華麗なる戦場
「きゃ! え? ちょっと!?」
「うは~!」
いきなりの裸エプロン出現に面食らってるキリン。 しーしーちゃんはオヤジか!
クルは取り敢えずそんな格好でクルクル回るのを止めようね。
――でも、まあ、
「えらいぞクル! ちゃんと着替えられてるじゃないか」
『えへへー。 あたし、がんばったもん!』
「よしよし」
手を上げるとたーっと駆け寄って頭を差しだしてくるので、撫でてやる。 ……
状況については思うところがあるけど、一生懸命練習して結果を出したのだ。 大人の都合でその成果を「悪い事」にしちゃいけない。
「がんばったついでに、もう一回さっきの服に戻せるかい?」
『うん! ん~!』
――ぽん!
一瞬にしてさっきのワンピースを身に纏い、少し遅れて――、
――ぱちん!
と音がなる。
手にはさっきのエプロンを持っている。 本当に自在に出し入れ出来るようになったようだ。
『えへへー。 どお?』
「よくできました」
『わーい!』
――さて、
「さっきの格好はおかーさんのを見て、真似したんだね?」
『うん。 ときどきこっそりきて、うれしそーにしてたのー』
「そっか。 クルのおかーさんはいつも裸だったから、あんな格好になっちゃったけど、俺やキリンを見てごらん?」
『おとーさんと、おねーちゃん?』
言われてクルが、俺とキリンを交互に見る。 2人ともエプロンを着けた状態だ。
『あれー?』
「分かったかい? 服を着てるときは、服の上から着けるものなんだよ」
『そっかー』
「……服を着てない時は、はだエプで構わないのね?」
――当たり前だろ? 男の夢なんだから! クルが「およめさん」になった時に、旦那の為に道は残しておくべきだと思わないか?
「ということでクル、エプロンを着けようか」
『はーい!』
――ふぅ。
頑張った俺も誰か褒めて下さい……
 ̄l ̄
「さて、形は整った訳だけど、分担はどうするんだ?」
「そうね……」
ざっと戦力を見渡すキリン。 といっても、俺、キリン、クルの実質3人だ。 味見係を宣言してるしーしーちゃんとぷーちゃんには、食卓の準備も任せた。
材料の皮むき、カット ― キリン、クル
加熱、煮込み ――――― 俺、クル
味付け ―――――――― キリン、クル(俺、ぷる、シー・シー)
クルが何でもやりたがるので、こんな分担になった。 ライスと付け合わせについては、時間が掛かりそうということで今回は【メニュー】に頼ることにする。
「で、材料なんだけど――」
キリンが「聖女」だった時に、異空間収納に放り込まれた大量の食材の一部が、まだ残っていたそうだ。 自らの進化と迷宮という環境のお陰でMPの負担が気にならなくなっていたので、今日まで忘れていたようだ。
――そういや、この世界の食事がどんなのかさえ知らなかったな。
キリンにしても正直思い出したくない過去なんだろうが、逆に消費してしまうことで吹っ切ろうとしてるのかも知れない。
とにかく、この世界の食材を使って作ってみようということになった。 一応事前にカットして中身を確認したりはしているようだ。 。
 ̄l ̄
『おねーちゃん、すごーい!』
「どう? 出来そう?」
『やってみるー!』
じゃがいもモドキの皮をクルクルと剥いていくキリンの手つきを見て、見よう見まねで包丁を扱うクル。
いきなり持たせて大丈夫かと思うだろうが、よく考えたら普通の包丁でクルに傷が付けられる筈もなく、習うより慣れよの精神で、やらせてみることになった。
むしろ俺は、素材を切る時にまな板ごと調理台まで両断しないかどうか、ハラハラしてたぐらいだ。
実際やらせてみると、物覚えの良さを発揮して、ほとんど教えることもなく器用に包丁を使いこなしていく。
お肉の塊が出てきた時に、そのままかぶり付きたそうに、こっちと交互に見てくるのにちょっと困ったぐらいだ。
「もうちょっとお姉ちゃんらしいところを見せたかったわね」
「それは贅沢な悩みだろう」
――次は俺の番だな。
鍋を火――魔石を使った野外用の調理器(これもキリンの収納から)――に架け、肉の脂を引いて具材に火を通していく。
鍋は一つしかないので、最初は見ているだけのクルに、焦げ付かないようにかき混ぜながら炒めるのと、火が通ったのを確認して、水を足すまでを実際にやらせてみる。
強くかき混ぜ過ぎて、具が飛び出さないか心配したりもしたが、こちらもそつなくこなしていく。
――なんかこう、集中力が増したというか、例の服を出し入れする訓練が、良いように作用したのかも知れないな。
最後に味付けだが、これは各人の好みがあるかも知れないということで、キリンが下味を拵えたあと、各自でスパイスを加えて調整し、みんなの口に合いそうなのを選ぶことになり――。
結果、意外なことに満場一致でぷーちゃんが優勝を勝ち取った。
((わーい! ごしゅじんのおやくにたてたよー!))
「いやホント、絶妙な匙加減だよ。 ぷーちゃんの舌は確かだな」
((えへー))
そんなこんなで、カレーが完成したのだった。
お味の方はというと――、
「これ、しー姉が直接食べたら、またまた世界が止まっちゃうかもですよー」
――この一言で分かるように、皆が大満足する絶品となった事は言うまでもないだろう。
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―〈いーくんが……いーくんが来るですぅ……はうぅ〉―
その頃、引き合いに出された当人は、テンパっててそれどころじゃなかったらしい。
飯テロは出来そうにありません。




