こいつ……しゃべるぞ!?
周りを確認すると、台地と化した島のステージのあちこちに太い棒状のモノが波打ちながら顔を覗かせていて、すぐ足元には一際太いそれが上に向かってそそり立っていた。
どうやらコイツが「芯」の正体らしい。
――よかった。 躓いてホントよかったー! もし躓いてなかったら、いろいろアブナイところだったぜ。
( !)
ゴーレムの足元――というかお尻の真下――に位置するそれを見て、俺が真っ先に思ったのはコレだった。 。 まあ、察してくれ。
そうして胸をなでおろしながら、改めてそれを観察する。
――根っこ?
わーい、島の中から根っこが出てきた。 。
いやいや、現実逃避してる場合じゃない。 見たところ周囲の根っこには千切れたり傷ついたりしたものはなさそうなので、ゴーレムの材料として根っこが取り込まれてるという心配はなさそうだ。
だがそうなると、この根っこは下から伸びてきていることになる。 実際、中央の太い根っこは地面から12~13メートルぐらい上に突き出ているが、先へいくほど細くなっていて、先端は尖っている。
――なんだろう?
俺はその根っこを見た時から奇妙な不安と微かな畏怖、なのにそれと同時に不思議な温かさと懐かしさを覚えていた。 そしてそれは元人間としての俺ではなく、迷宮としての星胚の本能的なもののようなのだ。
そうこう考えながら眺めていたら、太い根っこから小さな光が飛び出してきた。 何かが光を放っているというのではなく、光そのものが集まっているような感じで、強く輝いて見えるのだが不思議と眩しさは感じなかった。
光はしばしボーゼンとその場に留まっていたが、やがて心配そうに太い根っこの周りを何回か回った後、おもむろに上昇してきて――前に出していたゴーレムの腕にぶつかった。
光はその場でプルプルと震えている。 とても痛そうだ。
やがて立ち直った光は恨めしそうに上を見上げて――そのままポトンと地面に落ちた。
「ねえ、アレ……」
「キリンにも見えてるか。 俺だけじゃなくてよかったよ」
「なんとなく光の気分みたいなのが分かるんだけど……」
ここまでの意思が伝わってくる以上、この光が何らかの知生体なのは間違いないようだ。 実体がないように見えてあちこちぶつかったりしてるので、俺の意識体とはまた違った存在なのかも知れない。
光は腰を抜かしたようにその場を動けないでいる。
〈すみません。 驚かせるつもりはなかったんですが……〉
見かねて俺は声をかけた。
俺が声をかけた途端、光は文字通り飛びあがった。 そしてそのまま一目散に元いた根っこに向かい――そのまま吸い込まれるように消えてしまったのだ。
――怖がらせちゃったかな……
そう思いつつ、ここまでは俺もある程度予想はしていたんだが……
光が消えてから少しして、今度は根っこが動き出した――といっても最初は分からなかったのだが……
ふと違和感を感じて辺りを見渡したら、あちこちで地面をのたうっていた根っこの数が減っているのに気付いたのだ。
見ると残っていた根っこ(小)も一つまた一つと音もなく地面に潜っていく。 しかも根っこが潜った後には、穴どころか割れ目の一つも残さずにだ。
そうするうちに、中央の太い根っこがいよいよ動き出した。
――あ……待って。
俺は思わず――訳の分からない焦りに駆られて――今まさに潜ろうとしている根っこの先っぽを、ゴーレムの手で掴んだ。
咄嗟の事に自分でも驚いたのだが、それだけでは済まなかった。
〈〈〈ぎゃー! 何をするのじゃー! 離すのじゃ……そ、そんなトコロを掴むでない……!〉〉〉
しゃ、喋った!? 根っこはらしからぬ動きでバタバタと暴れている。
〈〈〈くぅ……なぜ儂が掴めるのじゃ……は、離すのじゃ……〉〉〉
逃げられないように掴んでいるだけなのだが、なぜかだんだんと抵抗が弱まっていく。
――このまま説得できるかな?
そう考えていたら、先ほどの光が、今度は眩い輝きを放ちながら飛び出してきた。
俺は一瞬――マップモードに切り替えるまで――視界を奪われ、ゴーレムも反射的に手を放してしまう。 根っこはその隙に地面に潜って逃げてしまった――。
と思ったら、遠くの方――手の届かない所――で頭?を出した。 こちらを牽制?していた光も、スーッとそちらへ去っていく。
――? 睨まれてる?
〈〈〈お、覚えておくのじゃ! この……スケベー!!〉〉〉
――!!
何とも気まずい捨て台詞を残し、根っこは光と共に今度こそ地中に消えていった。
「…………」
――キリンさん? なんでそこで俺を睨むんです?
「……スケベ?」
「控訴します!」
 ̄l ̄
 ̄l ̄
「光戻ってくるかしら?」
「何とも言えないな。 俺はそれよりも根っこの方が気になるよ」
すっかり暗くなった外を眺めながら、昼間の出来事を思い返す。 眼下には整地したように真っ平になった地面がある。
わいわいと夕食を摂り、きゃいきゃいとお風呂も済ませ、お子様組は既におやすみだ。
「しーちゃんは何て?」
―〈状況からするとですね、あの“根っこ”はいーくんの考えてる通りのモノだと思うですが、気になるのは今のボクと同じで、出現するまでその存在をいーくんが感じられなかった事と、地上でも存在できたって事ですぅ〉―
しーちゃんはそう言っていた。
「あれって、光と根っこは別モノって事よね?」
「ああ。 光の方は言葉を発しないようだったからな」
「で、根っこの方はしゃべると……のじゃー?」
「のじゃー」
…………
「そんでもって、イクルさんはスケベと……」
「不当判決だ! 控訴します!」
「まあ、それはおいといて――」
――おいとかないで下さい……
「根っこに性別があるかどうかはともかく、私もアレは女性と認識したわ」
「ついでに言うと、あの根っこを見てると漠然とした不安や畏怖、それでいて温もりや懐かしさみたいなのを感じて、複雑な気分になるんだが……」
「うーん……なんだろ……? ああ! あれね、お母さんを前にした小さい子供の心境ってやつ?」
――!!
「それだ!――ってちょっと待て。 アレが俺の母ちゃ……母親だってのか?」
――マズったー。 こらそこ、ニマニマ笑うんじゃない!
今回はここまでです。
物語の「ノリ」を取り戻すまでノロノロが続くと思います。
m(__)m




