妖精さん
いつになったら穴を掘るんだ?
「えっと~、ボクは何をしたらいいんですぅ?」
――あ~、そっか。
「ごめん。 えーっと、そこのぷーちゃんと手を繋いでもらえるかな?」
「こうですぅ?」
しーしーちゃんがぷーちゃんの伸ばした触手を掴む。
(はろー)(きこえるー?)((ぷるだよー))
「うひゃう! え? ぷーちゃん?」
((そーだよー))(それでね)(そのからだは)(もうぷるとは)(ちがうぷるに)(なっちゃったから)(((あげるねー)))
「そ、そのからだ――ってボクの身体ですぅ?」
―〈シー・シー、よく聞くですぅ〉―
「あ、しー姉」
―〈どうやらあなたは【降臨】ではなく、【受肉】を果たしてしまったみたいですぅ〉―
――ちょっと待て。
〈しーちゃん、【受肉】って……つまりしーしーちゃんは、しーちゃんの「分体」じゃなくて別モノになっちゃったってこと?〉
―〈さっきの声の話を聞いて、確認のために一度分体を戻そうとしたですけど、出来なくなってたですぅ〉―
――まあ、本体に無い能力――飛行――を発現させてた時点で、既におかしな話になってたんだよな。
「ボクが【受肉】してるですぅ!? えっと、つまり今こうしているのが、ボクという存在に――」
――っ!
「きゃっ! な、何なの!?」
『しーしーちゃん!』
いきなりしーしーちゃんの身体が眩い光を放った。 光は一瞬だけだったが、不思議な事に俺の眼にも灼き付いた。
そして再び視界が戻った時、そこには背に光の翅を生やし、フワフワと宙に浮かぶしーしーちゃんの姿――着ていた服はいつもの如く光に消し飛ばされたようだ――があった。 外見は以前のデフォルメされた感じがなくなり、替わりに少し幼くなったように見える。
「いったい何が――!! しーしーちゃん!?」
『しーしーちゃん、またとんでるのー』
キリンとクルも視界を取り戻したようだ。
「はれ? なんか身体がすごーく軽いですよー?」
「あ~、しーしーちゃん?」
「なんですー?」
「その……身体に違和感とかないの?」
「全然ないですよー。 むしろ身体が軽くて、まるで飛んでるみたいですよー……っておお!?」
――今頃気付いたのかよ!
「キリン、何かしーしーちゃんの着る服を――」
「あ! 大丈夫ですよー」
そういうと、しーしーちゃんの身体の周りが仄かに光り、瞬く間に一枚布で出来たような薄衣を身に纏った。
『わー、しーしーちゃんすごーい!』
「えっへんですよー」
―〈どうやら、存在を自己定義しちゃったみたいですぅ〉―
――てことは、これで完全に別モノになったって事か。
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名前 :シー・シー
種族 :妖精族(真祖)
年齢 :0
クラス:あそびにん
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――つ、つっこまないぞ!
〈ちなみに、この世界に妖精族っているの? 俺の元いた世界の妖精とか精霊とかいう架空の存在に近いんだけど〉
―〈いないですぅ。 称号管理神のベテラン勢が静かなので、まだそうだと認識はされてないようなのですぅ〉―
まあ、(真祖)とかなってるしな……
〈存在がバレたら大事になりそうだよな……〉
―〈ボクたちは世界に直接干渉出来ない存在なのですぅ。 それを苦々しく思ってるお偉いさんが、一部にいるですぅ〉―
――そんなのに【受肉】なんて手段がある事が知れたらマズいよな。
「まあなんだ、色々あったけど概ね何も変わってないって事で……」
「なかなか清々しい現実逃避っぷりね」
「とにかくご飯にしようか」
「「『はーい!』」」
 ̄l ̄
 ̄l ̄
「それにしても……」
「なによ?」
「いや、ぷーちゃんはともかく、みんな飛べるんだなあって思ってさ」
『おとーさんもとんでたよー?』
「ああ! いっしょに外へ出た時か。 あの時はマップ画面を視てるだけのつもりだったんだが、意識体としては飛んでるのと一緒だったんだな」
「そうなると私が一番ヘタクソって事になりそうね」
「キリンは元々飛ぶのが目的じゃなくて、忍び込む為のものだろうしなあ」
「夜這いは任せろー! 的な?」
――あ、こら。 そんな事をいうと……
『よばいー?』
「妹にいけない事を教えるなよ? おねーちゃん?」
「うぐっ! おにーちゃんがヘンな事を言い出すからじゃない!」
「とにかく、説明は任せるけど、くれぐれもクルが行動に移したりしないように頼むぞ」
「ちょっとハードル上げすぎよ!」
『おねーちゃん?』
「あー、後で教えてあ・げ・る・わ。 今からおにーちゃんがお家の改造するから、邪魔しないようにしないとね」
『はーい。 おとーさんがんばってー』
――うまく逃げたな。
「おう! 任せとけ! どうする? ココに居てもいいけど、外行ってくるか?」
『れんしゅーはできないのー?』
「ああ、アレか……」
黒歴史が……orz
「隣の部屋は大幅に変えちゃうから、改造が終わるまで練習は出来ないな」
『じゃー、そとであそぶー』
「あまり遠くへ行くなよ。 そうだ、キリンはクルの龍形態ちゃんと見てないだろ?」
「ええ、運んでもらってて悪いけど、ほとんど意識無かったから」
――生きるか死ぬかの瀬戸際だったしな。
「じゃあ、クルに乗せてもらって空中散歩とかどうだ?」
「あら、面白そうね」
『おねーちゃんもいっしょなの? わーい!』
「あ、コラ。 顔が埋まって苦しいんだから抱き着かないでってば!」
『えへへー』
「クル! ゆっくり飛ぶんだぞ。 おまえが全速で飛んだらキリンが振り落とされるから気を付けるんだぞ」
『はーい! おねーちゃん、いこ!』
「ちょ、最後に怖くなるようなこと言わないでよ!」
キリンがクルに引っ張られていく。
「しーしーちゃんはどうする?」
「ボクはココで見てるですよー。 邪魔はしないからお願いするですよー」
「ああ、別に気にしなくていいぞ。 ただ見てるだけだから退屈だぞ?」
「どっちかというと、その見てるだけを渇望してるしー姉の為なのですよー」
―〈シー・シー……なんていい子なの……〉―
――まあ、そういうことなら頑張りましょうかね。
遅ればせながら、しーしーちゃんの口調を修正。




