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しーしーちゃんなのー


〈しーちゃん、これ見て何か思い出さないか?〉


 俺はぷーちゃんCが擬態した真っ白い分体ちゃんを指差しながら訊く。


「ほえー、器用なスライムですぅ。 ホントにボクの分体ちゃんみたいですぅ」

〈そうじゃなくって! しーちゃん自身の分体を作るって言ってただろ!〉


 …………


 ポン!

 しーちゃんがようやく思い出したのか手を叩いた。


〈俺もそっち(・・・)分体ちゃん(ちっこいの)に気を取られてたから忘れてたけどな〉

「ぼ、ボクもですぅ」

〈いや、しーちゃんはケーキに夢中だったからだろ?〉


「えーっと、私にも説明して貰えるとありがたいんだけど?」

〈あ、ごめん〉


 そういやキリンには何のことか分からないよな。


〈今、しーちゃんに【降臨】してもらってるけど、依代になってる人形の耐久時間に限りがあるんだよ。〉

「ふんふん」

〈そのぷーちゃん――スライム・イノセント――は、以前【降臨】した時に抜け殻となった依代が、なんか「女神(しーちゃん)残滓(お漏らし)」みたいな物質――「だから、お漏らし言うなですぅ!」――に変化して、それが核となって生まれたんだ〉

「へー、普通じゃないとは思ってたけど、女神様が関係してるとは思わなかったわ」


 ――ん?

 並列意識の方、何か巨大な山脈をよじ登ってるような……?


〈神気に耐性があって、魔力も随時補給可能。 しーちゃんの依代にも適してるんじゃないかって思いついて、ついでに省エネタイプの分体ちゃんならずっと【降臨】出来るんじゃないかって、前に話をしてたんだよ〉

「なるほどね~。 大体分かったわ」


 並列意識の方は山脈の頂を越えるところだ。 足場が悪いのか視界が揺れている。

 ――もう少しだぞ! がんばれ!


〈てことでしーちゃん、出来そうか?〉

「今だとちょうど人型どころか、分体ちゃんそのままなので、ばっちり行けそうですぅ」

〈だったら、早めに作っておいた方が良くないか? 前よりも【降臨】時間が短くなってそうな気がするんだけど? 分体ちゃん作るのにもエネルギー使うんだろ?〉


 ――なんか後光が射してる分、色々消耗してそうなんだよなぁ。

 並列意識の方は無事登り切ったようだ。 ()の上で満足そうに上を見上げ――にこにこ顔で見下ろす大きなクルの顔が映る――うん、知ってた。

  (登山じゃなくて、) (たわわチャレンジ) (だった)


『おとーさーん! ほらほらー! このこまたのぼってきちゃったー』


 ――その子に訊けばこう答えるだろう――「なぜ山に登るのか? そこに山があるからだ」――と。

 あの謎のやり切ったぜ感も今の俺なら分かるぜ。 実は座り心地がいいからなんていう理由じゃ無ければいいんだけど……


「なんかしつれーな視線を感じるですが、いーくんの言うとおり、前よりも消耗してるですぅ」

〈やっぱりそうか〉

「なので、お言葉に甘えて、今作っちゃいますぅ」


 そう言うとしーちゃんは目を瞑り、何やら念じ始める。 スキルみたいにパパッと作れるもんじゃないようだ。

 見ているとしーちゃんを覆っていた仄かな光が強くなり、胸の辺りから光の玉が出てきた。 光の玉はふわふわと漂いながら、ぷーちゃんCの擬態した真っ白い分体ちゃんの方へ飛んでいくと、その体を包み込む。

 そのまま光を吸い込んで終わりかと思ったら、反対に輝きを増し、なにやらぐねぐねと形を変えているようだ。


 ――ちょっと大きくなった?


 光が収まって姿を現した分体ちゃんは、身長が20cmぐらいに、それに合わせて頭身も伸び、他の――といっても俺担当(・・・)ぐらいだが――よりも大人びたように見える。

 何よりも――。


「せっかくなので、ちょっと気合を入れて作ったですぅ」


 しれっと言ってるが、どこ(・・)に気合を入れたか一目瞭然なのだ。


〈それはいいけど、なんで真っ裸のままなんだ? 色が着いた分、色々とヤバいぞ?〉

「え? あわわわ! な、なんでですぅ?」


 分体ちゃんは慌てて本体(しーちゃん)の後ろに隠れる。 なぜかこっちを睨んでるけど俺の所為じゃないぞ?


〈魔素かなんかで作ってたなら、素体がぷーちゃんだから吸収されちゃったんだろ〉

「あうう、身体の方に神気を使いすぎて服まで回らなかったですぅ。 この子に服を出してあげて下さいですぅ」

〈人形用でちょうどいいサイズの服なんてあるかな?〉


(キラーン!)


   ̄l ̄(__∞__)

       ̄l ̄(__∞__)


 すったもんだの挙句、分体ちゃんのお着替え――妙に張り切ったキリンが本人(しーちゃん)の意向お構いなしにコーディネイトした――が終わった。

 今分体ちゃんが着ているのは何故か薄緑のチャイナ服(ロングスリット)だったりする。 ご丁寧にエクステでお団子まで作る凝りようだ。 なお、紐パンで押し通し(言いくるめ)たキリンには後で何か美味しい物をあげようと思う。


 キリン曰く、「材料と道具さえあれば、私が作るわよ」との事。 薄々思ってはいたが、どうやらレイヤーさんだったらしい。 着るのも着せるのも作るのも大好きなんだそうだ。


「こうなるとこの子にも名前を付けたいわね」

〈しーちゃんじゃダメなのか?〉

「分体ではあるけど、こうして本人とも共存してるんだし、なんか呼び名があった方がいいんじゃない?」


 ――言われてみれば、依代となってるぷーちゃんCも居ることだしなぁ。


「ぷーしーちゃ……ダメ! 聞かなかったことにして!」

〈だったら「しーぷる」とか?〉

「良さそうだけど、それだと単にぷーちゃんCの名前みたいよね」

〈一応クルにも訊いてみるか。 クル、こっち来てくれ〉

『はーい』


 いつの間にか床でぷーちゃんAや分体ちゃん(俺担当)と遊んでたプルが、分体ちゃんを乗せたぷーちゃんAを抱えてやって来る。 分体ちゃんの垂れ具合を見るに、ぷーちゃんには「人をダメにするソファ」的な魔力があるようだ。


『なーに?』

〈この子に名前を付けて上げようってことになってな〉

『わー! かわいーのー!』

「あ、ちょ! くすぐったいですぅ」


 身を捩る分体ちゃんとしーちゃん。 本人が作ってるから、感覚全てにフィードバックがあるようだ。


〈クル、しーちゃんが困ってるからほどほどにな〉

『はーい』

「はぁはぁ、 (クルちゃん……) (恐ろしい子!)

〈この子はぷーちゃんCの身体を借りたしーちゃんなんだけど、何かいい名前が無いかなって〉

(あのぅ、皆さん? ) (なぜ本人には) (訊かないんですぅ?)


 ――とはいえ、クルのセンスだと「ぷーちゃんとしーちゃんがいっしょになったの」とか言いそうなんだよなぁ。


『えーっと……どっちもしーがつくからー、しーしーちゃんなのー』


 ――お、意外とまとも。


〈ぷーちゃん()しー(・・)ちゃんでしーしーちゃんか。 俺はいいと思うぞ〉

「偶々だけどチャイナ着てるからそれっぽくていい名前ね」

「むぅ、2人して妙に押しますけど、変な意味じゃないですぅ?」

「「ないない」」


 見事にシンクロする俺とキリン。 だけど【意思疎通】でそういう意味(・・・・・・)が伝わってないんだから、クルが付けた純粋な名前って事なのだよ。 安心するがよい。


「じゃあ、この子は『シー・シー』、しーしーちゃんで決まりですぅ」

「シー・シーですぅ。 よろしくお願いしますぅ」


 分体ちゃん改めしーしーちゃんも挨拶してペコリと頭を下げた。

 ――名前が付いて、並列意識みたいな感じで半分別人格っぽくなってるのかな? なんか本人(しーちゃん)よりも出来た子な感じがするのは気の所為だろうか?


シー(xi)に該当する漢字の例

 嬉(遊ぶ、戯れる)

 戯(あそび)

 希(願う、望む)

 吸(吸う)

 犠(いけにえ)

 悉(ことごとく)

 晳(肌が白い)

 裼(肌脱ぎになる)

皆さんのお好みで。

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