頭を柔らかくして考えたら身体も柔らかくなった?
少し短いです。
――瞑想。
外界のあらゆる情報を絶ち、己を見つめ直す。 通常の五感が失われた今の状態は、瞑想するのにうってつけの環境といえる。
そうして自分の身体を内観してみると、以前は分からなかった「呼吸」をしていることに気付いた。「生命力」と「魔力」だ。
迷宮内にある生物の持つ「生命力」――魂の持つエネルギーのようなモノか――を取り込み、一部を蓄え――これがDPとなる――つつ体内を循環させ、「魔力」に変化したものを魔素として体外へ放出する。 本来はその放出された魔素によって迷宮が成長するのだが、大喰らいがいるので、俺の迷宮が自然に成長することはないだろう。
俺には視覚はないが、「眼」はあった。 脳裏に浮かぶ「マップ画面」だ。 これは迷宮内であればどこでも視ることが出来るのだが、その情報は光ではなく、空気中に充満する魔素を介して得ていると思われる。
この「マップ画面」だが、異物の存在を光点で示していた。 敵性によって色が変わるようだったが、ある種のフェロモンのようなものを感じ取る「鼻」としての機能も併せ持っているかも知れない。
ちなみに今いる「家族」は全員、友好を示す青や緑ではなく、なぜかピンク色をしている。
俺には聴覚や触覚はないが、迷宮を伝わる振動を感知する能力はあった。 言い換えれば迷宮に接触するモノ――空気を含め――の動きを感知出来るということで、「耳」や「皮膚」の機能だという事も出来る。
そう。 ここまで考えて分かったことだが、この迷宮自体が俺の身体の一部なのだ。 おそらくは迷宮の壁を覆っている極薄い膜のようなモノがあると思われる。
以前、【ゴーレムマスター】が使えるようになった時、真っ先に地面や壁の岩を使ってゴーレムを作ろうとしたのだが、全く変形させることが出来なかった。 これはその膜が周囲の岩を「迷宮」として固定化しているからだろう。
余程大きな力――クルの「えいっ」みたいな――でもない限り、外部から迷宮の形を変える事は出来ないだろう。
そう考えると、入り口からこの部屋まで、必ず通路で繋がっていないといけない理由も分かる。 そりゃ身体を切り離したりは出来ない筈だ。
だとすると、【メニュー】によってそのレイアウトや内装を自由に変えられる迷宮という生命体。 謂わば俺の身体を【メニュー】が操ってるようなものだ。 では、その【メニュー】の代わりに俺の意思で操れないだろうか?
「石」のように感じるこの身体も「迷宮」という役割から解き放てば自由になるのかも知れない。
――このままコアに手足が生えて動き出す……なんてことはないよな? バボちゃん?
 ̄l ̄
 ̄l ̄
――やばい。 人間に近づこうと試行錯誤するつもりで始めた「ひきこもり」だった筈が、気が付けば俺の人外度がアップしただけのような気がする。
俺は目の前の床から生えた「触手」を視ながらそう思った。 もう、うねうねにょろにょろと自由に動かせるし、伸縮自在なんだよなコレ。
俺の身体――膜――は、物質を魔素に変換して取り込んだり、物質に戻したりといった事を、リアルタイムで出来る事が分かった。 迷宮を改装した時、予想してたような物音がしなかった理由もこの為だろう。
生命活動を停止した「獲物」を取り込むのも同じ理屈となる。
よくよく考えてみたら、「DP交換」で色んな物を出す事自体、魔素の物質交換に【メニュー】が干渉する事で可能となっていたのだ。
最初は部屋の壁に小さな穴を開ける事から始め、次にその穴を奥に延ばす、途中で曲げる、入り口や中を拡げたり狭めたりする等々、数々の操作を試した結果、一通りの事が出来る感触を掴んだ。
当然穴を掘って迷宮を拡げられるなら、逆に引っ込めて狭める事も可能であり、床を細長く引っ込めてみた結果が冒頭の「触手」である。
次いで「触手」を変形させて「腕」にしてみる。【メニュー】に出来る事は俺にも出来るので色だって変えられる。 そのまま凹ませていき、ついには人型を造り上げる。「マップ画面」の3D映像をそのまま再現するだけなので、細部までバッチリだが、裸は嫌なので魔素をパパっと物質化させて服を着せた。
こいつは自由に動かせるが、俺の身体ではない。 ついでに言えば、2つ3つと数も増やせるし、並列意識に任せれば、個別に動かす事も可能である。 よもやこんな形で分身の術を披露する羽目になるとは思わなかった。
色々遊んでみたが、この「膜」を畳んでコアを包み、俺という存在を一纏めにした上で人型に変形出来れば……100%俺だけの身体になるのではないだろうか?
そこまでしなくとも、俺=「石動の迷宮」は今のまま移動が出来る事に気付いた訳だが、どうしよう?




