志乃、なんで真柴だと思うんだ?」【川岸とのつながりは全くないんじゃ…】

「俺は真柴と同じ中学だったんだ。真柴はこの西条高校に知り合いは最初誰もいなかっただろ?だけど今では学年で真柴の名前を知らない奴はいない。」

「確かに…そうだけど。それでなんで真柴が犯人ってことになるんだよ。」【さすがに信じられないぜ】

「あ、あとさ、八倉君。さっき裏で、って言ってたけどどうゆうこと?」【人を使ったの?】

「たぶん思ってる通りだと思うよ。裏でってのは自分は直接手を出さないで人を使って川岸をイジメてたんだよ。それと、本当の狙いは、君だよ、山崎さん。」

 ここは正直に言った方がいい。彼女もうすうす感づいているのだろう。悲しみながらもどこか納得した表情と感情からそれは容易に推測できる。

「すごいね…八倉君。そんなことわかっちゃうんだ。」【どうして…】

 まずったか? 確かに彼女の感情を参考にしたがカモフラージュしたはずだ。

「私、途中からわかったの。健人がイジメられる理由は私のせいだって。だって、健人のイジメの話が私にいち早く入ってくるんだもん。そんなの…おかしいでしょ?」【それに】

「え、ちょ、待って。俺だけついていけてないんだけど…」【どゆこと???】

「まぁまぁ。そのうち説明してくれるよ。」

 同じくあまり理解できていない様子の稔が陽太を止める。

「それに真柴君のクラス…R組の子から少し聞いてたの。真柴薫は人の上に立つことを善としている、ってね。そうゆう人はそのための行動に手段を択ばない。私は確かに知り合いも友達もいっぱいいるから真柴君の目に付いたのかもって思って。健人にもね、そのことを話したの。でも彼はそんなこと気にしないって…。そうしてる間に階段から落ちて、病院ではあんな風に...」【私が彼と付き合わなければ...】

 これ以上話すと彼女は自分を責め続けることになる。それでは俺がここに来た、この学校を選んだ意味がない。

「山崎さん、俺もそれと似たような状況になったことがあるんだ。聞いてほしい。」

 彼女がコクリと頷き俺の目をまっすぐと見る。

 

そして俺は話始める。中学の出来事を。真柴と俺以外の名前は伏せ、能力のことも伏せたが、真柴の本性をさらけ出すには十分だった。

「…八倉君も苦労したんだね…。私、抱え込んじゃって…ごめん、涙が…」【吐き出せてよかった】

 彼女はそのまま泣き崩れてしまう。

「わ、わりぃ志乃。話が全く読めねぇんだけど…」【コトがコトだからな、聞くわけにもいかない】

「ん、まぁ超カンタンに言うと、真柴はとんでもない奴で、川岸は山崎さんを精神的に痛めつけるために肉体的に傷めつけられたんだ。苦い話だけどこれが俺の知ってる事実だ。」

 陽太には相当の器量が必要になる。まさかあの真柴が、いじめに加担? しかも友達の川岸を? といったような本人に聞いても応えるはずがない問題を背負う必要がある。

「なるほどな…」【やっぱ信じらんねぇ】

 当然、これだけでは事件の全貌は見えてこない。

 真柴が裏切りに合い、その協力者が川岸をイジメた張本人であり能力者、かつ犯人だからな。だけどそれを説明するには能力にい触れた話さないといけない。

 今はまだはなすべき時ではない。今日のうちにこれ以上話してしまったら二人はこの問題に向き合えなくなってしまう。だからまずは真柴の本性を知る必要があった。

 さて、C組にどんな奴がいるか俺はだいたい知っている。その中で真柴が協力者に選びそうかつ能力者あるような人はいなかったはずだ。この様子からしてB組の生徒もたぶん違う。クラスの絶対的リーダー格がいて、それなのにポッとでの真柴の手を取る人はいるだろうか。早計は禁物だがやはり一番怪しいのは内のA組で変わりはない。となると朝の三人か…

 

 話は一時中断し、そんなことを考えている矢先、携帯が鳴る。


―――今すぐ来い。

真柴からのメッセージだ。


奇数週の水曜日と毎週土曜日に投稿していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。

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