それぞれの午後
「この後だけど、みんなどうする?」
食休みでゴロゴロしたり、ぷーちゃんにダメにされてる面々に確認してみる。
『あたし、れんしゅーするー!』
「ボクはクルちゃんに付き合うですよー」
クルは早速、「神気の物質化」の練習に掛かるようだ。
「うまく出来るようになったら、自分で好きな服が着られるからな。 頑張るんだぞ!」
『はーい! しーしーちゃん、よろしくねー』
「はいですよー」
2人は大部屋へ向かった。
「私はちょっとひきこもるわ」
「創作活動か?」
「見て選べるくらいには数を揃えたいのよね」
「あ~、確かに。 クルにとっては自分で選んだ服ってのは無いんだな」
「私やおにーちゃんは【メニュー】でカタログっぽく選べるけど、他に人には見えないから」
――まあ、クルが俺を引っ張り込んだりして、知覚を共有してれば見えるけどな。
「そうだな」
「それに……」
「ん?」
「色んなパンツを作って、クルちゃんに選ばせようかなって」
「また、どうして?」
「日々選んでるうちにそれが当たり前になれば、奇行に走ることも減らせるんじゃない?」
「趣旨は理解したけど、奇行とか言ってやるな。 あれは幼少時の環境だぞ、たぶん」
竜王がフリーダムな人だから、三つ子の魂なんとやらで、インプリンティングされてるんだと思う。
「『えへへー』ってなってるおにーちゃんが言っても説得力ぜんぜん無いけどね」
「うぐっ!」
――もう、そんな事まで訊きだしてるのか……仲が良さそうでいいんだけど。
「まさかと思うけど、キリンまで被ったり――」
「し、してない! そんなおまじないなんてする訳ないでしょ! な、何言ってるのよ!」
――おーい! ほとんど自白してるようなもんですよー。
「……頼むぞ? あまり考えたくないんだが、客観的にこの迷宮を見るとだな――」
「女の子――それも幼女ばかり集めて、裸にひん剥いたり、パンツ脱がせて頭に被らせてる迷宮主がいるぞーってなる訳ね」
――いやホント、酷い迷宮主がいたもんだ。
「ぷーちゃんも傍目にはスライムに襲わせてるように見えるしな」
「お風呂も一緒に入れと強要されてるのかしら?」
――実際は逆だけどな。
「そういう訳だ、清く正しく健全な迷宮を目指す俺としては、甚だ不本意な評判になりかねない現状を理解してくれたまえ」
「はいはい、みんながいつも着たくなるような服で貢献させていただくわ」
「任せる」
「で、キリンじゃないけど、俺もひきこもるつもりだ」
「ひきこもるって本体に?」
「ああ、しーしーちゃんの【受肉】の一件で思うところがあってな」
「それって――」
「見当はずれの可能性はあるけど、【人化】へのヒントみたいなもんだ」
「そう……」
――俺の人化はキリンにとっても他人事じゃないからな。
「そういう訳だから、一応声は掛けるけどクルが戻ってきたらフォロー頼むな」
「おいしいお菓子があれば大丈夫よ」
「……たっぷり用意しとくか。 つまむなよ?」
「しないわよ! じゃあ部屋に行くわね」
「おう、頑張れよ」
そうしてキリンも作業部屋へと向かった。
〈クル? 聞こえるか?〉
『おとーさん?』
〈ああ、今から本体の方でいろいろとするから伝えておこうと思ってな〉
『わかったー』
〈練習の方はどうだ?〉
『んー、なんとなくだけど、これがしんきだーってのはわかったきがするー』
〈おお、さすがだなー。 その調子で頑張れよ〉
『はーい! あ、しーしーちゃん? ――』
――これでよしと――って、
〈ぷーちゃんごめん。 聞いてたから分かると思うけど〉
(わかったー)(ぷるも)(れんしゅー)((するー))
〈練習?〉
(じんかー)(まねっこじゃないのー)(じぶんさがし?)(そしたら)((もっと))(みんなと)(((あそべるー!)))
〈そっかー。 そしたらもっと賑やかになるな。 いいぞ。 頑張ってくれ〉
(ごしゅじんが)(((えへへー)))(って)(なるように)(がんばるぞー)(((おー!)))
――頑張る方向はそれでいいのか?
〈じゃ、共有解くからまたな〉
(((ばいばーい)))
俺は知覚共有を解く。ぷーちゃんは一つに纏まってこの部屋で練習するようだ。
人形を隅に待機させてから俺は【魔身】も解き、本体へ戻る。
 ̄l ̄
目の前は真っ暗、音も聞こえず、心臓の鼓動も感じない全くの無音。
息も出来ず、手足も動かせず、一切の感覚もない。
今の身体で目覚めた時と同じ状態にいる。
しーしーちゃんの【受肉】、スライムを依代として【降臨】した女神の分体だったが、依代の精神が希薄だった為に、器の再構成と共に精神も混ざり合った結果、新たな種族として誕生することになった。
スライムをダンジョンコア、分体を俺(の精神体)に置き換えると、相似関係にあるんじゃないかと気づいたのだ。
元々人間だった俺、それに対してあまりにも異質な石のような今の身体。 知らず精神が拒否反応を起こして俺を生み出した。
つまり、この身体はまだ俺のモノになっていないということだ。 現実をきちんと受け入れ、精神と肉体が融合すれば、星胚という生命である以上、この身体も操作出来るようになるハズだ!
――とはいったものの、何から手を付けたらいいんだろう?




