のじゃーの逆襲?
――俺の母親は樹の根っこなのか?
「その可能性はあるんじゃない? 単に動くだけなら樹木系の魔物なんかの可能性もあったけど、痕跡を残さずに地中を移動するなんて、イクルさんじゃないなら同じ迷宮系統のご同類、しかも知性を獲得するぐらい長い年月を経た存在って可能性が高いんじゃないかしら?」
キリンの言うとおりだ。
「だとすると、根っこから出てくるあの光は、根っこの迷宮主的な存在って可能性もあるわけか……」
「ん……」
――アレが星胚――生まれた時は星種かも知れんが――としての俺の母親だとして、本来視認できないはずの外観が木の根状になってることと、地上でも迷宮としての振る舞いが可能なこととは無関係じゃないだろうし、それにはあの光も関わっていると考えるのが自然だろう。
うまくすれば、俺もゴーレムに頼らずに地上で活動できるように――
「…………」
反応が無いと思ったら、キリンがこっくりこっくり船を漕いでいる。
「どうした? おねむか?」
「んぁ? ごめんなさい。 ……肉体年齢が幼いとどうしてもね。 夜行性とはいっても起き続けるのは……ふぁ」
「遅くまで付き合わせてスマンな。 しっかり寝ないと大きくなれないぞ」
そう言うと、頬を膨らませたキリンにジトられる。
「むぅ。 別の意味で寝てくれないとダメですよーだ」
――う、やぶヘビだったかな…… まあ、おかげで色々整理できたことだし、ここはひとつ――。
「きゃっ! え? ちょっと!?」
ふらふらしてるキリンを抱きかかえて寝室の入り口まで連れていく。
「こんなことされたら余計に眠れなくなるじゃない! 」
「こんなことでも足しになるかも知れないしな」
「どうせなら、 むー……」
唇を尖らせてせまるキリン。
――顔つきは幼いのにやたら色気があるのはやはり種族特性か――って考えてること自体、野暮ってもんだよな。
「ホントに効果があったらめっけもんだしな……」
とか言ってみる。
「え!? ちょっ!」
慌てて目を開けるキリン。 そして俺の表情に気付くと再び頬を膨らませてジトる。
「こんな朴念仁に気を遣わせてすまんな。 甘えてばかりで、色々と無理させちゃって」
「ホント、そういうとこズルいわよ、おにーちゃん」
そう言ってキリンは俺の腕からするりと抜け出す――。
行きがけに頬にチョンと感触があった。
「これくらいはいいでしょ? おやすみ」
そういってフワフワと寝室へ向かう。
――耳が真っ赤だぞ……
そう思いつつ、無いはずの心臓が脈打つ気がした。
 ̄l ̄
 ̄l ̄
――うーん、油断したな。
昨日の出来事を反芻していたんだが、外が明るくなる頃、気が付けばゴーレムが根っこに絡め取られていた。
向こうが気配を感知させず、音もなく移動出来る存在だということを失念していた。
並列意識は何してたんだと思ったが、アルバム作りに忙しかったようだ。
ガワを作ったことで、ただの?迷宮だった時のように入口だけ警戒すればいいってものじゃないことを痛感した。
今後に活かすためにも、この場は切り抜けなければいけない。
――それにしては……
動きがない。
引き倒そうとか、振り回そうとか(物理的に可能かどうかはおいといて)いうのではなく、この場に捕まえておくことが目的のようだ。
攻撃のそぶりがあれば、このゴーレムの全力をテストする意味でもひと暴れするつもりだし、いよいよとなったら、気は進まないがクルにお願いして「えいっ」してもらおう。
とりあえず、何があるか分からないので、皆を起こしてリビングに集めている。 不安を煽らないように外の映像は切っているが、デザート付き朝食で誤魔化せない、勘のいい幼女が約1名……
「何かあったの?」
キリンが傍に寄ってきて小声で訊いてくる。
「昨日の“根っこ”に捕まってる」
「ちょ! 大変じゃない…… で?」
さすが。
俺の態度を見て察したのか、騒ぐことなく続きを促してくる。
「今のとこ動きがないから様子を見てる」
「ゴーレムは動けそうなの?」
「動きで気取られると思って試してないが、たぶんね」
根拠としては、ゴーレムの姿勢がまったく動いていないということだ。
外から根っこに雁字搦めにされているが、腕と胴体の隙間なんかはそのまま維持されている。
それと……
「コレ見てくれ」
俺はキリンの前に手をかざし、タブレット状に変形させて外の様子を映し出す。
「…………」
視線が痛い。
「つっこみは後で聞くから。 腕と根っこの間を見てくれ」
「?……隙間が空いてるわね」
「その割に、根っこの方、少しへこんでないか?」
「そうね。 腕の形に添ってへこんでるように見えるわ」
「つまり、あちらさんはそれなりの力で拘束してるんだろうけど、なんらかの要因――たぶんお互いの迷宮要素だろう――で直接干渉出来ない状態なんじゃないかと思う。
――直接干渉できるなら、今頃ゴーレムの中に入りこまれているはずだしな。
「お?」
一番太い根っこから昨日の光が飛び出してきた。
――あれが仮に迷宮主だとしたら、魔の山の迷宮に近づいた時の俺みたいに動けなくなると思うんだが……
〈〈〈あー、そこの傀儡巨人よ、聞くのじゃー! おぬしは儂の大切なモノを取り込んでおるのじゃー。 手荒な事はしとうない。 今すぐ返すのじゃー〉〉〉
程なくして根っこの声が響く。
力ずくって訳でもなく、何らかの交渉の意思はあるようだ。
『わー! おとーさん、なんか声が聞こえるよ?』
「ととさま、ぷるにももきこえたー」
―〈いーくん、今のは……?〉―
〈あ、しーちゃんも聞いてたんだ〉
―〈ちょうどシーシーから呼び出されて繋いだとこだったですぅ〉―
〈詳しい事は後で説明するから、今はこのまま聞いててほしい〉
―〈いっぱいおしゃべりしたいですが、またヘンなこと起きてるですぅ?〉―
〈また、とか言わないで……〉
――とりあえず、返事はしないとな。
〈えっと……はじめまして、でしょうか? このゴーレムの創造主、イクルと申します〉
〈〈〈ほほー? 意外と礼儀正しい奴なのじゃー〉〉〉
相手のトーンが少し下がる。 取り敢えず少しずつでも警戒を解いていこう。
〈あなたは、この根っこのようなものの意思だとお見受けしましたが、間違いないでしょうか?〉
〈〈〈根っこ……ああ、見てくれはアレの影響を受けておるのか。 特に意識したわけではないが、間違ってはおらんの〉〉〉
――アレって言われたからかな?
ふわふわと漂っていた光が、ペシペシと根っこに体当たりしている。 なんかカワイイ。
〈〈〈こりゃ、真面目な話をしておるのじゃー。 やめるのじゃー〉〉〉
〈あー、昨晩は乱暴なことをしてすみませんでした。 どうしてもあなたとお話ししないといけない気がしたもので……〉
〈〈〈ん、んん……あれは……まあ、よい。 いきなりでわしも驚いたしの……ただのう……〉〉〉
〈――ただ?〉
〈〈〈い、言わせるでない! さ、先っぽは敏感なのじゃー……〉〉〉
…………
「おにーちゃんのスケベー」
―〈いーくぅんん? ナニしたですぅ?〉―
キャラ設定迷走中




