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感情の境界線  作者: めだまやき
第二章 暗躍する能力者
13/30

悲劇の始まり

宿敵真柴薫から情報をやっとのことで得た主人公、八倉志乃。しかし、その後すぐに真柴の家から追い出されてしまう。

新たな能力者の能力の判明とともに訪れる悲劇の幕開けとは……


 真柴から追い出された俺は何度かあいつのドアを叩いたがあいつが応じることはなかった。これ以上ここにいても時間の無駄か。とりあえず俺は駅に向かうことにした。そんな時だ、また携帯から着信音が聞こえてくる。

 メッセージの相手は実咲。俺は実咲に電話をかける。

「もしもし、実咲?」

「あ、志乃。さっき部活終ったんだけどさ、お昼食べない?」

 さっき部活がということ終わった、ということは俺を救ったあのメッセージは部活が終わってからすぐに送ってくれたのか。ぎりぎりのタイミングだったが、あれがなかったら俺は何の確信も得られずに真柴の家を出ていたところだった。

「今からか? 俺は大丈夫だよ。」

「帰って着替えてからでもいい? さすがに部活着のままだとちょっとね。もうすぐ家に着くからさ。」

「わかった。じゃあ実咲の最寄で待ってるよ。」

「りょーかい。じゃあ後でね。」

 実咲との通話を終え俺はまた駅へと向かい始める。ここからだと実咲の最寄は三駅ぐらいだ。


 実咲の最寄につき、改札を出てから近くの柱に寄りかかりながら実咲を待った。その空いた時間に少し頭を回転させる。

 真柴が山崎夏乃をハメるときの協力者に裏切られたのはまず間違いないと考えていいだろう。そしてそいつは能力者であるとも真柴は言っていた。能力は共有コントロール。まだどういった能力かはわからないが、少なくとも他人を操る能力であることは間違いない。そうでなければ真柴は自分のクラスメイトに強盗なんて働かないだろう。また、その能力の使用中は使用対象の記憶が保管されないのも、真柴の話から分かる。

 その能力者のことも気を付けなければならないが、何より気になるのは真柴のやらなければいけないこと、という言葉。あいつは自分の犯したミスなどは他人に知られることなく自分のみで片付けようとするはずだ。つまり、真柴はその能力者に直接話に行こうとしているのだろうか。あるいは対話なんて甘い考えではないかもしれない。

 また、真柴の俺に対する態度の変わりようにも少し気になることがある。入院してる時の態度とさっきの態度は全く違った。普通、いったん泣きついた相手にあそこまで高圧的な態度はとらないものだと思うが……

「――志~乃。」【ごめん待ったよね】

「あはは、驚いた~。」

 そんなことを考えているうちに後ろから実咲に肩を叩かれる。実咲の短めの髪からはシャンプーの匂いが仄かに香る。ラフめの服装はいつもの実咲の活力を思わせる。

「ど~したの~、そんな見つめちゃって。」【見とれた?】

「あ、いや。」

 中学ではこんな経験は全くなかったので少し焦る。

「あ~、志乃赤くなってる~。完璧そうな志乃もデートは初体験かなっ?」【私もだけど~】

「っからかうなよ、実咲。」

「からかってないよ~。志乃がかわいかっただけ。」【あー言っちゃった!】

 ここまでからかわれたら少しはやり返したくなるものだ。

「ねぇ実咲、感情読んでもいい?」

「えっ、ちょ、それは禁止。マジで、恥ずかしいから!」【も~、チョー楽し~】

「まぁ俺の意思に関係なく聞こえてくるんだけどね。」

「あーあー、なんも聞こえないっ。ほらっ、早くいこ?」【これでおしまいっ】

 俺が口を開くより先に実咲は俺の手を引いて歩きだす。……こうゆうのもいいな。


 実咲が向かっていたのは裏路地にある小さなレストランだった。

「ねぇ志乃、ここでいい? 話すにもちょうどいいところだと思うんだけど。」【結構穴場なんだよね】

「ああ、すごいところだな。」

 中に入るとそこには裏路地にあることを忘れるほどの空間があった。入ってすぐに螺旋階段が見え、一階と二階に分かれている。客はすべて個室に分けられるのだろうか、扉の多さからかなりの客が入っていることがわかる。

「知る人ぞってところだよ。ネットにもテレビにも載ってないからさ~。」

 入り口でそんな話をしていると執事のような恰好をした若い店員が出てきた。

「向井実咲様ですね。本日はありがとうございます。お部屋はこちらになります。」【本日は…】

 …相当場違いな場所に来てしまった気がしたが、実咲は慣れた様子で店員についていく。店員の感情が聞こえたということは俺も客として扱われているようだ。

 一階の隅の部屋に案内され店員はごゆっくり、と添えて去っていった。中の部屋はサ〇ゼの大きめのテーブルを切り取ったような小さな空間だった。

「なぁ、実咲。先に聞いておきたいんだけど、料金大丈夫かな…」

「まったく~、デートでお金の心配しちゃだめだよ? あ、でも安心して。この店は部屋代とかないし、料理もサ〇ゼとかと同じくらいの金額だから。」【気持ちはわかるよ】

「マジで?」

 疑いながらメニュ―に目を通すと確かにサ〇ゼよりも少し高めのメニューが並んでいた。

「まーそれはそうとしてそろそろ本題入ろっか。」【いろいろ聞けたし】

「そうだね。さっきのメッセージは助かったよ。あれがなかったら俺は何も得られなかった。」

「あー、あの真柴君が強盗をした日の放課後は演劇部が活動してなかったってやつ?」【あれで助かったの?】

「ああ、大助かりだ。実咲に会う前、真柴の家に行ってたんだ。」

「え、真柴君の家行ってたの?」

「ああ。それにしてもなんであの情報だけあの時俺に送ってきたんだ?」

「ん~、なんかあれだけは先に送っておかないとって気がして…」【なんでかわからないけどさ】

「…よくわからないけど、助かったよ。」

「よかったぁ。」

「それで…」

「あっ、うん。今日はね、夏乃の友達に話を聞いてきたの。昨日の夜から夏乃、少しまいっちゃってるらしいんだ。」【あんなことの後だもんね…】

「まいっちゃってる、というと?」

「あのね、川岸君のことは知ってるよね。昨日の夜、川岸君の様態が急変したらしいんだ。手術が終わって、経過観察中だったらしいんだけどね…」【川岸君…夏乃…】

「まさか!」

「そのまさかがどうゆうのかわからないけど。昨夜、点滴と呼吸器が外れた状態で見つかったらしいの。そこから川岸君はずっと意識不明らしくて…」【聞いててゾッとしたよ】

「意識不明?!」

「うん。連絡を受けた夏乃はすぐに病院に駆けつけたって聞いた。」

「よくそんな詳しいことまで聞けたね。ちなみに誰から聞いたの?」

「もしかして、聞いた子を疑ってるの? それならたとえ志乃でも教えられない。」【ごめん】

「実咲、疑ってるわけじゃない。だけど、こうゆうときは情報がすべてだ。その情報がいかに正しいか、どこから出てきたものなのかを判断しないといけない。」

「疑ってるわけじゃ…ないんだよね?」【疑ってないの?】

「ああ、多少疑ったけど、実咲が庇うくらいなら信用できる人なんだろ?」

「そっか。うん。聞いたのはC組の綾瀬七菜って子。夏乃とは中学からの知り合いらしいんだけど、昨日夜にL〇NEで聞いたって言ってた。夏乃との友達歴なら私の方が長いけどね。」【嫌味じゃないよ?】}

「C組の綾瀬か。話したことはないな。わかった、ありがと。」

「うん。あとね、七菜から聞いて帰ってる途中に夏乃に連絡したら…」

 このタイミングでテーブルの上に置いてあった携帯が鳴る。

「あ、出ていいよ。急ぎかもしれないし。」【タイミング悪いなぁ】

「ごめん、ありがと。」

 携帯に表示されている名前は如月陽太。珍しいな。意外な相手に少し戸惑いつつも俺は電話に出る。

「もしもし?」

「志乃っ、聞いてくれ。川岸が意識不明なんだ。」

電話から聞こえてくる声は荒い。かなり焦っていて落ち着きがない声だ。

「落ち着け、陽太。なにがあった?」

「これが落ち着いていられるかよ。川岸が意識不明なんだ。」

「ああ、さっき俺も聞いたよ。」

「そっか。詳しいことは聞いたか?」

 落ち着けといったが一向にそうならない様子から緊急事態を思わせる。

「いや、あんまり詳しくは聞いてないな。」

「そっか。じゃあ聞いてくれ。医者から聞いた話なんだけどな、昨夜川岸は呼吸器と点滴が外れた状態で見つかったんだ。」

「ああ、それで?」

「おかしいと思わないか? 普通事故でも二つとも同時に外れることはあり得ない。医者もそういってた。」

「! つまり川岸の点滴と呼吸器は人為的に外されたのか!?」



随時加筆修正を行っております。ご了承ください。




【お知らせ】


来年一月より水曜日と土曜日に更新を行うことにしました。


より一層感情の境界線を応援していただけると幸いです。

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