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感情の境界線  作者: めだまやき
第二章 暗躍する能力者
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疑念の目

夜に訪ねてきた湯谷政希から一枚の紙を受け取った主人公、八倉志乃。

そこから考察する彼の考えはどの方向に向かうのか。

 

そして久しぶりの学校――――

彼の前に立ちふさがるのは生徒会か、新たな能力者かそれともほかの人物か…

 

 俺はもう一度政希が持ってきた紙をよく見る。

「ねぇ政希、これ本当に俺の机の中にあったの?」

 聞くまでもないことを俺は思わず口にしてしまう。

「ああ、間違いないぜ。俺が志乃の机を運んでるときに中から出てきたんだ。」【両面とも意味わかんなかったけどな】

 これの差出人は共有コントロールの能力者で間違いはないだろうが、問題はなぜこのことを俺に知らせる必要があるのかということ。そしてこれがいつ俺の机の中に入ったのか、ということの二点だ。

そもそも俺たちの真柴の周辺捜査は表立ったものではない。クラスメイト数人にはバレているかもしれないが、ほかのクラスの人に俺たちの調査を知っている人はいないはずだ。となると共有コントロールの能力者はA組にいるのだろうか。ただ、だとしたらなおさら川岸の情報を俺に渡す理由が分からない。クラスメイトで俺たちの調査を知っているほどの情報通ならば俺や政希、実咲が部活経由で土日の間に川岸の情報を掴むことなど簡単に予想できるはずだ。

「なぁ志乃、それで何があったんだよ。川岸のこととかさ。」【さっきから黙り込んで】

 どうやら、というかやっぱり俺は黙り込んでしまっていた。

「あ、ごめん。ちょっと考え事してた。」

「いや別にいいんだけどさ、考えるならやっぱ一人よりも何人かいた方がいいと思う。」【少しは役に立ちたいしな】

「そうだね、確かに一人で考えるよりも断然いいかも。」

 それから俺は実咲に話したように政希にも川岸が真柴主導でいじめられていたこと、真柴が裏切られたこと、その協力者が共有コントロールの能力者であること、そして共有コントロールに対する俺の考察を話した。

「にわかに信じられる話じゃないな。真柴が川岸のいじめを主導して山崎夏乃を陥れるとこまでは理解できる。ほんとはしたくないけどな。」【聞いてて胸糞わりぃ】

 そうだ。このことを話すのは今日で二回目になるが、それでもやはり真柴が人をそうやって陥れることは何の引っ掛かりもなく受け入れられることに自身の異常さを感じる。

「そこからがもう何が何だか。あの真柴が裏切られる? しかもそいつは共有コントロールの能力者? 厄介な能力な上に何考えてるのかわかりゃしねぇ。」【待てよ…】

 俺も信じがたいが、それを本人からしかも感情も一致して聞いたのだから事実には違いない。

「待てよ志乃。その共有コントロールって能力だったら志乃の脳震盪もそいつのせいじゃないのか? 一時的に脳だけ共有(コントロ―ル)できれば触れるだけで脳震盪くらい起こせるよな?」【発動条件に左右されるけど】

「ん~どうなんだろう。俺の予想だと真柴の強盗の件から考えて発動のトリガーは相手と話すこと、だと思うけど...」

 というかそもそも入院してたことを俺は政希に言われるまですっかり忘れていた。それが表情に出たのだろう。政希は俺の話した内容よりもそっちを優先してきた。

「もしかして志乃、入院してたことなんてお構いなしにこの土日過ごしてたのか? 確かに志乃のいいとこは人のために自分のみを顧みないとこだと思うけどそれは時として凶になりうるんじゃないか?」【らしくなく説教みたいになっちまったな】

「…まったくだね。言い返すことすらできないよ。だって俺、入院したこと殆ど忘れてたもん。それになんで入院したかもね。」

 正確には土曜日の部活の時は覚えていたが、まぁそれを言っても話はややこしくなるしこっちに非があるからそれは言わないことにした。俺が入院した当日に政希は真柴の強盗の話を聞いただけあってその日の思い入れは強いのかもしれない。

「もし俺が入院するきっかけになった人が真柴の強盗事件のきっかけを作った人と同一人物ならその人はかなり絞られるんじゃない?」

 俺を入院させた犯人は確か実咲がクラスを限定していた気がする。もしそれが外れていてもその過程で何か情報を得られる確率は高いだろう。それに場合によっては真柴をこちらの陣営に引き入れ、協力者を聞き出すことができるかもしれない。


 ――――俺にはやるべきことがある。


 ふと脳裏に真柴が俺に放った言葉がよぎる。

「ああ、確かに実咲がそんなようなことを言ってたな。」【隠れて聞いてた気がする。】

「あはは、そういえばそうだったね。いつから隠れて盗み聞きしてたの?」

「え、いや、別に盗み聞きしてたわけじゃないんだぜ?」【稔がいい感じだから隠れてようって】

「まーた稔か。まぁ確かにあの時はいい感じだったけどさぁ。」

 自分で話していて恥ずかしくなってくる。そんな俺を見て政希は少し笑う。

「志乃、お前真っ赤だぞ? やっぱりデキてたのかお前ら。」【やーっぱりな】

「ちょ、はぁ? ちげーし、テキトーなこと言うなよ。」

「まぁ、それはそうとこうなれば明日からその共有コントロールの能力者を捜すんだろ? したら俺はそろそろ帰るかな。」【結構長居しちまったしな】

 政希はソファから立ち上がり、玄関に向かいながらそう言った。

「うん、そうするつもり。ただ、一番早いのは真柴をこっちに引き入れることなんだけどね。」

 玄関の扉を開け、帰ろうと知る政希にそう告げると政希は振り返り、真顔になった。

「え、マジ?」【真柴を?】

「うん、割とマジ。」

 当然俺も真顔で返す。政希はため息をついて、また明日な。と言って帰った。


翌日の月曜日。

学校に行くのは久しぶりになるな…

先週は木曜日には例のことがあったのでそれ以降教室に入るのは久しぶりだ。部活の時も体育館しか使ってないしなぁ。

大事なのは教室に入った時の初動と俺が自分の席について机に手を入れた時。昨日の夜、政希が帰った後に実咲に紙のことを連絡した。入院の時に話していたのは四階の東階段を使うのは1‐AからC組の生徒まで。そして俺たちの調査を知っている可能性があるのはA組の生徒の可能性が高い。つまり疑わしくなるのはクラスメイトという結論に至った。

あまりクラスメイトを疑うようなマネはしたくない、と実咲は言っていたがこうも条件がそろっては疑わざるを得ない。


そしていつもとは違った朝が始まる。クラスメイトを疑う朝が―――。

 クラスメイト達ほぼ全員が登校し終わったであろう時間に教室に着くため、俺はいつもの電車を1本遅らせて登校することにした。

 そして教室の扉に着く。一度深呼吸をした後で…

「あ、おっは~八倉。」【なんか久しぶりだねぇ】

 まったくタイミングが悪い。同じクラスの江藤沙耶えとうさやから声を掛けられる。結局江藤と一緒に教室に入ることになる。

「おはよ~」

 さて、誰が俺に注目するか。最初に目が合ったのは坂上夏帆さかがみかほ、A組の女子クラス委員だ。そして次は野口修也。その次は…

「志乃! おはよ。」【土日に連絡してくれてもいいだろ?】

 山下稔。

 はぁ。小さくため息をつき実咲の方を見る。すると実咲もやはり同じように呆れたような顔を浮かべていた。

「は、いやおま、朝から俺の顔を見てため息つくなよ。」【ショックなんだけど】

「いや、別にため息なんてついてないよ。稔は変わらないなあって思って。」

 俺は気を取り直して周りに気付かれないように目を光らせながら席に着き机の中に手を伸ばす。この時、昨日政希が持ってきた紙は手に忍ばせて置き、あたかも今取り出したように見せる。当然稔もそれを目にするが内容を見てそれを読み上げることはしなかった。

 その瞬間、俺は突如として寒気に襲われた。俺は瞬時にクラスに目を光らせると一人の人物が目に留まった。座席は4月から変わっていないためや行の俺の席とは体格に位置する彼女の表情は読めなかったが、尋常じゃない目をこちらに向けていることは分かる。そいつの名前は小川帆花おがわほのか



皆様、新年あけましておめでとうございます。

この場をお借りして作者である私から、挨拶を申し上げます。

昨年は感情の境界線を応援していただき、誠にありがとうございました。本年も引き続き、私と感情の境界線をよろしくお願いいたします。



さて、本年は奇数週の水曜日と毎週土曜日に投稿していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。

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