あまえんぼ
なんとか挽回?
遅くなってすみません。
歩いて来たのはある意味予想通りというか、予想外というか、推定5~6歳の女児だった。 ちょうど、竜王の迷宮に居たまおちゃんと同じくらいだ。
俺たちに擬態した時のような色が無く、地面に着きそうなぐらい長いストレートの髪を含め、全身真っ白なままだ。
「ぷーちゃんかい?」
((あ、ごしゅじん、ぷるだよー))
人型というか、歩くことに慣れてないのだろう。 かなり危なっかしい足どりでよちよちと歩いてくる。 転ばないかとハラハラしながら見てたらやっぱりコケた。 そして床に倒れると同時にぽよ~んと撥ね返る。
――まだ人化じゃなくて擬態のままみたいだな。
そのままぽよんぽよんと転がって(?)俺の方へ来るので受け止めてやる。 腕の中にすっぽり収まったぷーちゃんがキョロキョロ周りを見回した後、俺の顔を見上げてにぱぁと笑う。
((えへー。 ごしゅじん、ないすきゃっちー?))
「おう、大丈夫か? 一体どこに――って、ああ! 本体の方に行ってたのか」
((ごしゅじんにはやくみせたくてー))
「ごめんな、入れ違いになったみたいだ」
((へーきだよー))
「ん? 前みたいにみんなでしゃべらないんだな」
((みんなでひとり、なるから、おはなしたんとー、きめたのー))
――なるほど、今までよりも力強く聴こえるし、これなら……
『わー、ぷーちゃんかわいー』
((ありがとー! クルおねーちゃん))
『おててつながなくても、ぷーちゃんのこえがきこえるー!』
((がんばったー!))
やはり、手を繋がなくても、全員に声が届くようになってるみたいだな。
「ところで、ぷーちゃん? 思ってたよりも身体が小さい気がするんだけど、分裂でもしてるのかい?」
予想外だったのはその幼さに見合った小さな身体の事であり、擬態前よりも体積が少ないと感じたのだ。
((ちがうよー。 からだのなか、つくるのたいへん。 しんぼーたんとー、むぎゅ~ってしてるのー))
――しんぼー……芯棒! ――って骨のことか。 身体の中……は【魔身】から読み取ったのかな?
「つまり、骨を固くするのにみんながいっぱい必要で、全体がちっちゃくなったのか」
((そうなのー! さすがごしゅじん! いしんでんしん?))
「じゃあ、いい事を教えてあげよう。 骨って実は中がスカスカなんだよ」
((えー!? ほんとー? しんぼーなのに?))
「ああ、網の目みたいになってるから、外からの力に強いんだよ。 同じように芯棒担当のみんなも、硬くなる必要はあるけど、ぎゅ~って詰まってる必要はないんだ」
((おー、かしこくなったー! これでもっと、なかみがつくれるー!))
――ん?
「もっと中身って……ひょっとしてその身体って――」
((しんぼーで、せーいっぱい? あとはからっぽー! えへー))
「それで、ぽよんぽよん弾んでたのか」
((おもしろかったー!! ごしゅじんの、だっこつき! しふくー!!))
「おう、どういたしまして――ん?」
クルが何か言いたそうにこっちをじーっと見ている。
「えーっと…………だっこ?」
首をぶんぶんと縦に振るクル。 ざ、残像が見えてますよ?
――そういや、クルを「よしよし」してやりたくて、手足が欲しかったんだよな。 ちっちゃいままだったら抱き上げて――ってなるんだけど……
「おいで」
その一言で、パッと顔を輝かせて駆け寄って来たクルにそのまま抱き着かれる。
「お、おい? クル?」
そのままグリグリと俺の胸に頭を押し付けてくる。
「甘えんぼですよー」
傍に飛んできたしーしーちゃんの言葉にハッとなる。 そういえば、最近構ってやれなかった。
新しい家族が次々と増えていき、色んな出来事が重なって、ろくに話もしてやれなかったような気がする。 何も言わないから気付かなかっただけで、俺に甘えたいのを我慢してたんだろう。
為りは美少女だが、中身はまだまだ子供なのだ。 外見に気圧されて、俺は無意識にスキンシップを避けていた。
「悪かったな。 さみしい思いさせちゃったか?」
ポンポンと頭を撫でる。 その頭がブンブンと横に振られる。
「そうだなあ……だっこもいいけど、おとーさんの膝に座ってみるか?」
いいの? みたいな顔でクルが見上げてくる。 俺はクルの頭をポンと一つ叩いて、一旦身体を離すとソファに腰掛ける。
膝をポンポンと叩くと、今度はゆっくりと近付いて来るクル。 俺の目の前に立って、そのまま――。
「ちょっと待った!」
『え~!?』
「いや、止めたとか、そういうのじゃないからね! 泣きそうな顔しないの。 先ずは回れ右しなさい」
『こっちむきのほうがいいのー!』
「だーめ! この向きは俺が困るの。 女の子がこっち向きで男の人に跨っちゃダメです!」
『は~い……』
――俺が窒息してしまいます。 それよりも――。
しぶしぶといった雰囲気を出しながら、その場で後ろを向くクル。 まだだ、まだダメなんだよ。
「クル、その右手に持ってるものをちゃんと穿きなさい」
『あれー?』
――あぶねー!!
リビングに居るはずのぷーちゃんが戻ってきた事に合わせて修正。




