背中
ちょっと短めかな。
「しーちゃん?」
「なんですぅ?」
「そろそろ……上がりません?」
「もうちょっと……」
隣同士、身体を寄せ合ってから、かれこれ10分以上経とうとしている。
「かなり顔も赤くなってるし、しーちゃん上せちゃってるよそれ」
「そんな事ないですぅ。 顔が赤いのはいーくんの所為ですぅ」
――それも間違いじゃないんだろうけど……
「あんまり遅いとみんなが心配して押しかけて来そうなんだけど?」
「そ、それは困りますぅ! 」
ざばっ
「あ、急に立ち上がったりしたら――」
「……きゅぅ」
「言わんこっちゃない」
フラフラと倒れ掛かるしーちゃんを慌てて支える。
「ふにゃ~、ぐるぐる回ってるですぅ」
咄嗟に支えたけど、今度はダイレクトに胸に触る形になってしまう。
「ああ――もう! ごめん!」
「ふえ?」
俺はしーちゃんを横抱きにして脱衣場に向かう――軽!
「え? あ……あわわわ」
状況に気付いたのか、両手で顔を覆ってしまうしーちゃん。
脱衣場に戻り、ローソファをベッド代わりにしてしーちゃんを横たえると、しーちゃんのバスタオルを引っ張り出して上から掛ける。
 ̄l ̄
「これ、お水」
「ふぁい……」
少し楽になったのか、半身を起こしたしーちゃん――バスタオルを巻き付けただけだが――に水を出して渡す。
両手で受け取るも、上目使いにこちらをチラチラと見ては、気の毒なほど身体を小さくしている。
「ちゃんと飲んでね」
無言で頷くと、コクコクと水を飲むしーちゃん。
「イベント盛りだくさんで、心身ともに上せちゃったみたいね」
「しー姉、大丈夫ですかー?」
――お。
振り返ると、キリンとしーしーちゃんが居た。 文字通り飛んで来たのだろう。
――なるほど、しーしーちゃん通して状況は筒抜けかあ……
「取り敢えず、おにーちゃんは前を隠しなさいよね」
――うぉっと!
俺は頭の上のタオルを取り、即座に腰に巻く。
『おとーさーん、しーちゃんはー?』
((しーおねーちゃん、いきてるー?))
「ああ、大丈夫。 ちょっと上せただけだよ」
クルがぷーちゃんを肩車してやって来た。 ぷーちゃんは髪をクルに巻きつけて、どうやらクルの胸を押さえていたようだ。
揺れないように頑張ったんだろうけど、むしろ膨らみが強調されてます……
「……心配掛けてごめんなさいですぅ……」
「そんなの気にしなくてもいいわよ」
「みんなこのままお風呂にするか?」
「でも、セットを取りに戻らないと……」
「用意して部屋に置いてあるんだろ? ちょっと待ってろ」
俺は、リビングに置いてある各自のお風呂セットを取り込み、こっちで再構成して取り出す。
「随分と便利になったわねぇ」
「どういたしまして。 俺はしーちゃんを診てるから、みんなで入って来なよ」
「一緒にって雰囲気じゃないわね。 分かったわ」
「うぅ……」
『しーちゃん、なかないでー』
「ほら、クルちゃんも心配するから、そんなに気にしないでよ」
「はいぃ……」
 ̄l ̄
「一番ですよー!」
光と共に一瞬で服を消し飛ばしたしーしーちゃんが風呂場に飛び込んでいく。
『しーしーちゃんズルいー』
脱いだ服をきちんとたたんで、クルが続く。
((キリンおねーちゃん、ありがとー))
「はい。 じゃあ行きましょう」
((はーい))
ようやく服を脱ぎ終わったぷーちゃんと、それを手伝ってたキリンが最後に連れ立って風呂場へ向かった。
…………
――みんな普通に服を脱いで全裸になっていくんだけど…… 確かにココは女性用の脱衣場だが、俺の存在忘れられてるのかな?
約束通り、脱いだ後はタオルで隠してはくれるんだが、何か違うような気がする。
「ボクはもう大丈夫ですぅ。 いーくんも一緒に入ってあげるですぅ」
「そういう訳にもいかないよ。 それに――」
「それに?」
「みんなが居ない内に、ちょっと確認しておきたい事がね……」
「ボクに関係する事ですぅ?」
不思議そうな顔をするしーちゃん。 「取り敢えず、コレ着てなさい」ってキリンに渡された白シャツ1枚を羽織ってるんだけど、キリンのやつ、ワザとだろ! 。
「しーちゃん自身が知ってる事かどうか分からないんだけど……」
「なんですぅ?」
「背中……見せて欲しいんだ」
 ̄l ̄
――シュル。
「これでいいですぅ?」
「あ……ああ、充分です」
背中を向け、白シャツを肩からズラして肌けるしーちゃん。 濡れた癖っ毛から覗くうなじが妙になまめかしく感じる。
ホクロひとつ無い真っ白な背中――の中央、ウェストの辺りに俺の目が留まる。
F-R-02-C
まるで製品の型番か識別番号のような――馴染みのある英数字にしか見えない――記号がそこにあった。




