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しーちゃんの……

1話で収まらなかった。


「じゃあ、いってくる」

「『((ごゆっくりー))』」

「しー姉、がんばですよー」

「はいですぅ……」


 ――しーちゃん、そんな俯いて付いて来られると、俺が連行(ドナドナ)してるみたいに見えませんかね?


「しーちゃん?」

「は、はいぃ?」

「やっぱ緊張するよね?」

「…………」


 歩きながら声を掛けるも、やっぱりぎこちない。


「女神様にこう言うのもなんだけど――」

「?」

「女の子と一緒にお風呂に入るっていうドキドキを初めて味わってる気がするんだよね」

「え!? もう何回もみんなと一緒に入ってるですぅ。 今更ボクなんかでどうしてですぅ?」

 ――やっぱ信じてもらえないよなあ。


「いや、他の子達ってこう開けっ広げ――キリンなんかは無理してるかも知れないけど――でさあ、そうやって恥じらってくれてるのが、凄く新鮮なんだよね」

「……この後女子会が控えてるボクにそんな事言っちゃっていいんですぅ?」

 ――ぎく。


「い、いや、それならそれで、皆が恥じらってくれるなら歓迎だし……」

「逆にボクが開けっ広げになる可能性は考えないですぅ?」

「う~ん、それはそれで正直に言うと嬉しかったり……」

「ぶっちゃけ過ぎですぅ!」


「ま、そんな調子でお風呂も満喫すればいいんじゃないかな?」

「!」

「気楽に背中を流してもらおうってぐらいでいてくれると、俺もやりやすいしな」

「いーくんはズルいですぅ」

「何が?」

「ドキドキしてるように見えないですぅ」


 ――ぶっちゃけると心臓(ドキドキ)無いもんなあ……


「物理的にドキドキ出来ないからアレだけど、けっこう舞い上がってるんだけどなあ?」

「そうは見えないですぅ。 ボクなんてほら――」

「!!」


 ふいにしーちゃんが俺の手を取り、自分の胸に当てる。

 ――今日はちゃんとブラ着けてるんだな……ってそうじゃないよ!

 文字通り、早鐘の様な鼓動が手に伝わって来る。


「た、確かに……すっごいドキドキしてる……」

「きっとみんなも同じくらいドキドキしてたと思うですぅ」

「そ、そうかな……」


 思えばクルの胸に何度も触れた事はあったけど、こうして手のひらで触るのは初めてで……

 押し付けられた手に返ってくる弾力とか、体温とか……


「どうしたですぅ? 急にギクシャクしてるですぅ」

「いや、手が……その……胸に……」

「…………」


 しーちゃんが俺の手を離し、俺はしーちゃんの胸から手を離す。


「あはは……大胆な事しちゃったですぅ」

「初めて胸を触った女の子が神様とか、光栄と言っていいのかな」

「ボクもその……初めてだったですぅ」


 ――よし。

 今度は俺からしーちゃんの手を取って繋ぐ。


「え? わ!」

「ここまでやっちゃうと、もう怖いもの無しだよな?」

「は、はいですぅ」

「いくぞ!」


 じっとしてると手の感触を思い出しそうになりそうで、しーちゃんの手を引いてなんとなく足早になりながら風呂場に向かった。


     ̄l ̄(__∞__)


 2人揃ってだと入りづらいだろうからと、俺は一足先に入って湯船の真ん中の岩にもたれて待っている。


 ――がらら。

 脱衣場からの扉が開き、湯気の向こうにシルエットが見える。


「お待たせしたですぅ」

 やや俯き加減で、おそるおそるといった風にゆっくりと入ってくるしーちゃん。 タオルで心細そうに前を隠しながら歩いてくる姿に、妙な新鮮さを感じていると――、


「いーくん、約束なのでよーっく見るですぅ!」

 約束? と思いつつしーちゃんを見ると、言うが早いかタオルを取り去ってその裸身を晒すと、その場でクルッと回って見せた。

 あっけに取られる俺に向き直ると、そそくさとタオルで再び前を隠して上目づかいにこっちを見る。


「……貧相ですが、これがボクの全てですぅ」

 ――ああ! 神域(向こう)で言ってたアレか。


「いえいえ、貧相だなんてとんでもない! 眼福でございます。 女神様」

「ホントですぅ?」

「眼に焼き付いてるよ」

 ――しーちゃん、昨日のお土産(ちゅ♥)の事覚えてないのかな~?


 【転写】……眼で見た映像を記録するスキル。 記録した映像は「知ノ深淵」の拡張領域に保存・蓄積される。 記憶の想起と共に転写した映像を再生できる。


 神域におじゃまして戻った時に貰った称号により、拡張された「知ノ深淵」に付随して取得した恩恵(スキル)だ。

 並列意識さんが大喜びしてますよ? 俺? 俺はその映像に気になるところがあって、そっちに気を取られてる。


「うう、そう言われると嬉しいような、早く忘れて欲しいような……」

 ――それを忘れるなんてとんでもない!


「いつまでもそうやって立っててもお風呂は楽しめないと思うんだけど?」

「はいですぅ。 そっちへ行くですぅ」


 ささっと掛け湯を済ませると、足でお湯を探るようにゆっくりと入って来る。


「はわ~。 思ってたよりも熱いですぅ」

「だったらもうちょっと左に移動するといいよ。 あっちで水音立ててる所に近いほど熱くなるから」

「ありがとですぅ」


 取り敢えずしーちゃんが入って来るまでは横を見てる。 並列意識(おまえ)も視るんじゃない!

 ばしゃばしゃと岩の傍まで来たしーちゃんが腰を下ろす気配がする。


「~~~~~にゅぅううぅ」

 横手からどう反応していいか困るような微妙な声が上がる。 思ったより近くに来たらしい。


「やっぱり人伝手(シー・シー経由)の感覚とは違うですぅ」

「しーちゃんもやっぱりそう思うよな。 自分の身体で味わうのが一番だよ」

「はふ~。 気持ちいいですぅぅ」


「適当にあったまったら、洗い場の方に行ってくれな。 どうせなら頭も洗っちゃおう!」

「ぜひぜひ、お願いするですぅ」

「!」


 しーちゃんが身を寄せてくる。 心中であわあわしてるが、身体の方はいたって平静だ。

 普通の身体だったら間違いなく反応してるだろう。


「意外と積極的なんだな」

「あはは…… ここまできたら吹っ切れちゃいますよぅ」

「そういうもんかね?」

「はいですぅ」


     ̄l ̄(__∞__)


(しーちゃんの) (ヒロイン力を) (舐めてたわね)……」

「しー姉、そのちょーしですよー」

『う~』

 ((つぎは、だっこして、もらうのー))


 逐次しーしーちゃんによって実況されていることに気付く余裕の無い2人であった。


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