がんばった成果が表れたようです
よくよく考えたら、入口を針穴ぐらいにしちゃえば誰も――というか鼠一匹――入って来れない上に、ここに迷宮があること自体を隠せる事に思い至ってしまった。
――まあ、要相談ってことで、予定通りに改装するか。
まず、通路制限が無くなったので、縦穴を滑らかにし、ワイヤートラップならぬ迷宮膜繊維製の糸を全面に張り巡らせる。 中央を通路として使用する時は都度、糸の方を動かすのだ。
次に上層として作った島の頂上までの通路だが、開口部を閉じて頂上部を復元する。 通路はそのまま残して、頂上のすぐ内側に一旦待機出来る空間を作り、任意の方向に口を開けられるようにした。
何気に上から頭、首、胴って風に思えなくもない。 最下層はさしずめ、とぐろを巻いた尻尾というところだろうか。 これで入り口からの通路を迷路状にして拡げれば、翼っぽくなるかな? 。
――お風呂が何にあたるのか、なんて事は考えないように!
迷宮の龍が口を開けると、中から白銀の龍が飛び出す具合になるのか……なんか、眼が疼いたり、右手が昂ぶったりしそうな気分になってくるな――ってそれだと戻る時は俺がクルを呑み込むってことになるのか。
((クルおねーちゃんは、ごしゅじんが、おいしくいただきましたー?))
「これこれ」
ついでというか、実際に俺が動けるかどうか試してみたのだが――。
―〈称号『彷徨エル迷宮』を獲得――スキル【龍覚】より【龍脈感知】が派生しました〉―
―〈条件を満たしました。 神域へのアクセス権限Ⅳ(限定)を獲得しました〉―
――そういや、俺が動けないからって理由で却下されてたんだっけな。
検証なんかは後にして、俺が動けるってことは神様も保証してくれたようだ。
 ̄l ̄
 ̄l ̄
「おにーちゃん……聞こえてる?」
――お?
〈キリンか? 聞こえてるぞ。 準備が出来たみたいだな〉
「あ、よかった。 うん。 準備出来たから集合ってことでよろしくね」
〈りょーかい〉
――お次はっと。
〈クル! 聞こえるか?〉
『あ! おとーさんだー! きこえるよー!』
〈キリンの準備が出来たそうだ。 キッチンに集合してくれ。 しーしーちゃんも一緒にな〉
『はーい! すぐいくー』
「あ! ちょっと! 待つですよー! そんな格好で行ったら練習した意味がなくなっちゃうですよー!」
――また裸で来たりしないだろうな?
気になるが、あまりキリンを待たせるのも悪いので、しーしーちゃんに任せる事にして、俺もリビングに移動する。
俺とぷーちゃん――もちろん肩の上だ――がリビングに着いて間もなく、
『あ、おとーさんだー』
〈いく兄の方が早かったですよー〉
「まあ、こっちのが近かったからな」
クルとしーしーちゃんも入って来た――と思ったら、クルはそのまま真っ直ぐ俺の方へ走って来る。 右手に何やら白い布を握りしめてるんですが……
『えへへー』
「えへへーって、なんでパンツ穿いてないんだ?」
「おとーさんにこれだけは見せるんだーって譲らないんですよー」
「さっそくリベンジってわけか」
『ん!』
クルが気合を込める。 手の中のパンツが一瞬光ったかと思うとそのまま弾け――、
――ぱちん!
同時にそんな音が聞こえた。 クルはどこか誇らしげに「むふー」って顔をしている。
「どうやら成功したみたいだな」
『えへへー。 ほらー!』
そう言ってクルはワンピースの裾を捲り上げた。
――うん。 穿いている。
「がんばったな、クル! よくやったぞ」
『えへへー』
クルの頭を撫でてやると、相変わらず気持ちよさそうにぐりぐりと押し付けてくる。
――ただちょっと、絵面がなあ……
「クル、もう分かったから裾を降ろして――」
「ウチのおにーちゃんが女の子にパンツ見せてもらって喜んでる変態なんだけど、どうしよう? 通報する?」
――くっ! 少し遅かったか。
「状況の想像くらいつくだろ? 頼むからおまわりさんは召喚しないでくれよ?」
「はいはい、で、さすがにそのまま手伝うつもりじゃないでしょうね?」
「ああ、もちろん」
俺は肩に乗ってるぷーちゃんを持ち上げ、降ろしてやる。
((あーん! うしろがみをひかれるおもいー))
とか言いつつ本当にぷーちゃんが絡めてくる髪を適当に「ぺいっ」する。 便利そうだな――などと思ったが、その気になれば俺にも出来そうだと気付いた。 今度試してみよう。
「で、メニューは何にするんだ?」
「まあ定番よ。 みんなでわいわい作るならカレーじゃないかしら?」
『かれー?』
「こないだ食べたまんじゅうの中にちょっとピリッと辛いやつがあっただろ?」
『うん! おいしかったー!』
「あの中身の本格的なやつだよ」
『わかったー!』
「さすがにルーからとか言わないよな?」
―〈呼んだですぅ?〉―
――そういえばシース・ルーさんだったな、この女神様。
〈残念ながらしーちゃんの事じゃないんだよ〉
―〈あう、残念ですぅ〉―
〈今晩あたり、一度そっちでお話しようかと思うんだけど、いいか?〉
―〈え? あ! は、はいですぅ。 〉―
「さすがにそこまで本格的じゃないわ。【メニュー】様々よ」
「おっけー。 で、その手に抱えてるのは?」
「折角だし、おそろいのを用意したわ」
そう言って手に持ったうちの1つを広げて見せる。
――エプロンか。
「へー、しーしーちゃんのもあるんだな」
「仲間外れはかわいそうでしょ?」
「わーい! ありがとうですよー」
「それじゃ、みんなエプロンを着けるぞ。 ん?」
クルが妙にキラキラした眼で手に持ったエプロンを見ている。
――んー、何か大事なことを忘れているような……
『んー!』
そう気合を入れ始めたクルを見て思い出した。
――ぽん!
『えへへー。 できたよー!』
――ああ、ちゃんと着替えられたみたいだね。
みんな竜王が悪いんや。




