おふろー
待たせたかな?
―〈~~~~~~~〉―
――しーちゃんがジタバタしてるのを感じる。
称号:
(前略)
『世界ヲ停止セシ者Ⅱ』
『告知神ニ告白セシ者』
『告知神ノ懊悩』
『告知神ヲ射止メシ者』
『告知神ノ寵愛』
『告知神ノ歓喜』
『告知神二告知セシ者』
『告知神ノ涙』
『告知神ヲ慰撫セシ者』
『告知神ノ叱責』
『告知神ヲ甘受セシ者』
『告知神ノ狼狽』
『告知神ノ思慕』
『告知神ト和解セシ者』
『告知神ヲ煩悶セシ者』
――何があったか、多くを語る必要はないだろう。 俺は速やかに称号を〈隠蔽〉していく。
LUK:99
――しーちゃんの愛が重いです……
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『おとーさん! おとーさーん!』
――お!
『できたよー!!』
〈おー! すごいなー! ご褒美は何、がい……い!?〉
『えへへー』
満面の笑みで部屋に戻って来たクルの頭に何やら布が見えるのだが……
〈クル?〉
『なーに?』
〈頭のソレは何かな~?〉
『あーっ! そのままきちゃったー!』
クルはパッと頭の布を取ると、その場でいそいそと脚を通して装着する。
うん、はいてなかった。
『これー、さいごまではけなくてー、いろいろためしたら、やっとかぶれるよーになったのー』
〈お、おう、頑張ったなー、えらいぞー〉
『うれしくって、ついそのままきちゃったの。 えへ』
〈しょうがないなー〉
『もどったらわすれずにはくから、またおそといってもいーい?』
――そっか、ちゃんと出来るまで外に出られないと思って頑張ってたのか。
〈ああ、いいぞ! でも今日はもう遅いから、また明日な〉
『うん! やったー!』
〈さーて、ご褒美は何がいい? ご馳走とか、甘いものとか、何でもいいぞー〉
『えーとねー』
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結局、ご馳走も、甘いものも出すことになった。
途中、再起動を果たしたしーちゃんに、一緒に食べないかと誘ってみたが、
―〈い、今顔を合わすのは、む、無理でしゅうぅ〉―
と、去って行った。
すまない。 DTの俺が言うのもなんだが、そこまで免疫が無いとは思わなかったんだ……
クルは、お腹がいっぱいで満足したのか、床をごろごろと転がっている。
――そろそろ眠たくなる頃か、ゆうべはそのまま寝ちゃったんだっけ……
〈クル、ちょっといいかな?〉
『なーに?』
〈今まで身体が汚れた時とかはどうしてたんだ?〉
『おうちにいたときは、ちかくのいずみでみずあびしてたー』
――ドラゴンが入れる泉ってことはないだろうから、水浴びの為に必然的に人化してたってことか。
『【じんか】するだけできれいになるんだけどー、おみずあびてるときもちいいのー』
なるほど。 となると……
〈今はその姿が普通だから、そのままでいるなら水浴び出来る場所か――いっそお風呂を造ろうかな〉
『おふろ?』
俺は、頭に風呂のイメージを思い浮かべ、クルに向けて念じる。 【意思疎通】にイメージを伝えてもらう。
『わあ! なんかきもちよさそう。 あたし、おふろにはいりたーい!』
〈よーし、だったら造ろうか。 もうちょっと頑張って、起きてような〉
『うん!』
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(カポーン)
俺は、大部屋を挟んで反対側にある空き部屋を、少し拡張した上で間仕切って、浴室と脱衣場に分け、ゆったりと入れるお風呂を作った。
内装なんかは「お楽しみ」という事で、出来上がるまでクルには覗かないようにしてもらっている。
〈よーし! お待たせー、出来たぞー〉
『わーい! たのしみー!』
クルは楽しみで目が冴えたのか、妙にテンションが高い。
〈石鹸、タオル、シャンプー……お風呂セットもOKっと〉
お風呂の入り方は、事前に【意思疎通】でイメージと共に伝えてある――クルは「うまくできるかな~?」と、少し不安そうだったが、大丈夫だろう――。
〈さあ、クル、入っておいで〉
俺は部屋からクルを送り出そうとしたのだが――。
『はーい!』
元気のいい返事とともに、クルはその場で服をポンポン脱ぎ出した。
〈こら! せっかく脱衣場作ったんだから、教えたとおりにそこで脱ぎなさい!〉
『なんでー?』
〈女の子が人前で裸になるもんじゃありません〉
――なまじ身体だけ成長してるから余計にややこしい。
『おふろははだかではいるんでしょー? どうせみられるんだから、ここでぬいでもいっしょじゃないのー?』
――ん?
『おとーさん、はやくいこーよ!』
〈ちょ、ちょっと待ちなさい。 クル、ひとりでお風呂に入れるだろう?〉
『でも、おかーさんとはいっしょにみずあびしたし、おかーさんもはだかだったよ?』
〈その時は今みたいに身体が大きくなってなかっただろう? 小さい子供だったら、おかーさんと一緒でもおかしくはないよ〉
『あたしがおっきくなったから、いっしょにはいれないの?』
〈クルが身体と同じくらい、心もちゃんと大きくなったら分かるようになるよ〉
――って、クルはドラゴンなんだった…… い、今は進化して人型がメインになったんだから意識もそっちに引っ張られてくれるよな? メイビー?
『やー! おとーさんもいっしょにはいるのー! あたしがちゃんとできるかどうか、“ぶら”のときみたいに、おとーさんにみてもらうんだもん!』
〈クールー! わがまま言わないの!〉
『やー! おとーさんがいいっていうまでこのままでいるー!』
――クル……急にどうしたんだ?
『おかーさん、いっしょにみずあびしてくれたもん! おとーさんがおかーさんみたいにうごけないのはわかってる。 でもあたし、おかーさんみたいにおとーさんともいっしょがいいの!』
――そっか、そうだったな、明るい子だからついつい忘れてたけど、この子はまだ小さいのにおかーさんと離れ離れになってるんだ。 おかーさん恋しいだろうし、淋しいに決まってる!
こんな当たり前の事に気付かないなんて、父親失格だぞ! あたふたしてる場合じゃない、しっかりしないと!
『おとーさん、いっしょにおふろはいれないなら、せめてあたしのことみててほしいの……』
――――ふぅ。 (気合入れろ! )
〈ははっ、おかーさんが言ってたらしいけど、クルはホントに「甘えん坊」さんなんだなー〉
『お、おとー……さん?』
〈ちゃんと見ててやるよ。 その代わり教えた事はきちんと守ること! ひとりでお風呂に入れるようにもなるんだぞ!〉
『う、うん! やったー!!』
大喜びで飛び跳ねるクル。
――嬉しいのは分かったから、止めようね? メロンサイズの爆弾がばいんばいんと暴れて、凄いことになってるんですよ?
〈と、とりあえず、そこのバスタオルを巻いてからお風呂に行こうな〉
『はーい♪』
こうして、バスタオルを巻き付け、お風呂セットを持ったクルを見守りつつ、俺はお風呂へと向かうのだった――。




