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色 (おふろーⅣ)

第二次裸ん坊祭しゅーりょー


 “頭が生えた”かも知れない――そう思ったのは俺の「視点」に対する挙動が変化したからだ。

 俺は360度、全天全周の視界を持っているが、ピントが合っているのは“正面”だけだ。 見たい方向を意識すると、その方向のピントが合い、そちらが“正面”という認識になっていた。


 クルから伸びた赤い糸につられて俺の身体――胸だけだが――を意識した時から、俺の視界に「前後」が生まれたのだ。 上下左右を見る時に首を動かすように、以前は点から点へと移動していた視線の移動が連続した線での移動になり、後ろを見る時は、首をひねり続けて“身体”の向きも変えるという意識に変わった。(首が真後ろを向いたり、何回転もしたりという感覚は、元人間には持ち得なかった)


 平たく言うと、俺の中心が、“頭”から“胸”に移動したということだろう。 真後ろへの対応が遅くなる代わりに、上下左右は素早く見渡せるようになり、左右と後ろへの移動が可能になった。


 ――っと、

 俺は出しっぱなしにしていた“手”を解除する。 こっちの検証はまた後だ。


 ――「おとーさん」として「見ててやる」って言った以上はな……

 そのクルはというと、泡だらけ――雪だるまみたいな――になっていた。


〈クル、どんだけ石鹸使ったんだ?〉

『えへへ、あわあわがいっぱいで、にゅるにゅるしてるんだもん。 たのしくなっちゃってー』

〈お風呂は遊ぶところじゃないぞ〉

『ごめんなさーい』


 と言いつつ、顔はてへぺろだ。

 ――さっそく「いたずら」ってとこか?


〈んで、身体の方は洗えたのか?〉

『あとはここ(・・)と背中だけー』


 そう言って泡の中でごそごそするクル。

【魔眼】を併用していた俺には、“朱い膜”で浮かび上がるクルの輪郭――こちらを振り向きつつ、(おっぱい)を持ち上げてその下を洗うクルの動作――がはっきり見えてしまう。

 俺は慌てて【魔眼】を切った。


 そして、クルにとって最大の試練がやってきた。


『うー、せなかがうまくあらえないよー』

〈右手は上から、左手は下からで、こんな風に――〉


 イメージを伝えてみるが、両手の連動というか背中越しの感覚が掴めないのか四苦八苦しているのだ。


『あーん、むずかしいよー!』

〈がんばれ、クル!〉

『ねー? おとーさんは、あたしみたいなからだがあったら、ひとりでからだをあらえるんでしょー?』

〈う、うん。 そうだけど?〉

『じゃあ、おてほんみせてー』


 ――って何を無茶な事を言って――って、おい!


 “俺”は、いきなり何か――って赤い糸だよな――に引っ張られるように、クルの傍に吸い寄せられ――そのまま、クルの内に引っ張り込まれた(・・・・・・・・)


 …………


(おとーさん、きこえるー?)

〈クルか? 俺はどうなって――〉


 目の前には鏡がある――そこに映っているのはクルだ――白い、透き通るような肌に、頭のタオルからは白銀の髪が幾筋か零れている。 瞳は紫がかった深い赤だ。

 俺はしばし、色彩を取り戻した世界に我を忘れていた。


 ついっ――クルが右手を上げ、その手のひらを見る。


(おとーさんもみえてるー?)

〈あ、ああ……これはお前の“目”なんだな?〉

(うん、いきなりでごめんなさい…… おとーさんとはつながってる(・・・・・・)から、できるとおもったの)

〈驚いたよ……こんなことが出来るなんて……〉

(えへへー、それじゃ、せなかおねがーい)


 ――え?――っとと! うわ! おっぱい重っ!!

 眼下には圧倒的な重量とボリュームを誇るクルの双丘がある。


(でしょー?)


 ま、まさかこんな形で女の子の身体を体験する羽目になるとは……

 余計な事を考える前に、さっさと洗ってしまおう!


〈まずは脇の下から左右の脇の裏側をだな――って、む、胸がつっかえて届かない?〉


 お、おっぱいの下から回すのか――ってやわらかっ!

 ――いやいやいや、感じ(Don't )るな(feel.)考えろ(Think!)……3.14159265358979……πだけに――ってやかましいわっ!


(…………おとーさん?)

〈……ごめん。  (やかましいのは) (俺だったー )と、とにかく脇の裏側はわかったかな?〉

(うん、つぎはー?)

〈次は背中の真ん中だ。 まずタオルの端を右手で持って、こうやって背中から垂らすんだ〉

(あ、そーすれば)

〈そして、下から左手でタオルの反対側を掴む〉

(そっかー)

〈あとはこうやってゴシゴシ――〉


 ――ちょ! 揺れ、おっぱいめっちゃ揺れてる!

 タオルを動かすのに合わせてぶるんぶるん揺れまくるおっぱいを鋼の意思で意識から追い出す。


〈終わったら、こうやって左右を入れ替えて――って関節柔らかいなっ! これ手で背中全部拭けるんじゃないかな?〉

(そーお?)

〈最後はこうして……脇の下からおしりまでゴシゴシと洗って……おしまい!〉

(わー、ありがとー)

〈後は自分で出来るな? ちゃんと流すんだぞ〉

(はーい!)


 今度は俺の方から意識してクルの身体から抜け出して(・・・・・)みる。

 ――「スーッ」というか、「にゅるん」というか、意外とあっさりとした感覚と共に色彩が失われる。 これだけは凄く残念だ。


 さばー


 洗い場では、クルが全身の泡を洗い落としている。


〈流せたかー? 最後にもう一回お風呂に浸かってから上がるぞ〉

『もーちょっとー!』


   ̄l ̄(__∞__)

       ̄l ̄(__∞__)


 ちゃぷ


〈今度は好きなだけ入ってていいぞー〉

『はあー、きもちいー!』


 本当に気持ちよさそうに目を細めている。 頑張ってお風呂を造った甲斐があったよ。


『ねー? おとーさんもはいりたい?』

〈そうだな……〉

『えいっ』

〈わっ――ってまた!〉

(えへへー)


 …………


(おとーさん?)

〈ん? ああ、最後に風呂に入ってから1週間と経ってないんだけどな……ひどく懐かしくてな……〉


 クルの眼に飛び込んでくる秘湯の風景を眺めながら思い返す。

 事故から――転移して、召喚に攫われ――今考えるとこれも怪しいが――あげく死んじゃって、生まれ変わって――と色々ありすぎた。

 けどこうしてクルと出会えて、親娘になれた。


(じゃあ、これからもときどきこうやっていっしょにはいろっ! ねっ!)

〈そうだ……な、こんなお風呂ならお願いしようかな?〉

(やったー! おとーさんといっしょだー)


 喜びはしゃぐクルの声を聴きながら――俺は湯船に浮かぶおっぱいの感覚を意識の外へ追い出すのに必死なのだった――っと俺ばかり堪能してたらダメだな。


〈クル、身体返すぞ。 あったまったらのぼせる前に上がるんだぞ〉

(はーい……おとーさん、ありがと)

〈――ん〉


 俺はクルから抜け出した。


   ̄l ̄(__∞__)

       ̄l ̄(__∞__)


『~♪』

〈風邪ひかないようにちゃんと拭くんだぞー。 特に髪は念入りにな〉

『はーい』

〈あと、お風呂上りにすぐに下着は着けなくてもいいけど、ちゃんとバスタオルで身体は隠すように! 約束だぞ!〉

『うん! おとーさんいっしょにはいってくれたもん! あたしもやくそくするー』

〈よーし、いい子だー〉

『えへへー』


〈これが替えの下着と――〉

『なーに?』

〈じゃーん!! パジャマだ!〉


 やっぱ女の子がぱんつ一丁で寝るのはいかん! ということで、着ぐるみパジャマを用意してみた。 まあ、にゃんこだ。


『ふわー、もこもこだー』

〈とってもかわいいぞー、クル〉

『~♪』


 その場でクルクル回って見せる。


〈お風呂で少し疲れたろう? ゆっくり休みなさい〉

『はーい。 おやすみー、おとーさん』

〈ああ、おやすみ、クル〉


 ――少しは「おとーさん」らしく出来たでしょうかね?


 ―〈もー、ばっちりですぅ。 惚れ直しちゃいますですぅ〉―

〈――あはは……じゃあ、「おはなし」しましょうかね?〉


“頭”が生えたかも→“頭が生えた”かも 前話の引きとの整合の為修正。

サブタイトル:おふろ→おふろー に修正。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

停止していた短編「はじめてのおふろ」の公開を再開します。

本作を書いている最中に思い付いたシーンを、勢いに任せて本編より先に投稿した意欲作?です。

今回のお風呂回と比べてみるのもいかがでしょうか?

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