託されたもの
遅くなった上に短くてすみません。
(もう……おかーさんと……けんかしない?)
『ああ、二度としないよ。 約束する!』
(じゃあ、もうおとーさんとおかーさんはなかよしなんだよね?)
『ええ、クルちゃん。 もうちゃんと仲直りしたわ』
『そうだよ。 ……クル、ごめんな』
(えへへ、あたしはもうだいじょうぶ。 それに……おとーさん、まだあのひとみるのつらそう……)
――やっぱり分かっちゃうか……
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感動の母娘再会を裸エプロンで飾られ、困り果てた俺は、クルが落ち着いたのを見計らって、五感の全共有をクルにお願いし、身体を預けてもらった。
その上で、竜王に頼んで、着る物を用意してもらった。 話に依ると、竜王は「迷宮主代行」らしく、本当の迷宮主は「魔王」だという。
クルが穿くパンツ(ブラは諦めた)と、2人が着る服は出して――俺がイメージを伝えた――貰えたが、自身の穿くパンツは、譲れないモノがあるらしく、頑なに拒否された。 どうやら「あの人」に貰った思い出のパンツがあるらしく、それ以外は身に着けないと決めているらしいのだが……
――「あの人」はそのパンツをどうやって入手したんだろう……
あと、竜王? 魔族――迷宮と係る内に魔力に適応しただけの人族らしい。 一様に黒っぽい肌をしているのは魔力焼けなのだそうだ――の人たちがあなたを見て俯くのは怖いからじゃないですよ? もっと【人化】した自分の肢体の破壊力を自覚して下さい。 しかも24時間オール全裸ですってよ?
――クルも大概だと思ってたけど、軽く3割増しって……どんだけ……
( )
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そうして、お菓子――当然、俺がイメージを伝えた――を食べたり(当然この時の主導権はクルだ)しながら、ひと段落着いたところで、本題ということで、奥の部屋に案内され、それを見せられた。
最初それを見せられた時、現実が頭に入ってこなかった。
特殊な空間だというのは一目で分かった。 狭い部屋の中には朱い靄が渦巻いているだけで、それ以外には何も――床も、壁も、天井も――なかったからだ。
そんな部屋の真ん中にそれ――透き通る、冷たい氷の柱に閉じ込められた血まみれの少女――が浮かんでいた。 その顔――いつかの巻き込まれた事故で見た、迫りくるトラックを睨み付けていた顔――を見た時、俺の頭は真っ白になり、胸の中で何かが爆発した。
俺は竜王に掴みかかり、言葉に出来ない感情をそのままぶつけていた。
――なぜ彼女がココに? ――彼女は「聖女」として聖教国へ…… ――“神”が言っていた、俺が死んだとき「聖女」が居合わせていたと…… ――あんな血塗れで……死んでいるのか? ――誰が殺した? ――竜王なのか? ――!!!!
頭の内でわんわん泣いてるクルの泣き声に気付き、俺はようやく我に返った。 俺の身体――クルのだが――は両脇から魔族に取り押さえられていた。
――俺は現実から目を背けていた。 俺は迷宮で殺された。 誰に? 討伐隊=勇者一行だ。 討伐隊は迷宮を討伐に来ている。 ココは何処だ? 竜王が守り、魔王が住む「魔の山の迷宮」だ。 討伐隊の最終目標じゃないか。
竜王と勇者、ひいては聖女がぶつかるのは必然だ。 竜王が――クルの母親が――殺されていた未来もあったのだ。
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そうして落ち着いた後、この「氷の棺」がココにある経緯を竜王から聞いた。 勇者と話をする機会があったこと。 突然始まった戦闘と戸惑った様子の勇者。 全てをぶち壊した「影」の存在。 「勇者」が最期まで「聖女」――サカキ・リンコを案じていた事。
瀕死の彼女を留める為に「氷の棺」で活動を留め、時間の経過を遅らせるこの部屋に収めている事など。
そして、この俺に「聖女」を救って欲しいと託されたのだ。




