りゅーか!
裸ん坊祭り!
〈クル、お腹は空いてないかい?〉
『うん、だいじょーぶー』
〈そっか。 今日はなにしようか?〉
『ん~』
――本当に、何をしようか考えないと。
俺が今一番欲しいものは「身体」だ。
当初は【ゴーレムマスター】の【クリエイト】で分身を作り出し、“外”の様子を見たり確認したりするつもりで――。
――あ、そうだった! “外”だよ!
〈クル〉
『なーに?』
〈おとーさん、“外”が視えるようになったみたいだから、少し確認しようと思ってるんだ。 その間、お話したりとか出来ないんだけど――〉
『だったら、あたしもおそといくー!』
〈え? あ、そうだね。 それはいいんだけど、“外”は危なくなかったかい?〉
『だーれもいなかったから、よくわかんない』
――今更だけど、この迷宮、野生動物や鳥の1羽も迷い込んで来ないんだよな。 ドラゴンが居るから怖がってるんだろうと特に気に留めてなかったけど、誰も居ないって無人島?
まあいいや、それならちょっと試したいこともあるし――。
〈クル、お外行く前に、ちょっとお願いがあるんだ〉
『おねがいー?』
〈お外行くんならまた“変身”するんだよね?〉
『うん! 【りゅーか】して、“りゅーけーたい”ってのになるんだよー』
――りゅーけーたい? 竜――いや龍形態か!
〈大きくなる前もそうだったのかい?〉
『んーと、いまのかっこになるのに【じんか】ってのをつかってたー』
――やっぱり進化で主形態が竜型から人型に変わってるみたいだな。
〈クル、その【龍化】ってする時に、今着てる服を“身体の一部”だと思ってやってくれないかな?〉
『なんでー?』
〈クルがドラゴンになっちゃうと、また身体が大きくなるだろう? そしたら今着てる可愛い服が破れちゃうからね〉
『ぬいじゃだめなのー?』
〈もし駄目だったら、次からは脱ぐか、破れても困らないように服をいっぱい用意するよ〉
『かわいいふく?』
〈もちろん! でも取り敢えず、言ったとおりに試してみてくれないかな?〉
『わかったー』
〈じゃあ、失敗してもいいように、前に寝てた隣の部屋でやってみようか?〉
『うん!』
――あ!
〈クル、ちょっと待った〉
『うん?』
〈クルが“龍形態”になった時の大きさって分かるの? 前の時と比べて大きいとか?〉
『だいたいわかるよー。 たぶんまえよりちっちゃいかもー?』
〈そうなの?〉
『あたし、おっきくなったのにおかしいなー』
〈それなら隣の部屋で大丈夫そうだね。 じゃあ行こうか〉
『はーい』
 ̄l ̄
 ̄l ̄
〈よーし、じゃあ今着てる服は“身体の一部”だぞ〉
『うん、がんばる!』
大部屋の真ん中で両手を握りしめてやる気まんまんのクル。
〈いいぞー〉
『はーい! 〈りゅーか〉!』
クルの身体が輝き、光の繭となった――以前の変身の時より光の量が増しているような気がする――光は膨張しつつ、その形を変えていき、ドラゴンのそれへと変わる。
――やっぱり小さくなってるな。
以前の大きさの3分の2ぐらいだろうか?
――――!!
光が弾けた時、そこに居たのは……
蛇のようだった鱗ではなく、長く柔らかそうな体毛に覆われた身体、やや長くなった脚、全体に長い毛が生えてふさふさになった長い尻尾、背には鳥のような羽根を持った大きな翼、そしてたてがみのある長い首の先には――額から伸びる一本の捻じれた長い角にリボンを巻いて、穏やかで澄んだ眼をした竜の顔があった。
――少し“麒麟”っぽくなった? ともかくそんな感じだ。 で、辺りに服が散らばってないということは、あのリボンがそれなのだろう。 どうやら成功したようだ。
「KRRR……」
竜――いや龍がこっちを見る。
〈クル、聞こえるか〉
『おとーさん? きこえるよー』
――龍形態の時にこうやって話すのは初めてだが、コミュニケーションに問題はなさそうだ。
俺の耳には「KRR……」と聞こえているが、脳裏にはちゃんと言葉が聴こえる。
〈よくやったなー、服も一緒に変身出来たみたいだぞ〉
『えへへー』
〈それに……とても綺麗だ〉
『そーお?』
――例え色が分からなくても断言出来る。 今も薄っすらと光るその身体は、神々しく輝いて見える。
〈で、せっかく変身してもらって申し訳ないけど、外へ出るためにはもう一回“人”に戻らないといけないな〉
そうなのだ。 大部屋から直接外へ出る術はなく、通路を抜けるにはもう一回人型に変身する必要がある。
『うん、へーきだよ』
そういうとクルは再び光の繭となりその身体を小さくする――光が弾けた時、そこに居たのは真っ裸のクルだった。
――あれ~?
見ると、クルの側に服が散らばっている。
どうやら戻る時に、服を“着ていた”ことを意識しなかったようだ。
『ありゃ? おとーさ~ん、はだかんぼになっちゃった~』
〈あー、服は無事だから、気にしなくていいぞ。 今度は戻るときにもちゃんと“服”を意識しような〉
『はーい!』
〈今日はこのままお外に行こう。 次からは服も持っていこうな〉
『うん!』
――(見た目少女の)幼女を裸で外に連れ出す……めちゃくちゃ犯罪臭が漂ってるんですが……orz
クルが通路へと駆け出す――後ろから視点で追いかけて、るん、だ、けど――背中から見てても右に左にぶるんぶるんと揺れるおっp……
〈クルー! こ、転ぶといけないから、慌てないでゆっくり歩きなさい!〉
『はーい』
――こ、こけると痛いからね?
クルは“外”――ちょっとした岩場の平地だった――に出るとすぐさま変身するが、早い!
――ヒーロー物の変身シーンで、短縮というか省略バージョンがあるが、そんな感じだ。 服を意識しない本来の変身の速さなのだろう。
「KRRRR――!」
その身を龍と化したクルは、一つ咆哮を上げると空へと舞った。
俺は視点でそれを追いかけつつ、上空へと昇る。
俺の眼に島の全体像が映る。
―――俺はしばし、言葉を失った。




