続―実験
遅くなりました。 すみません。
――まずは、
俺は膝を抱えて部屋の片隅で待機してた人形を呼ぶ。
――少し大きいか……
前回【知覚共有】した時に頭と胸しか魔力が行き渡っていなかった。 全体の体積を小さくすれば少しは足しになるかも知れない。
俺は【素材錬成】で、人形全体を圧縮するイメージを放つ。 一度解体してから新しいのを作ればいいのだろうが、なんとなく愛着が湧いてしまったのだ。
象牙の様だった色に朱が差し、全体が小さくなっていくのだが、予想していた堅いものをぎゅうぎゅう圧縮するようなものではなく、“ガワ”が波打つように揺れた後、“シュン”と一回り小さくなる感じなのだ。
ざっと30秒程の時間で「圧縮」は終わった。 前世であまりガタイの良くなかった俺が、見栄を張って作った人形が、元のサイズに戻った感じだ……orz
――まあいい。
俺はぷーちゃんBに人形の表面を覆ってもらうようにお願いする。
しゅぴ!
ぷーちゃんBは“左手”を上げて応える。 ぷーちゃんと、ぷーちゃんAは“右手”を上げていた。 右脳と左脳みたいなもんだろうか? 実は後ろを向いてて“右手”を上げてるとかだったら寂しいな……
ぷーちゃんBは「そんなことないよ」っぽく体をぷるぷる振ると、ササっと人形の身体を覆っていく。 小さくなった分、半分になったぷーちゃんでもなんとか全身を覆うことが出来た。
お次は――。
俺は【不可視ノ腕】と【魔眼】を発動する。 朱い腕が俺の意識体と一体化し、俺の腕として動かせるようになる。
――〈知覚共有〉
“俺”という意識が人形の内に入り、一つになる――素材が変わったからか、前回よりも楽だ。
【魔眼】で視ると、前回の頭、胸、前腕部に加え、新たに両肩、腹部が朱く覆われている。 しかし、全身を覆っているはずのぷーちゃんBの身体は透明で、【魔眼】には映らなかった。
――ぷーちゃんの持ってる魔力――無属性――は普通の魔力と違うんだろうか?
そんな風に思いながらも、人形を覆うぷーちゃんBの身体を自分の魔力と混ぜるようにイメージし、人形全体を覆いつくすように魔力を広げていこうとした。
肩と二の腕の境、腹と腰の境で、俺は魔力を延ばそうとするが、延ばす端から消えてしまう。 ぷーちゃんは魔力の塊だから、労せずして全身を覆えると思っていた俺は、諦めきれずに足掻く。
―〈熟練度が規定値に到達――スキル【魔力操作】を取得しました〉―
そんなしーちゃんの声が響く頃、俺は自分の思い違いにやっと気付いた。 そう、ぷーちゃんのスキル【魔素吸収】だ。 俺が魔力を混ぜて延ばそうとする「事象」は、このスキルによって魔素に分解され、ぷーちゃんのおやつとして吸収されてしまっていたのだ。
身体を動かしたいとの想いから、ぷーちゃんを単なる魔力の塊、魔力の通り道としか考えていなかった事に気付き、俺は激しい自己嫌悪に陥る。 実験が振出しに戻ってしまった事に対する失望も合わさり、落ち込んでいると――。
人形を覆ったままのぷーちゃんBが、ぷるるん! と身を震わせたかと思うと、その全身が一瞬で朱に染まったのだ。
―〈熟練度が規定値に到達――スキル【魔身】を取得しました〉―
――あっ!
瞬間、俺の全身を襲った「感覚」の奔流に、気を失いそうな程の衝撃を受ける。
――絨毯の毛足、空気の流れ、体内を巡る魔力の流れ、身体を覆うスライムの触感――。 俺の感覚、人形の感覚、ぷーちゃんBの感覚、それらが魔力で混然一体となり、一度に情報を送って来るのだ。
 ̄l ̄
 ̄l ̄
――なんとか落ち着いてきたかな?
感覚の奔流にもようやく慣れ、さっき起こったことを整理する。
ぷーちゃんBは俺の「魔力を混ぜて延ばそうとする」事象をスキル【魔象再現】で実行して見せたのだ。 それにより、俺の魔力はすんなりとぷーちゃんBの魔力と混ざり合い、人形の全身を覆うことに成功した。
そして、それ自体がスキル【魔身】として昇華し、俺は魔力を通して触覚――に止まらず全ての皮膚感覚――を得ることが出来るようになった。
俺はまず、ぷーちゃんBに【魔象再現】を解いてもらう。 【魔身】発動中の俺はそのままだ。 スキル化すると外的要因に囚われなくなるのか、ぷーちゃんBの助けがなくとも朱い膜が人形の全身を覆っている。
俺は手を握りしめる。 人形ゆえ硬質だが、確かな握力を感じることが出来る。
俺は足を上げ一歩踏み出す。 足裏に絨毯の毛足を感じつつ、倒れたりすることもなく、歩ける。
俺は一つ一つの動作を確かめながら、ようやく取り戻した身体の自由と感覚に感動するのだった。
『おとー……さん……?』
――ああ! クル! 俺はこの時をどんなに待ちわびたことか……!
ようやく娘の頭を撫でてあげられるようになった。 そんな風に思っていると、
『おとーさんがはだかんぼだー!』
――なんだって!?
俺は自分の身体を見下ろす。 痩せているが、人形っぽくない見慣れた身体がそこにあった。 ぷーちゃんBが「擬態」したのか? 俺の身体なんてどうやって知ったんだろう…………あ!
そして、ようやく俺は、股間にぶら下がる見慣れたものまで再現されていることに気付いたのだ。
~~~~!!
俺は慌てて股間をガードしつつ、「DP交換」でブーメランなパンツを――ってアブねー!! 【メニュー】さん? あなたは俺をどうしたいんですかね?
俺はボクサー派なのだ! てことで、出したパンツを可及的速やかに装着する。
――セーフ?
おとーさんがまっぱ!
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
――ぱお~ん? があまりにもアレだったので改稿しました。




