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お待たせしてすみません。

ヘンなアイデアが色々湧いてきて迷ってしまって……


 ――どうやらキリンも寝入ったようだ。


 さっきまで部屋割りというか、ダンジョン拡張の方針とレイアウト、必要な設備なんかについて一緒に話し合っていた。

 ついでと言ってはなんだけど、俺の身体というか、活動用の人形(ドール)の改良なんかもだ。


 まずは、無防備な俺の本体の安全を確保する為に、トラップを中心とした改装を施す。

 今の大部屋の周囲1メートル程を残して深さ200メートル程の縦穴を掘る。 大部屋の天井も2メートルぐらいまでグッと下げて跳躍によるショートカットを阻止。 入口の反対側には先へと続いていそうな扉を設置。 この扉は脇のスイッチで大部屋の方へ観音開きで開くようになっており、扉が開かれると周囲の通路のあちこちで、分厚い壁がせり出すようになっている。


 縦穴の壁には一見降りられそうな板状の張り出しを階段状に不規則に並べておく。 これは途中まで降りると、今いる足場を残して全て引っ込むようになっている。 また、中央に直径5メートル程の空間を残しながら、目に見えないぐらい細くて丈夫なワイヤーを無数に張り巡らせる。

 中央の空間は龍化したクルの通り道となり、元大部屋の天井の中央にも、ところどころ隔壁を設けた吹き抜けを、()まで繋ぐ。


 底は中央に開閉式の穴が開いたドーム状の床になっていて、ドーム中央の穴を閉じれば、縦穴の中に水を満たし、水流を発生させることも出来るようになっている。

 ドームの下に従来の大部屋が位置する形となっていて、コア部屋も合わせて下層に移動させ、浴場は新しく作る部屋に合わせて作り直すことになった。

 

 この改装案を聞いたキリンは一言「えげつないわね」とあきれ顔だった。 俺たちの出入りをどうするのかについては、入口向かいの扉の中、扉が開いても岩肌しかないように見えるのだが、実際はこの部屋の様に中に入れる様にして、中には魔力で動作する天井トラップを活用したエレベーターもどきを設置する。


 新しく作る部屋だが、

 ①今のこの部屋の代わりとなるような、みんなが集まれる部屋(リビング)(兼ダイニング&キッチン)。 キッチンなんて必要なのかと思ったが、「女子力の維持向上の為よ」と言われればOKを出さない訳にもいかないだろう。


 ②キリンの創作活動コスプレ用の作業部屋。 付随する道具やミシン(電動は無理だったが、足踏み式なら【メニュー】から選べると判明)も揃え、ウォークイン・クローゼットも備え付ける。

 衣服は使い捨てにしないで、俺のイメージが足りない分をキリンが補い、時に(魔)改造しながら大事に着たいと言っていた。 実際のところ、服はどんどん湧いてくる物なんて認識をクルが持つ可能性もあるので、この辺はキリンに丸投げした。


 ③各自の個室兼寝室。 クルは今まで通り(本体)の居る部屋で寝ると言って聞かなかったらしい。 なので当面は今と同じ間仕切りとベッドも用意し、女の子みんなで寝られる大きな寝室を1つ作ることにした。

 折りを見てクルにはそっちでも寝るよう説得して、クルの意識が変わるようなら、個室にするなりその時に弄ればいいだろう。


 ④()浴場。 多くは語るまい。


 迷宮の改装についてはとりあえずこのぐらいでいいんじゃないかということでキリンとは意見が一致している。


「……んっ」


 ――これはキリンの声か?


「……パパ…………ママ…… ごめんなさい……私……」


 ……寝言だろう。 彼女を救ける時にも聞いたが、やはり心の奥底では日本へ、家族の下へ帰りたいのだろう。 妹が死んで、自分まで居なくなった後の両親の事も心配なのだ。


 ――もう一度(あいつ)に会って、話を付ける必要がある。 これといった手段は思い浮かばないが、これ以上キリン――榊 凜子のような被召喚者を生まない為にも、聖教国の非道を知ってもらう必要があるだろう。

 それとは別に、聖教国には何らかの報いが必要だと思うが……


 ――いかん、考えが昏い方にいってしまう。

 迷宮の改装は明日みんなが起きてからだ。 今はまず、この活動用の人形(ドール)の改良からだな。


 俺の希望として、①しゃべりたい。(発声) ②飲み食いしたい。(味覚、嗅覚) ってのがある。 つまり動かせる口、舌。 息の通る喉、鼻に相当する器官が欲しいということだ。 味覚、嗅覚については、魔身によって再現された皮膚感覚(・・・・)に含まれるんじゃないかと、漠然と考えている。

 実際のところどうするかだが、これはもうぷーちゃんの力を借りるしかない。 人形(ドール)の該当部分を空洞にし、ぷーちゃんに口腔内、食道、気管や肺相当の器官を「擬態」で再現してもらうのだ。


 というわけで、クルの抱き枕(ぷーちゃんA)からこっそり応援を呼んで必要な「肉」を確保する。

 次に【ドールマスター】のスキルで人形(ドール)の改造――アゴ部分をカットし、可動式のアゴの骨のようなパーツと替え、首は頸椎もどき、上半身は胸の中を空洞にする。


 ――いつか、「骨」だけ作ってぷーちゃんで肉付けも考えてみよう。


 ぷーちゃんにお願いして出来上がった新しい人形(ドール)を覆いつつ、アゴや首、胸の中まで擬態してもらう。 はたして――。


 俺は【魔身】と【知覚共有】で人形(ドール)と一体化する。

 息を吸って吐く。 鼻から。 口から。 口を、舌を動かす。 歯を噛み合わせる。 声を――。


「……ぁぁあ……ぃぃい……ぇえ……おー、くゎー、きー、くぅ、けぇー……」


 ―〈熟練度が規定値に到達――スキル【発声】【滑舌】を取得しました〉―


「あーあー、おお! 楽になった!」


 ――出せる。 声が出せる!

 てかぷーちゃんの擬態の再現度がスゴいんだけど。 いつの間にか唾液のようなものまで再現してるし……

 コップ一杯の飲料水を出す。 意を決して口に含む。 飲み込む。


 ごくっ


 喉がなる。 水が喉を通るのがわかる。 水はその先でぷーちゃんが吸収するのだ。 舌に感じる微かなミネラル分が、味覚の存在を伝えてくれる。

 俺はシュークリームを出す。


 はむっ


「うんまあぁ……!!!」


 俺は慌てて空いた手で自分の口を塞いだ。

 ――シュークリームってこんなに旨かったっけ? この味、ぷーちゃんにも伝わってるといいな。 今日は一日中お世話になりっ放しだからな……


(……おい……し……)


 ――ん?


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